画像: 両打ちを後押しした変則右腕の言葉

両打ちを後押しした変則右腕の言葉

身体能力の高さには定評のあった加藤がついに覚醒の予感
カモメのスイッチヒッターが躍動している。加藤翔平、26歳。上武大から2013年ドラフト4位でロッテに入団。5年目の今季、開幕こそ一軍で迎えたものの5月上旬に登録抹消。しかし、6月半ばに再登録されると、以降は3割を超える打率をマークして低迷していた打線の起爆剤となっている。
加藤と言えば球界でも希少種になりつつある両打ち。「高校野球感がありますよね」と笑う両耳ヘルメットがトレードマークだが、一時は両打ちをあきらめて右打ちに専念しようとしていた。
「一昨年(2015年)は自分の中で右打席のほうが感覚がよくて。例えば右打席一本でやったらどうなるんだろう、そういう挑戦も必要かなって」
15年は苦しいシーズンだった。2年目だった前年は98試合に出場して81安打。さらなる飛躍を期していたが、出場機会は激減。変化を求めなければ、このまま終わってしまう。そんな焦りにも似た思いから、右打ちへの転向を決断しようとしていた。しかし――。
「ファームで調整していた館山(昌平、ヤクルト)さん、牧田(和久)さんや十亀(剣、いずれも西武)さんと(右打席で)対戦する機会があったんです。そうしたら『なんて怖いんだ!』って思って」
二軍クラスの右投手であれば、右打席でも対応することはできた。しかし、トップクラスの右の変則投手を前にすると手も足もでなかった。「甘いものではないと思っていたけど、想像以上に厳しいなと思いました」。“両打ち”は自分にとって大きな武器なのだということに、あらためて気づかされたのだ。
迎えた昨年の4月、戸田でのヤクルト戦。ケガで調整中だった館山から「やっぱり両打ちにしたの?」と声を掛けられた。「はい、両打ちに戻ました」と答えると、「オレはやっぱり加藤くんの左打席のほうが右打席よりイヤだし、それでいいと思うよ」という励ましともとれる言葉をもらった。
「館山さんのような一流の選手にそうやって見ていただけていたんだな、と思って。これからも両打ちで頑張っていこうという後押しになりましたね」
だが、両打ちへの思いを新たにしても、すぐに結果が出たわけではない。そこから冒頭の活躍へたどり着くまでに、1年2カ月の時間が必要だった。「今、一番大事にしているのは『毎日同じことをする』ということ。球場に来てから帰るまで、流れを変えないように、というのは意識しています」。紆余曲折を経て、ようやく加藤の中で自分だけのルーティンが確立されたのだろう。
とはいえ、今でも明確かつ不思議な課題が残っている。今季、加藤の左右別の打撃成績は左が148打数44安打の打率.297に対し、右は9打数0安打(8月19日時点)。かつて右打席に専念しようとしていたとは思えぬ数字だ。
もともと加藤は右投げ右打ち。左打ちは高校1年の半ばから作り上げてきたものだ。「左を作ったときに、めちゃくちゃ左打ちの練習をしたんです。そうしたら、いつの間にか左のほうが右よりもスイングスピードが5キロほど速くなって。今でもその差が埋まらないんです」。
左打ち覚醒の理由は明白だ。低めの変化球に泳ぐことなく、しっかりと引きつけて見極められるようになった。弱点が克服されると、スイングスピードの速さが武器として機能し始めたのだ。
だが、今でも両打ちとしての矜持は変わらない。「一年間、レギュラーとして出続けるためには左右関係なく信頼してもらえるようにならなければいけない。左打席もまだまだですけど、右打席も並行してレベルアップしていきたいですね」。真の意味でのスイッチヒッターへ――。加藤はまだ、ようやくスタートラインに立ったばかりだ。
文=杉浦多夢 写真=松田杏子

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