「素材育成」ウーズィー、「再チャレンジ」アンダーソン、「実績なし」ニズナック・・・雑草QBの明日は

 オービック・シーガルズの新QBイカイカ・ウーズィーは、185センチ、95キロと米国人QBとしてはやや小柄な部類に入る。だが運動能力は高い。吉永孝徳ヘッドアスレチックトレーナーによると、40ヤードはz4秒6で、肩も強いという。オービックはウーズィーの実績ではなく、素材を評価して獲得したのだ。大橋誠ゼネラルマネージャー(GM)は「イカイカの魅力は、運動能力の高いこと。運動能力が高いということは、ウェートトレーニングや練習で手を抜かない証左であり、古庄ヘッドコーチ(HC)がチームを挙げて取り組んでいる『ハードワーク』に合う」と語る。

 古庄直樹HCも「スピード、パワー、肩の強さなど、フィジカルが本当に強い。面白い素材を見つけた。我々が化けさせることができる」と、身体能力の高さが決め手になったことを認める。ただそれだけではなく「ウチのチームに合っている。来日して2日目には、言葉もほとんどわからないのに、近所に住んでいる選手たちと一緒に食事に行ってワイワイやったりと、チームにすぐに溶け込んだ。この男と一緒に今年のチームを作っていく楽しみがある」という。 

 ウーズィーは、以前にエレコム神戸ファイニーズでプレーしていたイノケ・フナキ元ハワイ大コーチから、日本のフットボールについてはある程度情報を得ていたという。ただ「Xリーグのゲームやチームについて、実際に見たことはなかったし、詳しいことは知らなかった。シーガルズに来て、本当にこのチームが気に入ったし、オーガニゼーションはグレートだ。ファーストクラスのフットボールだと思う」と語る。日本に来たのは、トライアウトの時が初めて。好きな日本食はすき焼きと天ぷらという24歳は「シーガルズのために、ビッグプレーを見せて、Xリーグのチャンピオン、ライスボウルのチャンピオンになれるよう努力する」と語った。
  
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 Xリーグウェストでは、パナソニックインパルスに、元ノジマ相模原ライズのベンジャミン・アンダーソン、アサヒ飲料チャレンジャーズにアレックス・ニズナックが入団する。アサヒ飲料のチーム公式発表はまだだが、本人が自身のSNSアカウントで情報を発信している。

 アンダーソンは大学はFCS(Div.1AA)のアーカンソー大パインブラフ校で、4シーズンで9488ヤード68TDのパス、2004ヤード23TDのランというデュアルスレッドQBだった。2年前のライズ在籍時は、パス・ランともに時として光るものを見せたが、再建途上だったチームの中で十分な活躍ができたとは言い難い。

 アンダーソンにとって、パナソニックは2015年シーズン終盤に2試合続けて戦った因縁のチームだ。うち、11月29日の社会人準決勝では、パス313ヤード2TD、ラン89ヤードと、能力の片鱗を見せた。序盤で大量リードしたパナソニックへのキャッチアップオフェンスだったため、スタッツが膨れ上がったのは当然としても、パナソニックサイドラインの面々はアンダーソンの能力を記憶に刻んだに違いない。

 パナソニックは昨年準決勝で敗退したが、王者・富士通や、準優勝のオービックとも互角の試合を見せたトップチームで、OLは強く、RB、WR陣にも優秀な人材が揃う。またパナソニックに所属する米国人選手は、アンダーソンと同様のFCSの比較的無名な大学の出身者が多く、同じ南部の出身者もいる。2度目の日本生活なので、慣れもあるだろうし、何よりもXリーグのフットボールを舐めるようなこともないだろう。再チャレンジはかなり期待できそうだ。

 ニズナックは、過去来日したQBの中では最も実績に乏しい選手だ。大学はミッドアメリカンカンファレンス(MAC)のセントラルミシガン大だが、リリーフで2試合に出場しただけ。そのうち1試合がミシガン大戦だったという。MACはFBSだが、名門・強豪大学が揃うビッグ10とほぼ地域が重なり、米では「裏ビッグ10」的な捉え方をされ、レベルが低いと見られている。そこで通用しなかったニズナックは出場機会を求めて、FCSのサウスイーストミズーリ州立大にフットボール競技上の転校をするが、ここでも出場機会がほとんどなかった。

 2つの大学での通算成績は、パス180ヤードでパスTDはゼロ、3Intだ。卒業後はスウェーデンやブラジルでプレーしたというが、両国ナショナルチームの実力を考えると、ほぼ参考にはならないと考えたほうが良い。実力は未知数というほかはない。ただ、学業ではセントラルミシガン大を卒業してサウスイーストミズーリ州立大で修士課程に進んだ経歴を持ち、本人のSNSでは、米では盛んなプライベートQBコーチをしている様子が投稿されている。アサヒ飲料は、ニズナックにスタッツではわからない何かを見出したのだろう。

 IBMのジョン・スタントンのような例もある。NCAAディビジョン3のセントジョーンズ大出身のスタントンは、米大学時代の実績は、他の選手に比べれば大きく見劣りする。しかし情熱と闘争心で、Xリーグ屈指のTEとして活躍している。

 コービー・キャメロン(富士通)はルイジアナ工科大の最終学年でパス4147ヤード、31TD、5Intという好成績を残し、サミー・ボウ賞を受賞した。デビン・ガードナー(ノジマ相模原ライズ)名門ミシガン大で3シーズン、エースQBとしてプレーし、パスとラン合計で68TDを記録した。彼らは日本にやって来た米国人QBの中では別格の存在だ。

 イカイカ・ウーズィー、ベンジャミン・アンダーソン、アレックス・ニズナックは、彼らに比べれば「雑草」だ。少なくとも、パス能力だけなら、LIXILディアーズの加藤翔平の方がはるかに計算が立つのではないか。

 しかし、オービックの古庄HCは、QBは「我々が育てる」「一緒にオフェンスを作っていく」という。そこには米国人QBの加入イコール強力なパスオフェンスの確立を意図してはいない世界がある。アンダーソンのXリーグ再チャレンジが焦点となるパナソニック、実績のないニズナックを獲得したアサヒ飲料も同じ図式と言える。

 Xリーグ各チームのQBポリシー多様化は、今シーズンの行方にどのような影響をもたらすのだろうか。
【写真・文:小座野容斉】
 
◎Xリーグの新加入米国人QB(その1)
◎ハワイ大で苦闘が続いたオービック新QB イカイカ・ウーズィー
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画像: ノジマ相模原ライズ時代のQBベンジャミン・アンダーソン。今季からパナソニックインパルスに加入し、Xリーグに再チャレンジする=2015年9月6日、撮影:小座野容斉

ノジマ相模原ライズ時代のQBベンジャミン・アンダーソン。今季からパナソニックインパルスに加入し、Xリーグに再チャレンジする=2015年9月6日、撮影:小座野容斉

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