画像: 【石田雄太の閃球眼】大谷翔平の心を動かす本気の知恵

【石田雄太の閃球眼】大谷翔平の心を動かす本気の知恵

2016年11月10日に行われた侍ジャパン強化試合のメキシコ代表戦の試合前に、ドジャースの主砲であるエイドリアン・ゴンザレスらと談笑する大谷翔平
ファンタジーと笑うなかれ。
以前、こんな興味深い取材をしたことがある。大谷翔平が小学2年生で野球を始めた当時、岩手県の水沢リトルリーグで事務局長を務めていた浅利昭治さんにきいてみたのだ。そのお題は、こうだ。
もしもリトルリーグ時代の“ピッチャーの大谷”と“バッターの大谷”が対戦したら、どんな結果になると思いますか――。
すると浅利さんは、ファンタジーの世界の話だというのに、この空想の対決について、大真面目に思い浮かべてくれた。
ピッチャー、12歳の大谷翔平。バッター、12歳の大谷翔平。
浅利さんの脳内で再生された12歳のピッチャー大谷の初球は、ど真ん中のストレートだった。それを振りに出たバッターの大谷は、ファウルにする。
「翔平の投げるストレートは120キロは出ていたと思います。リトルリーグのバッテリー間は14メートルですから、体感では140キロに近かったでしょう。さすがのバッター翔平も、それだけのスピードには差し込まれていたでしょうね。ファウルにするのが精一杯だったと思います」
2球目は、スライダー。速い真っすぐの残像が頭に残っているバッターの大谷は、手を出すことができず、見逃しのストライク。早くも追い込まれてしまう。
「あのころのピッチャー翔平は、カウントを取るためにストライクゾーンへ投げるスライダーと、三振を取るためにボールゾーンへワンバウンドさせるスライダーの両方を投げることができました。速いストレートが頭にある中で、ストライクゾーンにカクッと曲がるスライダーが来たら、バッター翔平はビックリするじゃないですか。とても手を出せるものじゃなかったと思います」
そして3球目、ワンバウンドになるスライダーを、バッターの大谷は空振り、結果は3球三振。
「リトルリーグのルールではキャッチャーがパスボールしてもスイングしていたらアウトなんです。振り逃げがないんですよ。だからピッチャー翔平は、追い込むとワンバウンドのスライダーを振らせていました。ほとんど三振でしたね」
では、バッター大谷がピッチャー大谷を攻略するとしたら、どんな可能性があるのだろう。
「12歳のピッチャー翔平を攻略するとしたら、バットを振り切らないことですね。振っちゃったらおしまいですから、振り切らずに逆方向へ、カットさせます。確かに寂しい作戦ですけど(苦笑)、ファールを打たせて、球数を稼ぐしかなかったでしょうね。でも、ワンバンのスライダーはファウルも打てないでしょうから、追い込まれたら打つ手なしですよ。そのくらい、あのときのピッチャー翔平は、抜きん出てましたからね。でも、それだけ屈辱的な結果に終わればバッター翔平も黙ってないですよ。当時は5割以上の打率でしたけど、たまにアウトになるとものすごい悔しがりようでしたから......翔平の引きつった顔は、今でも忘れられません(笑)」
メジャー行きが現実味を帯びてきた今、改めて思う。これほどまでに魅力的な大谷翔平の2つの才能を、メジャーの価値観で潰されてたまるか、と――。
大谷がポスティングシステムによってメジャーの市場に出されれば、おそらくかなりの数の球団が獲得に名乗りを上げるに違いない。それは、MLBが採用したいわゆる“25歳ルール”によって、マイナー契約しか交わせなくなった大谷獲得に必要な資金は青天井ではなくなるからだ。つまりマネーゲームでなくなる分、メジャーの球団には、二刀流をどのようにオペレーションするつもりなのか、そのための知恵が求められることになる。
大谷がどんな条件を優先させるのかは想像の域を越えないが、上っ面で二刀流を提案するだけでなく、具体的な起用法を提案するなど、本気だという覚悟を感じさせる知恵を絞り出せた球団こそが、大谷の心を動かすような気がしてならない。
上限が20億円だとか総額の15パーセントだとか譲渡金ばかりが取りざたされているが、現行のままなら、ポスティングシステムによる大谷とメジャー各球団との交渉期間は30日間しかない。仮に30球団と交渉するとしたら、時間は限られてくる。その中で、どの球団が大谷の2つの才能を潰さない、本気の知恵を絞り出してくるのか。そのことへの興味は尽きない。
文=石田雄太 写真=小山真司

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