画像: 『内山高志がチャンピオンたる“所以”』

文_本間 暁  写真_馬場高志

 現役続行か。はたまたこのままグローブを置いてしまうのか──。
前WBA世界スーパーフェザー級チャンピオン、内山高志(ワタナベ)の進退は依然としてはっきりしない。だが、彼は永遠のチャンピオンだ、と感銘を受けたエピソードがある。

 数年前、あるジムのトレーナーからひとつの相談をされた。
「いま、すごく熱心にジムに通ってくる小学生がいるんですが、恥ずかしい話、うちのジムはプロも含めて練習がぬるいんです。だから、1度、本当の“プロ”の練習を見せてあげたいと思うんです。誰か適任の選手を紹介していただけませんか?」

 すぐに内山の名前が思い浮かんだ。時期的にも、試合が決まっていない、迷惑にならないとき。「内山選手ですか!」とトレーナーはかえって恐縮しきりだったが、ひとまず本人に相談してみるということにした。

 後日、内山にその話をしてみると、彼は思い迷う素振りも見せず、快諾してくれたのだが、続けて予想外の言葉を口にした。
「でも、見に来てもらう日は、もう少し先にしてもらえませんか? 実はもうちょっとしたら、次の試合が決まるので。試合決まってからのほうが、気合いを入れた練習を見せられると思うので」

 内山が、普段から手抜きなしのもの凄いトレーニングをしていることは周知のとおり。だが、試合に向けて鬼気迫るものを見せたい。たとえ子どもだろうが、チャンピオンとは──を示したい。彼はこちらの意図を瞬時に把握した上で、そう考えたのだろう。
 内山という男の凄み、チャンピオンとしての威厳、そして少年選手への想いを感じ、震えた。鳥肌が立った。
 トレーナーに、内山の言葉を伝えた。涙ぐんでいた。だが、黙って見学に行って、後でジムに知れて内山チャンピオンに迷惑がかかったら申し訳ない、とトレーナーは自身のジムの会長に許可を求めた。答えはNOだった……。

 内山にそのことを伝えると、「そうですか……」と、ちょっぴり残念そうな表情を浮かべたが、「でも、また何かあったら言ってください」と、さわやかに言葉を継いだ。
 
 内山高志は、きっと、この先ずっと、チャンピオンとして生きていくのだろう。たとえ彼がベルトを持っていなくとも、現役を退くことになろうとも、もう私の中では、内山高志と書いて「チャンピオン」と読む。そのくらいの存在である。

This article is a sponsored article by
''.