画像: それぞれが感じたアイルランドとの距離。そしてジャパンの現在地。

それぞれが感じたアイルランドとの距離。そしてジャパンの現在地。

パワフルに前へ出るLOヘル ウヴェと、サポートするHO庭井祐輔。(撮影/松本かおり)
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチはチームを前に進めた。
アイルランド代表と2試合を戦った日本代表は1戦目の大敗から1週間後の再戦で勝利を得ることはできなかったけれど、指揮官は選手たちを前向きにさせる結果に導いた。
6月17日におこなわれたアイルランドとの第1テストマッチ(静岡・エコパスタジアム)で最初からやるべきこと、準備したことを実行できなかった選手たちを先発から外して6月24日の第2テストマッチ(東京・味の素スタジアム)に臨んだ。
結果は22-50から13-35へ。
また負けた。
しかし後半から途中出場した、第1テスト先発出場者たちの奮起したプレーは緑のジャージーを止め続けた。2度目の対戦ではチーム全体が準備したことを多くの部分で出せたから、相手との現時点でのおおよその距離が見えた。
立ち上がりにミスから失点を重ねたのは2戦とも同じ。ふたりのゲームメーカーは、試合への入り方をもっと考えなければいけないと思い知った。
タックル力がインターナショナルレベルに達していない選手は、弱みを見せれば何度でも攻められることを痛感した。
こちらがミスをすれば確実に襲いかかり、何度しつこく守っても綻びを見せない。ティア1国のしたたかさと確かさはサクラのジャージーを着た誰もが感じた。
来日していないブリティッシュ&アイルランド・ライオンズ組(11人)が加わるワールドカップで対戦するアイルランドは、今回と同様にオーソドックスながらも、各局面でさらにレベルが高い。この先、足踏みすることなく進化し続けないと、ジャパンは追いつけないと感じさせた。
あと2年ちょっとで、現在ワールドランキング3位のチームに追いつくことは不可能なのか。
そうではない。
世界トップ3に入る国が相手でも、どうにもならないほどのパワーの差は感じなかった選手たちもいた。
スクラムも大きく改善された。
赤白ジャージーを着た外国出身の選手たちはパワフルに前へ出ることができ、それをきっかけに高速で攻めたら攻略できた。
キックをきっかけに崩すシーンもあったから、難易度の高い自分たちのスタイルを突き詰めた上で挑めるならば、いまは少ししかない勝利の可能性を高めることはできる。
第2テストまでの1週間、練習からディフェンスリーダーを務めたFL松橋周平は、アイルランドのハードなプレーを受けて感じた。
「一人ひとりのフィジカルは、とんでもなく強いということはなかったのですが、それぞれの役割がしっかり決まっている。組織としての強さの方が印象に残りました」
180センチと国際レベルでは小柄なバックローは、相手チームのそんな組織力に「頭が疲れた」と話した。
「何をやるか明確になっているので、無理なプレーをしてこない。そして、こちらの小さなミスを必ず突いてきた」
松橋は防御を引っ張る立場として、ブレイクダウンでの動きを仲間に徹底して呼びかけてきた。
「新しいことでなく、前の試合でもやろうとしたけどできなかったことです。接点でジャッカルでなく、ボールを乗りこえる。スペースを奪いにいくということ」
前戦の反省から、それを頭と体に染み込ませて臨んだ第2テストマッチではスペーシングがうまくいくケースが多々あった。
「ただ、アティテュードが強すぎて(意識しすぎて)スマートにやれなかったところは反省点です。行きすぎてペナルティを取られたりした」
反則のようにも映ったが、残ったボールを相手に奪い返されるシーンもあった。
いまのジャパンは攻撃時、ボールキャリアーを含み、3人でボールを出すことが約束だ。その精度も満足できるものではなかった。
「3人で出さないと、その後のシェイプをきちんと用意できないので大切な点なのですが、特にワイドにボールを動かしたときなどに、2人目のプレーヤーが気を利かせてもっとはやく入るべきところがあった」
手応えも、明確な修正点も感じ取った80分だった。
先発で3番を背負ったPR浅原拓真は、前戦は後半18分からの出場と短い時間ながらもスクラムで苦しんだ。しかし1週間後に修正できた理由をこう表現した。
