週刊プロレス誌上でお伝えした試合リポートとはまた違う視点から見たWEBサイト版の試合リポート。

新日本プロレス「DOMINION 6.11 in OSAKA-JO HALL」★6月11日(日)大阪城ホール
▼IWGPインターコンチネンタル選手権試合(60分1本勝負)
〈挑戦者〉棚橋弘至(25分56秒、テキサスクローバー・ホールド)内藤哲也〈王者〉
※内藤が5度目の防衛に失敗。棚橋が第16代王者となる。

東京ドームでは内藤が印象操作に成功

 プロレスファン時代、ずっとあこがれていた棚橋弘至と東京ドームという大舞台で闘い、それも自分が王者として迎え撃つシチュエーション。内藤哲也にとってはプロレス人生最大の大勝負といってもよかった今年1月4日の東京ドーム。しかし、その時点で内藤は自分がIWGPインターコンチネンタル王者という優位性だけでなく、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(2年前より内藤がメキシコから持ち帰り、日本で発足させた反体制ユニット)としてファンの絶大な支持を得たことで「棚橋より上」と自分の存在を位置づけていた。

 ドームでは結果も内藤が棚橋に勝利。試合後の内藤はそれまでのふてぶてしく、“制御不能”な自身のスタイルとは相反する行為であるにもかかわらず、倒れた棚橋に一礼してリングを下りた。この行為の真意について内藤はいまだに明らかにしていないが、普通に考えればファン時代にあこがれていた存在に対して礼を尽くした行為と思われる。と同時にこの一礼で完全に棚橋超えを果たし、一時代を終わらせたと見る者に印象づける…いまよく聞く言葉で言えば「印象操作」にも成功した。

決戦前に増幅された内藤の怒り

 だが、それはあくまでも内藤側の見方。棚橋からすれば「区切り」でもなければ、「終わり」でもない。プロレスラーであり続ける以上、常に上を目指す姿勢は不変。そしてリベンジの時が6月19日、大阪城ホール大会に決定。大阪城大会といえば新日本の年間最大イベントである東京ドーム大会に次ぐ、年内2番目のビッグマッチ。内藤への借りを返すにはもってこいの舞台。

 戦前、内藤は棚橋の実績不足から再挑戦にNOを突きつけた。その一方でかねてから言い続けているように「新日本プロレスは棚橋の言うことは絶対」となることも予測していた。そして、その内藤の予測通り棚橋は挑戦権を得たわけだが、前哨戦が予定されていた大阪城決戦前のシリーズを右腕の負傷により欠場となってしまった。負傷は仕方ないとした内藤だったが、腕の負傷なら会場へ来てファンへのあいさつや、王者に対して言葉でベルトへの思いを伝えることはできたはずと内藤は主張。それをしなかった棚橋には「ベルトに対する気持ちが見えない」と怒りの批判を展開した。

 さらに内藤の怒りを増幅させた要因として、新日本の海外戦略用として6年前に生まれたインターコンチネンタル王座と同じような意味合いをもつIWGP・US王座の新設が発表された。もともとこインターコンチ王座に愛着のもっていなかった内藤は棚橋のいないシリーズ中、ベルトを鉄柱に投げるなどして本気の破壊行に出た。結果、ベルトは見るも無残なほどにボロボロ状態。

怒りの内藤は棚橋の右腕を集中して攻めたが、棚橋も屈することはなかった

戦前の舌戦に棚橋の嫌悪感。そして勝利するも…

 こういった内藤の言動には棚橋もまた怒っていた。普段は対戦相手について批判の類の言葉は発しないのが棚橋の主義だが、それを覆しても棚橋は内藤に怒りの反論をした。その結果、戦前は棚橋と内藤が週刊プロレスなどのメディアなどを通じて舌戦、批判合戦となった。だが、この状態は内藤はともかく、棚橋の本意とするところではない。認め合い、リスペクトできる相手と闘って勝利すれば、試合後にはレスラーとしてさらに上の段階へ行ける、というのが棚橋の理想とするプロレス。ところがこの内藤戦の前は罵り合いのような状態になってしまった。そのことについて棚橋は戦前、何度も「こういうのは本当イヤですね。これで終わりにしたいです」と嘆いていたものだ。

 棚橋の望み通り舌戦を終わらせる方法はひとつ。棚橋が内藤に勝利することのみ。かくして迎えた6・11大阪城決戦。棚橋は見事に内藤に勝利した。戦前、それぞれの気持ちを吐露しまくっていた2人だが、プロレスにおける正解は「勝った方が正義」ということだけは統一していた。つまりこの勝利で棚橋は内藤を黙らせることに成功した。……はずだが、もちろん内藤がおとなしくなるはずもない。「棚橋は俺に王者としてイデオロギーがないって言ってきたんだから、そのイデオロギー、今後のプランを見せてほしい」とさっそく新王者に揺さぶりをかけている。もちろん棚橋も新IWGPインターコンチネンタル王者として、内藤によってボロボロにされたベルトの修復や、挑戦者は自分で決めるなど、新たなインターコンチ王座の指針を示し始めている。

 はなからインターコンチ王座に関心ゼロだった内藤は8カ月の王者時代を経てもベルトへの愛着は生まれなかったという。今後、自らの意志でインターコンチ戦線に再参入してくるとは考えにくいが、プロレスに絶対はない。棚橋が再び挑戦者として内藤の前に立ったように、内藤が再び棚橋の前に挑戦者として立つ日は来るかもしれない。いや、挑戦者としてではなくても、内藤が再び棚橋の敵として目の前に立つ日はきっと来る。その時の2人の関係がどうなっているのかも興味深い。プロレスに区切りなし。いっけん区切りがあるように見えて、実はないからプロレスは実におもしろいし、奥深い。(湯沢)

試合後の棚橋は久々にマイクで「愛してまーす!」と叫んだ。内藤へのリベンジにも成功し、その表情からはこの勝利の重さが伝わってくるようでもある

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