画像: スペイン・リーグで活躍し、日本代表にも復帰した乾貴士⑪

スペイン・リーグで活躍し、日本代表にも復帰した乾貴士⑪

『サッカークリニック』の2017年7月号(発売中)と8月号(7月6日発売)では、乾貴士選手(エイバル/スペイン)をジュニアからユース年代(野洲高校)まで指導していた岩谷篤人・総監督(セゾン・フットボールクラブ)のインタビューを掲載しています。
 ここでは、「実戦的なテクニックを考える」というテーマで聞いたインタビュー(7月号掲載)の一部を紹介します。

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――フェイントを使う上でのポイントはありますか?

岩谷 乾貴士選手(エイバル/スペイン)にも言っていたことがあります。それは、シザースでも切り替えでも「『やり切るばかり』では抜けない」ということです。シザースであれば、「シ」だけやって「ザース」はやらないということも必要だと思うのです。

つまり、相手がフェイントに気づいたらやめて次のプレーに移ったほうがいいということです。切り返そうとしたときに相手が察知してスピードを緩めて対応しようとしたら、「き」でプレーを切り上げ、スピードを落とさずに振り切ってしまえばいいのです。

 ドリブルに限ったことではありませんが、サッカーで大事なのは相手より先にボールに触れること、つまり、「走る速さ」ではなく「触る速さ」が重要なのです。常に相手より先にボールに触れられたならば、ボールを失うことはありません。ドリブルは、自分がボールに先に触れる距離を保ちながら進むプレーとも言えます。

――では、ドリブルのスピードに関してはどう考えていますか?

岩谷 ドリブルでは、相手がいない状況で思ったようにボールを扱えることがベースとなり、相手がいない状況ではトップスピードでボールを離さないようになりたいところです。そして試合では、「いつ、トップスピードのドリブルを使うのか?」を考えなければいけません。いつもトップスピードのドリブルを使っていたらガス欠になりますし、パスを選択すべき局面もあるからです。

 練習では、トップスピードでのプレーを選手に求めます。そうすれば、「ミスしない70パーセントのスピード」が体感できるでしょう。その過程では多彩なステップやフェイントを行なうことでボディー・バランスを向上させ、素早くボールに触れるような動作を身につけていきます。ただし、あくまでもそれはベースであり、それができるから「うまい」とは言いません。「本当にうまい選手」は対人練習の中で育つものだと考えています。

――同学年に20人の選手がいた場合、練習を通じてすべての選手が同じようなドリブルやテクニックを習得できると思いますか?

岩谷 できるようになると思います。ただし、必要とする時間は異なるでしょう。1年でできる子供いれば、3年かかる子供もいるでしょう。その差は、子供の熱意や練習量、あるいは運動能力や器用さの違いから生まれます。

 もっとも、「できる」の意味を考える必要があります。

 繰り返しになりますが、「思い通りにボールを操れる(=できる)=うまい」ではないと思っています。それはベースにすぎません。実戦で使えるテクニックにするには、そのベースの上に変更力や修正力を上乗せしなければなりません。相手に読まれたときや対応されたとき、プレーを変えたり、修正したりしなければならないからです。スピードに乗りながらそうしたことを行なうには、ボディー・バランスや「目の良さ」が必要になるでしょうし、さらに的確な判断力が求められます。

――技術を身につけるのにとても時間のかかる子供がいたら、ほかの武器を習得するために時間を回すべきですか?

岩谷 技術不足を補う方法はいくらでもあります。例えば、「駆け引きで勝る」、「スピードを活かす」、「フィジカルを活かす」などです。しかし、思ったようにボールを扱えなければ、サッカーの楽しさを1つ失っている気もします。ですから、最終的な到達レベルに差があったとしても、思ったようにボールを扱えるようになりたいと努力してほしいと思います。

 1つのテクニックを1年でできる子もいれば、3年かかる子供もいます。1年でできる子供のほうが優れているように見えるものです。しかし私は、3年かけてマスターしたテクニックには3年分の濃さがあると考えています。ですから一概に、「時間のかかる選手はダメ」とは思いません。  ■

(『サッカークリニック』7月号掲載)

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