「組み方は何も変えていないんですよ。ただ8人の仕事をもう一度明確にして、この1週間練習してきたし、試合中も声を掛け合い続けました。細部を丁寧にやったことで大きく変わった」
アイルランドのスクラムはオーソドックスだった。押し合いへのこだわりなら、スーパーラグビーで戦う南アフリカチームの方が強いと感じた。
「前回のワールドカップでのジャパンは、ボールをしっかり出せればいいと考えていたと思うのですが、きょうは次のレベルに進めるチャンスを感じました。スクラムを武器にしてワールドカップにいけるぞ、と」
ディフェンスでも対抗できた。このチームの基本はダブルタックルだ。
「一人目がタックルに入ると相手は内に向かってきた。前の試合でそれが分かっていたので、こちらの2人目が内側から(タックルに)入るようにしたんです」
パワー負けせず、押し戻せたシーンが何度もあったのは、そのお陰だ。
最大の課題として残った立ち上がりの悪さに関してSO小倉順平はこう振り返った。
「崩されたというより、自分たちのミスからとられた。SOとして、そういうプレーをなくす組み立てもしないといけないし、FWのエナジーセーブのためにもっとキックを使った方がよかったかもしれません」
意識して減らしたわけでなく、結果的にいつもより少なかったキック。試合運びに他の選択肢はなかったのか。小倉は毎試合、自身の判断にベクトルを向けている。
自分の周辺を何度も攻められた司令塔は、「狙われた感じは受けなかった」としたが、相手が繰り返し向かってきたのは事実だ。
「あちら側の立場になれば、体の小さい僕を狙うのは当然でしょう。ディフェンスのシーンが多かった。ただ、やってくることはシンプルでした」
2万9354人のファンから発せられる大歓声にかき消され、声によるコミュニケーションは思うようにいかなかった。アイコンタクトなどに頼るしかなく、いつもと勝手が違った。
前半24分、LOヘル ウヴェのビッグゲインからすぐに右に展開し、CTB松島幸太朗のトライが生まれたシーンを「あそこも、きちんとシェイプができていたから(トライになった)」と評した小倉は、キックを使う判断力をもっと高める必要性を自身に感じた。
この試合でゲームキャプテンを務めたFLリーチ マイケルも指摘した。
「やろうとしていること(戦術・戦略)は間違っていないが、キックをゲームの中でどう使うかが、まだうまくできていない。それは経験が足りないから。チームがそのときにどういう状況なのか理解力が必要」
強い相手に万全な状況で戦わせないように、アンストラクチャー状態に持ち込むためにキックを使う。FWを疲れさせない目的のものもある。それらを的確に蹴り分ける判断、スキルとともに、キックがより有効になる状況を作るためのゲームメイクなど、SOに求められるものは多い。活動期間が限られる中でこのスタイルの先導役となるため、小倉、田村優はサンウルブズでの活動でも、五感を研ぎすます作業を続けることになる。
「ルーマニア戦ではキックを有効に使えたでしょう。FWはすごく余裕を持ってプレーできた。でも(それがうまくいかずこちらの体力が)消耗した状態になると、デイフェンスを(相手に)切られることが増えしまうんです」
PR浅原も、目指すスタイルを確立できたなら質の高い戦いを実現できると信じる。
リーチとジョセフ ヘッドコーチはアイルランドとの戦いを終えた後、サンウルブズの南アフリカツアーへ向かう選手たちを送り出すとともに、チーム全員に、「個々のスタンダード高め続けよう」と話した。
ただ、秋のウインドウマンスまでに選手たちが経験できるのは、サンウルブズでの残り3試合と、それぞれのトップリーグ所属チームでの日々と試合。その環境下で肉体的進化とスキル、戦術理解の高まりを個人に任せては、成長のスピードを高め続けるのは難しいだろう。今春のNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)のような活動を継続的におこなうことが必要だ。
そして、2015年ワールドカップ時の日本代表を支えていた世界一のフィットネス(を持っていると信じる気持ち)を得る作業に早く入らなければ。それを手に入れた上でのスタイル確立が求められる。

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