画像: 【石田雄太の閃球眼】求められるプロ野球界全体を見据えた先行投資

【石田雄太の閃球眼】求められるプロ野球界全体を見据えた先行投資

4月18日に熊本で、翌19日は鹿児島で公式戦を行った巨人。写真は熊本・藤崎台球場
先日、母校で相撲という珍しい取り合わせがあり、足を運んでみた。大相撲“渋谷青山学院場所”が夏巡業の一環として開催されたのである。青山通り沿いに立ち並ぶカラフルなのぼりに、道行く人々が足を止める。青山という街に似つかわしくないはずの力士たちがやけに溶け込んでいる。決して安くないチケットは飛ぶように売れ、青山学院記念館はほぼ満員。「東京のど真ん中で大相撲」というコンセプトは、普段、相撲に縁遠い層にも受け入れられたようだ。
相撲の禁じ手を土俵上で二人の力士がユーモアを交えながら紹介する「初切(しょっきり)」や力士が自慢のノドを唸らせて「相撲甚句」を披露するなど、巡業ならではのお楽しみも加えられ、飽きることなく時間が過ぎていく。横綱の稀勢の里、鶴竜の二人はケガで不参加だったが、白鵬、日馬富士の土俵入りは、やはり圧巻。結びの一番はその両横綱がぶつかり、大歓声の中、白鵬が日馬富士を寄り切って渋谷青山学院場所を締めくくった。約30年前、新米ディレクターとして国技館に通った身としては、びんつけ油のいい匂いにも力士のハリのあるピンクの肌にもノスタルジーを掻き立てられたのだが、大相撲がこれほどサービス精神にあふれたものに変貌していたことにはかなり驚かされた。
朝早くから握手会を行い、何人もの関取が小さな子どもを抱きかかえながら土俵入りをする。横綱をはじめとする関取衆は取り組みまで控室にこもることなく、かなりの長時間、気さくにサインや写真に応じていた。神事であり国技である相撲の存在意義を、力士たちが自覚しているように見えた。この日だけで相撲が好きになった子どもは相当数いたに違いない。
聞けば今年の夏巡業は7月30日から8月27日までの約一カ月。その間、ほぼ毎日、各地で巡業が開催されている。岐阜から始まって滋賀、愛知、富山、新潟、埼玉を回り、青山学院へ。さらに茨城、山形、宮城、青森、北海道まで出向いた後、関東へ戻ってくるという強行軍。300人近い一行がバスで各地を巡るのだが、かなりのハードスケジュールである。
となれば、つい野球はどうなのかと思いを巡らせてしまう。今年のオープン戦はキャンプ地での開催を除くと100試合。うち本拠地(神戸も含む)以外での開催は18試合。そのうちの6試合はイーグルスが寒い仙台の代わりに使っていた倉敷であることを考えれば実質は12試合(12パーセント)ということになる。レギュラーシーズンでも858試合中、本拠地(神戸、東京ドームを含む)以外での開催は39試合で、全体の5パーセントにも満たないというのが現実だ。ジャイアンツ、ファイターズ、ライオンズの6試合が最多でマーリンズ、バファローズはゼロ。保護地域以外の都道府県での開催に限れば26試合となって、全体の3パーセントにしかならない。しかもそんな限られた地方開催のうち、今年は鹿児島のホークス戦と新潟のベイスターズ戦が雨天中止となっている。
ちなみに来年のオールスター・ゲームの第2戦は熊本で行われることに決まっているのだが、NPBはこれ以降、「野球振興を目的にプロ野球の試合を球場で目にする機会の少ない地域などの人にも興味を持ってもらい、楽しんでもらいたいという理念に基づき」、オールスターを4年に一度、地方球場で開催することに決定した。つまり次回の地方開催は2022年ということになるのだが、大仰な理念の割に4年に一度とは、なんとも寂しい話ではないか。
地方開催が利益を生みにくいという話はよく聞く。しかし野球人気がどうの、子どもの野球人口がどうのこうのと言うのなら、ペナントレースはもちろん、せめてオープン戦くらいは地方で積極的に開催できないものだろうか。目の前の利益も大事ではあるが、そういう時期を乗り越えつつある今こそ、プロ野球界全体を見据えた先行投資も大事になってくると思う。たとえば独立リーグの球場でダブルヘッダーを開催、第1試合は独立リーグ、第2試合はNPBの公式戦を組むのもいい。〝球春みやざきベースボールゲームズ〟のような複数球団による総当たり方式の試合をたとえば四国や北陸で組むとか、方法はあるはずだ。大相撲を思い起こせば、でっかい力士たちがバスに詰め込まれて連日、地方を巡業しているのだ。プロ野球選手にだって、できないはずはないと思うのだが......。
文=石田雄太 写真=湯浅芳昭

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