『サッカークリニック』の2017年6月号(発売中)では、7月29日から始まるインターハイへの出場を決めた長崎総合技術大学附属高校(2年連続3回目)を率いる小嶺忠敏・監督のインタビューを掲載しています。
小嶺監督はかつて、国見高校を率い、全国高校サッカー選手権で戦後最多となる6度の優勝に導いた名指導者です。50年近くに及ぶ指導歴を持つ名伯楽が語る指導論、「指導モットー」を収録したインタビューの一部を紹介します。

選手を放任するのは
「指導力のなさ」の表れ

――小嶺監督は1984年に国見に赴任しました。
小嶺 国見は当時荒れていました。選手は放っておいたら、練習に来てくれません。バスで家まで送り迎えをしないといけなかったのです。私の家から学校へ行く途中に選手たちの家を回ってバスに乗せ、練習が終わったら家まで送っていました。

――小嶺監督も体力が十分にあった頃だと思います。
小嶺 強制的にやりました。何でも「牛の手綱を引くごとく」でした。40歳を前にした頃に国見に赴任しましたが、生徒とは毎日ケンカしていたものです。他校の指導者の2倍、3倍は体を動かさなければいけなかったと思います。現在でそんなことをできる教師はいないでしょう(笑)。しかし、こういった指導ができる高校は強いと思います。当時でさえ、できる教師の数は少なかったです。現在は先生方が賢くなりすぎて、馬鹿になれないのでは(笑)。

――指導者のほうの要領が良くなった部分はあるかもしれません。
小嶺 現在は指導者が何かをすればすぐに叩かれる可能性のある時代ですので難しい面はやはりあります。しかし、リーダーとなるべき指導者が信念を持って基本の部分を教えるのは、選手たちが社会に出たあとのことを考えたら必要なことです。
「強制までしてやらせるべきではない」と言う方はいます。ただし、放任していたら、「指導力のなさ」を指摘されても仕方ないと思います。選手だけでなく、保護者をも説得し、納得させられるような指導者がこれからは必要かもしれません。高校年代は本当に大切な年代なのです。

チームのレベルを把握し、
できることをやる

――小嶺監督は20代のときに海外視察に数多く行かれているようです。ご自身のサッカー観や指導理念に影響を与えるものはありましたか?
小嶺 海外も含め、サッカーを長く見てきた中で「サッカーとは何か?」を自分なりに考えてきました。例えば、ワールドカップが開催されるたび、「パス・サッカーがいい」、「ドリブル主体のチームがいい」などと言う人はいますが、時代の流れに左右されすぎる人があまりにも多いと思います。
 私の基本的な考えは、個々の技術を高めることと組織的な守備を習得することです。攻撃も基本的な部分は教えなければいけませんが、基本を身につけたあとは何をしてもいいと思っています。「自分たちのアイディアで攻撃しなさい」というのが私の考え方です。
 守備としては、①相手の中心選手をしっかり守る、②誰か守備に行ったらカバーリングする、です。特にカバーリングを怠ったら私はしつこく言います。直らなければ私は試合に使わなくなるでしょう。守備は組織的にできないといけません。前線は特徴のある選手がとんでもないシュートを決めることがあるのでいい面もありますが、「守備は地味な部分が目立つようになったら一流」というのが私の考えです。
 私のサッカーを批判する人がいるのは知っています。どうぞ、批判してください。しかし、戦うときは自分のチームのレベルをしっかり把握しておくべきです。九九もできない人間が四次方程式を解けるわけはありません。それと同じです。チームづくりは選手の能力と戦術理解力に合わせないといけません。そのときにいる素材(選手)に指導者は合わせるべきです。選手の特徴や長所を活かすことを考えてチームをつくらなければいけません。

――以前、「指導者にも個性が必要」というコメントを読んだことがあります。
小嶺 他人のマネをするのではなく、人間教育には信念が必要です。しかし、「自分のほうが良くない」と思ったのであれば修正しなければいけません。私が校長をしていたとき、自分が「こうしたい」と思っていたことでも、周囲がいいアイディアを出してきたら修正していました。「こうだ」と思ったら考えを変えない人もいますが、柔軟性を持つことも大事だと思います。指導者には、時代に沿って変えるべきことと、変えてはいけないことの両方があります。そのバランスが大事です。 

――小嶺監督も時代に合わせて指導されている印象です。
小嶺 サッカー部としてのルールを守ることに関しては昔から同じように厳しく言っています。寮の門限を守ることや買い食いをしないことなどといったルールはずっと守らせています。
長崎総合科学大学附属高校では、昨年の7月から選手たちに寮に入ってもらいました。すぐに実行できるとは思っていませんが、2年あればルールを守れるいい雰囲気の部にできると思っています。放任していたらいけません。それでは、試合で私が指示しても選手たちは実行してくれないでしょう。

――生涯、チャレンジですね?
小嶺 そうです。私はスケジュール・ノートの見開きページに「BGM」と30年くらい書いています。私の生き様のようなものです。「B=バカみたいに」、「G=がむしゃらに頑張る」、「M=マジメに」です。新しいノートを買ったときにまず書き込むのが「BGM」です。「バカみたい」と言われても、何でもがむしゃらに、ただひたすらに頑張ればいいのです。目立つ必要はありません。真面目にコツコツとやるのです。
 ひたすらに頑張っていれば、選手も感じてくれるでしょう。私自身もそう思います。「真面目に一生懸命やっていれば、選手に見捨てられるはずはない」と思っています。実は見捨てられることも多いのですが(笑)、選手を信じてひたすら指導すればいいと思っています。

――今後の目標を教えてください。
小嶺 とにかく、選手たちの能力を一つひとつ高めていくことです。コツコツやっていればいいのです。私はあと何年指導できるか分かりません。周囲には「クソジジイがやっている」と思われているでしょうが(笑)、まずは今いる選手たちが卒業するまでは指導したいと思います。放っておくことはできますが、長崎総科に入学してくれた選手に「知らんよ」なんて顔はできませんよ。       
(取材・構成/吉田太郎、写真/吉田太郎)
 

画像: チームのレベルを把握し、 できることをやる
画像: U-18日本代表でもあるFWの安藤瑞希(写真中央)は泥臭さと破壊力を併せ持つ点取り屋

U-18日本代表でもあるFWの安藤瑞希(写真中央)は泥臭さと破壊力を併せ持つ点取り屋

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