画像: ブラジルの名門、クルゼイロECの選手育成

発売中の『サッカークリニック』7月号では「テクニック指導」に関する特集の中でクルゼイロEC(ブラジル)の選手育成を紹介している。多くの選手を『セレソン(ブラジル代表)』に送り込んできたクラブでは、どのような選手育成が行なわれているのか? 育成部門でコーチを務めるカレカさんに話を聞いた。

――テクニックとはどのようなものを指すのですか?

カレカ テクニックは、サッカーのすべてのアクションを実行するために必要不可欠なものであり、思い通りにボールを扱ったり、コントロールしたりするための能力とも言えます。あるいはテクニックは、プレーヤーの能力をマネジメントし、能力を引き出すものと言ってもいいでしょう。

――では、どのようにして子供のテクニックを高めるのですか?

カレカ 各年代の選手には年代に応じた特徴があり、適したトレーニングというものがあります。ですからクルゼイロでは、テクニックに限らず、それぞれの年代に合わせたトレーニングを実施するように独自のトレーニング・システムを構築しています。クルゼイロのトレーニング・システムはU-10からU-20までのカテゴリーをカバーし、すべてのカテゴリーにおいて年齢や発育に合わせたトレーニングを行なっています。
 例えば、ジュニアの低学年では、楽しむ要素を入れてトレーニングを組み立てるようにしています。特にウオーミングアップでは遊びの要素を強調し、子供たちがトレーニングに積極的に入っていけるような工夫を施しています。また、楽しむだけではなく、仲間と競い合ったりするように仕向けています。具体的には、得点を数えたりして選手同士を競争させていくこともトレーニングの大切な要素だと考えています。
 

――高いテクニックを持っていながら、試合ではそれを発揮できない選手も少なくありません。

カレカ 「トレーニングではテクニックをうまく発揮しているにもかかわらず、試合で発揮できない」という場合、あらゆる角度から分析する必要があります。
 その1つはスポーツ科学的なアプローチです。もしかすると、「うまくできていない理由」を選手自身が理解していないのかもしれません。そういう場合、コーチと選手がしっかりと話し合い、理由を解明して選手に理解させた上で問題を解決しなければなりません。忘れてはいけないことがあります。それは、たとえドリル・トレーニングであっても、その選手がテクニックを発揮しているのであれば、その選手は高いクオリティーを持っているということです。ですから指導者は会話を通して問題を解決し、試合でも発揮できるように選手を導くべきでしょう。
 あるいは、ゲームを読む力が欠如しているのかもしれません。そのため、テクニックを発揮できないケースもあります。そういう場合も指導者が選手とコミュニケーションを図り、選手の頭の中を整理してあげる必要があるでしょう。いずれにしても、コーチと選手がしっかりとしたコミュニケーションを図り、解決の糸口を探るべきです。

――テクニック指導に関して日本とブラジルでは違いがあると感じていますか?

カレカ スタートの部分ではさほど差がないと感じています。ブラジルでも日本でも、ボールに足でたくさん触れることが重視されていると思います。ただしブラジルでは、そうして身につけたテクニックが相手のいる状況やゲームの中で活かせるように指導者は導き、刺激を与えるようにしています。ゲームで使えるテクニックこそがクルゼイロの求めるテクニックであり、早い段階からゲームで使えるテクニックを求めていきます。
 日本の子供を見ていると、巧みなボール扱いに驚かされることも少なくありません。しかし、「ゲームで使えるテクニックにするためには何が必要か?」、この点をもっともっと追求したほうがいいと感じています。
 もっとも、この点における両国の違いは社会を取り巻く環境の違いが生んでいるのかもしれません。豊かな日本では考えられないかもしれませんが、ブラジルには貧困に苦しむ家庭も少なくありません。ですからブラジルでは、「勝利を目指す気持ち」が自然と育まれるのかもしれません。それがテクニックの習得にも影響を与えているのかしれません。しかし、勝利を目指す気持ちはサッカーで欠かせないものです。ですから、日本の子供たちに対しても、「勝利を目指す気持ち」を育み、持てるようになってほしいと思っています。
 日本の選手たちは礼儀正しく、コーチに対して常に敬意を払ってくれます。また、規律を守り、コーチの話に耳を傾け、コーチの指示に従って懸命にプレーしてくれます。こうした姿勢は能力を高める上でのプラス要素です。私は心から素晴らしいと感じていますし、ブラジル人にも学んでほしいものだと感じています。
 しかし、「従順すぎること」はサッカーをプレーする上でマイナスに働くこともあります。試合で困難な局面に陥った際、例えば、意図しない展開やコーチの指示通りにプレーしてもうまくいかないとき、弱さや脆さの原因となるからです。そういうシチュエーションでは「即興性」が求められるのですが、即興性に関しては改善の余地がまだあるように感じています。

――「試合で使えるテクニック」を身につける上ではどのようなトレーニングが必要ですか?

カレカ 実戦的なテクニックを身につけるには目に見えるテクニックだけでなく、「選手の頭の中」にアプローチしなければなりません。選手が何を考えているのか、この点を指導者はまず理解しなければならないのです。
例えば、「このトレーニングは試合のどのような局面なのか、相手がどのような状況なのか」をイメージしながら選手はトレーニングに取り組むべきなのですが、そうなっているかを指導者はチェックしなければなりません。そして、イメージを持てるように導く責任が指導者にはあります。イメージもなく、言われたことを繰り返すのには意味がありません。そうした姿勢でもボール扱いは向上できるかもしれませんが、試合で使えるテクニックは身につけられないでしょう。
イメージを持たせる上ではコーチングも大切な手段の1つです。選手がベストを尽くせるよう、そして自信を与えるような声を掛けなければいけませんし、叱るだけのコーチングは良い結果を生みません。選手自身が考え、自信を持ってプレーできるようなコーチングが理想だと思います。

――さて、日本でのキャンプを3年連続で担当しているカレカ・コーチには日本の子供たちはどのように映りますか?

カレカ ゆっくりではありますが、着実に成長しています。日本の子供たちはとても大きなポテンシャルを秘めています。決して、お世辞ではありません。ただし、クルゼイロのキャンプで学んだことや日々のトレーニングで学んだことをもっと貪欲に磨いていってほしいと思います。そうしなければせっかくのポテンシャルを開花させられないからです。「もっと上達するんだ!」、「もっと強くなるんだ!」という気持ちを持ってトレーニングに臨んでほしいと思います。その先にはより高いレベルのステージが待っています。
 先ほども触れましたが、日本人の持っている規律の正しさや集中力は称賛に値するものです。そうした姿勢が日本サッカーの発展を支えているのでしょう。しかし、さらなる成長には「サッカーが好きという気持ちを大切にすること」、「もっと競争すること」が必要だと思います。チーム内での小さな競争であっても、勝つ喜びや、負ける悔しさを選手には感じてほしいですし、指導者にはそういう環境を整えてほしいと思います。そうしたことが、日本サッカーのさらなる発展の原動力になると私は考えています。

画像1: ――さて、日本でのキャンプを3年連続で担当しているカレカ・コーチには日本の子供たちはどのように映りますか?
画像2: ――さて、日本でのキャンプを3年連続で担当しているカレカ・コーチには日本の子供たちはどのように映りますか?

INFORMATION

クルゼイロECがジュニア年代向けのサッカーキャンプを東京と大阪で開催します。
詳しくは以下をご覧ください。

http://www.cruzeiro.jp/

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