画像1: オランダ流の「いいトレーニング」とは?
画像2: オランダ流の「いいトレーニング」とは?

林雅人(はやし・まさと)/1977年生まれ。大学卒業後、2000年に指導者を目指してオランダへ渡る。フィテッセで3年の研修を積み、オランダ協会公認の1級ライセンスとUEFAのA級ライセンスを取得した。フィテッセではU-13、17、19のコーチ、U-11では監督として指導。08年に帰国。10年に浦和レッズで通訳を担当、15年はタイのソンクラー・ユナイテッドで監督、昨年は中国の浙江省杭州女子足球倶楽部でアシスタントコーチを務め、今年から同クラブの監督

『サッカークリニック』2017年6月号の特集「トレーニングの発展&難易度調整」より、特集①「オランダで学んだ日本人指導者の考え方」のインタビューの一部を紹介します。トレーニングをどのように発展させ、どのように難易度を調整すると、選手にとって「いいトレーニング」になると思いますか? 林雅人・監督に話を聞きました。

――トレーニングの難易度はどのようにして調整しますか?

林 まず、1つのトレーニング・メニューの中に攻撃と守備の要素を可能な限り入れるというのが僕の基本スタイルです。
 攻撃面の改善をテーマに話を進めましょう。僕のスタイルでは、守備に対する意識づけをすることで攻撃側にとっての難易度を上げられます。そして、守備が機能している状態でトレーニングを続けつつ、攻撃側にコーチングをすることで攻撃が徐々に機能するように促します。こうした手法以外にも、難易度の変更手段には、グリッドのサイズや人数の変更というものも挙げられます。
 私は、トレーニングを通じて選手に意識づけし、ミニ・ゲームの中で選手に目的が浸透しているか、選手が目的を理解しているかを確認するというステップもよく採用します。
 意識づけのトレーニングとしては「一方のチームから常に攻撃を開始する」というもの(下の図1)もあります。攻撃面の改善がテーマであれば、攻撃の回数を増やす必要があり、反復させるために攻守の切り替えをなくしたのです。「一方から開始」にすれば、「守備がいる」、「スペースとゴールがある」というサッカーに近い状況下の反復が可能になります。確かに、攻守の切り替えは大事な要素なのですが、攻守の切り替えを入れると反復回数が減ってしまいます。また、攻守の切り替えを入れることでドタバタしたトレーニングになると、設定テーマがぼやけてしまいます。

画像: ――トレーニングの難易度はどのようにして調整しますか?

――グリッドのサイズとトレーニングの一般的な関係を教えてください。

林 狭いグリッドでは選手同士の距離が近くなってフィジカル・コンタクトが増えますし、精度の高い技術が求められます。逆に広いグリッドでは適切なポジショニングやスピード、そして正しいスペース感覚が必要となります。対して、広いグリッドでは攻撃の難易度が下がり、守備の難易度が上がると言えます。グリッドが狭い場合、管理すべきスペースが狭くなり、守備側はスペースのカバーをさほど意識しなくていいですし、少し動いただけ(わずかなスライド)でカバーリングできるため、難易度が低下するのです。

画像1: ――グリッドのサイズとトレーニングの一般的な関係を教えてください。
画像2: ――グリッドのサイズとトレーニングの一般的な関係を教えてください。

――極端かもしれませんが、同じグリッドやトレーニングでは攻守に同じレベルのものを求めるのは難しいと言えますか?

林 そういう面はあります。ですからテーマやフォーカス・ポイントを明確にすることが指導者には求められると言えるのです。
 練習テーマを選手に意識させ、理解させるには人数設定も重要です。例えば、実戦的なサイド攻撃を学ばせたり、サイドでの1対1を向上させたい場合、攻撃側の選手は4人以上必要だと思います。例えば、中央の選手がボールを持った際、中央の縦と左右というパスの選択肢があるほうがリアリティーのある設定だと思うからです。

――グリッド内が同数、例えば4対4のトレーニングを行なった場合、ボールが出たときの再開方法はどのようにしますか?

林 意識づけを目的にしたトレーニングであれば、ポジショニングを修正させた上で私が配球して再開します。再開の権利を得ているチーム(ボールを出していないチーム)にボールを渡します。
 特定のテーマを設定したトレーニングでは求める必要のない要素はできるだけ省くようにしています。特定のテーマを落とし込む練習ではそういうものを選手に求める必要はないと思うからです。逆にそういうものを求めたり、いろいろな要素を盛り込んだりすると、「本当の目的」(テーマ)を選手が理解できなくなるとも思います。切り替えに関しては、例えば、テンポ良く練習を進めることで選手に意識させられます。

――数的同数の練習において守備側がマンツーマンで守った場合、どうしますか?

林 「4対4のポゼッション」ではなく、「ライン・ゴールやゴールのある『4対4』を行なうとしましょう。その場合、特殊なケースを除けば、マンツーマン・ディフェンスはあり得ないと思います。なぜなら、ディフェンダーを余らせてのリスクを管理していませんし、ボール中心の守備にもなっていないからです。私なら、攻撃側の選手にスペースで受けるようにコーチングしたり、1対1を挑ませたりすることで守備におけるバランスの悪さに気づかせます。

画像1: ――数的同数の練習において守備側がマンツーマンで守った場合、どうしますか?

 守備がマンツーマンで守ってきた場合、組み立てはうまくいかないものです。ある意味で守備が機能しているのですから、「スペースを使おう」や「1対1でトライしよう」と言って攻撃にアプローチしなければなりません。
 そもそも、コンパクトにでき、しかも前から守れる設定であれば、守備は下がる必要がありませんし、マンマークにするでしょう。そういう傾向が見られたら、私はグリッドを大きくします。
 現代のサッカーでは人数制にかかわらず、マンツーマンでは守れません。にもかかわらずマンツーマンで守れるというのは設定が間違っている可能性が高いでしょう。個人的な感覚で目安を言えば、1人の選手に対して「縦10メートル、横7メートル」というイメージでグリッドをつくります。

画像2: ――数的同数の練習において守備側がマンツーマンで守った場合、どうしますか?

「『4対4』+2GK」であれば、キーパーも含めて5人になるのでグリッドは「縦50メートル、横35メートル」となります。当然、年齢やカテゴリー、選手のレベルを考慮してサイズは決めるべきです。
 日本におけるサッカーの指導環境を考えれば、こうしたサイズにするのは難しいと思います。しかし、こうしたことを少しでも選手に感じさせていかないと、それは将来的に大きな差を生み出すと感じています。スペースを考慮した技術やポジショニングが身につかないからです。

画像3: ――数的同数の練習において守備側がマンツーマンで守った場合、どうしますか?

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