2017Xリーグ「強豪対決X番勝負・その5」

Xリーグ・レギュラーシーズン「強豪対決X(じゅう)番勝負」の「その5」は、10月1日、相模原ギオンスタジアムで対決したノジマ相模原ライズ対IBMビッグブルーの対戦にスポットを当てたい。

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】第1クオーター10分、ノジマ相模原QBガードナーが2ポイントコンバージョンを決める。まるで歌舞伎の「元禄見得」を切ったようなポーズとなった

【ノジマ相模原vsIBM】第1クオーター10分、ノジマ相模原QBガードナーが2ポイントコンバージョンを決める。まるで歌舞伎の「元禄見得」を切ったようなポーズとなった

サインを求める子どもたち

子どもは正直だ。ヒーローにあこがれる。ノジマ相模原がIBMを49-42で破った後、相模原ギオンスタジアムのメーンゲート前で行われたサイン会で、QBデビン・ガードナーの前に並んだファンの列は隣の選手とは長さがまるで違っていた。男の子も女の子もガードナーの前に列をなした。ミシガン大を卒業後、大学院で社会福祉学を学び、児童教育が専門だったというガードナーは子ども好きだ。満面の笑顔で、子どもたちの帽子やシャツにサインをして、一緒に記念撮影に応じていた。子どもたちだけではなかった。年に一度のノジマ相模原のホーム開催を、実習として手伝った大学生ボランティアたちも、記念撮影をせがんだ。女子学生は口々に「かっこいい」を連発していた。

米カレッジフットボールの名門を5校上げろと言われたら米国人の誰もが、必ずその一つに選ぶであろうミシガン大。その名門中の名門で3年間エースを張ったQBガードナーにとって、来日2年目にしてのベストゲームが、この日のIBM戦だった。パス27/37、成功率72.97%、405ヤード、4タッチダウン(TD)、ラン11回、100ヤード、3TD。ノジマ相模原の全TDをたたき出した。さらにポイントアフタータッチダウン(PAT)で2ポイントコンバージョンをランで成功させた。この場面、ガードナーはまるで歌舞伎の「元禄見得」を切るようなポーズでエンドゾーンに飛び込んだ。背が高く、頑健で、足が速く、強肩という、日本人では持ち得ない身体能力が、オフェンスの様々な局面で躍動し続けた。デュアルスレッドQBが、オフェンスの中で機能するとこうなるという見本のような試合となった。

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】試合後、ガードナーにサインを求める子どもたち

【ノジマ相模原vsIBM】試合後、ガードナーにサインを求める子どもたち

シュートアウトを制した

試合は序盤から、シュートアウトに突入した。ライズのオフェンス、ファーストシリーズは敵陣22ヤードまで攻め込んだが、ガードナーのパスがインターセプトされた。ビッグブルーはQBケビン・クラフトがTEジョン・スタントンをメーンターゲットにパスを決めてあっさりTDを奪って先制する。この後はTDを応酬となり、第1クオーターだけで、14対14。両チームのオフェンスがまったく止まる気配がなく、どこまで点が入るのかと感じた。

しかし、第2クオーター、流れは変わる。ライズは、ライズ3本目のTDは2プレー25秒、4本目のTDは3プレー40秒という速攻で決めた。一方、ビッグブルーはクラフトのパスのタイミングがすこしづつずれ始め、反則などもあってTDが奪えないシリーズが生じてきた。結局35-21で後半へ折り返した。

前半で、ガードナーのパスは300ヤードに達していた。後半、ライズはプレー選択でランを増やした。第3クオーターにゴール前でガードナーが自らキープしてTDを奪った。第4クオーターには、敵陣21ヤードまで攻め込んでパスを狙った場面で、ラッシュして来たビッグブルーのDEジェームズ・ブルックスに捉まったが、ほとんど仰向けに倒れながら投げ込んだパスを、WR鈴木謙人がキャッチした。アクロバティックなプレーにライズ側のスタンドは沸き返り、サックを決めたと思っていたビッグブルー応援席は黙り込んだ。このシリーズも最後はガードナーがエンドゾーンに持ちこんでTDを奪った。49-28。結局このTDが勝敗を決めた。

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】第2クオーター、ノジマ相模原QBガードナーがIBMのDLトゥアウ、ブルックスに迫られながら冷静にパスを決める

【ノジマ相模原vsIBM】第2クオーター、ノジマ相模原QBガードナーがIBMのDLトゥアウ、ブルックスに迫られながら冷静にパスを決める

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】第2クオーター7分、ノジマ相模原WR八木がQBガードナーからのパスをキャッチしてTD。八木はパスレシーブ203ヤード、2TDと活躍した

【ノジマ相模原vsIBM】第2クオーター7分、ノジマ相模原WR八木がQBガードナーからのパスをキャッチしてTD。八木はパスレシーブ203ヤード、2TDと活躍した

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】第4クオーター、ノジマ相模原WR鈴木が、倒れながら投げたQBガードナーからのパスをキャッチしてゴール直前まで迫る

【ノジマ相模原vsIBM】第4クオーター、ノジマ相模原WR鈴木が、倒れながら投げたQBガードナーからのパスをキャッチしてゴール直前まで迫る

ブルックスとトゥアウのラッシュに臆さず

プレーヤーとしてのガードナーの魅力は、人に対する強さだ。第4クオーターのほとんどサックされた体勢から決めたパスも驚かされた。しかし、筆者が試合の流れを変えたと感じたプレーは、第2クオーター最初のオフェンスだった。2本目のTDをパスレシーブで記録したRBシオネ・ホマが脚部を負傷、宮幸崇がRBに入った。

ファーストダウン、ビッグブルーDLのブルックスとチャールズ・トゥアウが同時に侵入してきた。「QBサックだ」。そう思った瞬間、ガードナーは軽く右腕をふった。アンダーニースの宮幸にスクリーンパス。宮幸は快走し、敵陣深くまで侵入した。筆者は当初、チェックダウンと思ったが、改めてビデオを見るとデザインされたパスだったようだ。ただ、195センチ123キロのブルックスと、196センチ141キロのトゥアウに目の前まで迫られても、まったく臆するでもなく正確にパスを決められるガードナーの胆力に改めて驚いた。相手のクラフトが、DEだけでなくLBや様々な位置にセットするライズの新米国人、マリオ・オジョムリアに気を取られて徐々にパスのタイミングを狂わせたのと対照的だった。

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】第3クオーター6分、ノジマ相模原QBガードナーが9ヤードを走ってTD

【ノジマ相模原vsIBM】第3クオーター6分、ノジマ相模原QBガードナーが9ヤードを走ってTD

対称的な「局面での弱さ」

しかし、これだけの能力を持つQBでありながら、ガードナーのオフェンスにはいつも不安定さがつきまとう。この試合も、最後に1TD差まで追い上げられたきっかけは、自陣でガードナーがショットガンから慌ててセットバックに切り替えてボールをファンブルし、ビッグブルーにリカバーを許したことだった。タイムアウトをコールすればよいだけで、慌てる必要はなかった。しかし、前戦のオービック戦も、そして昨年、ゲーム終盤の競り合いの中で何度もミスを犯した場面でも似たような場面は目に付いた。ディフェンスの選手の能力にではなく、局面に負けてしまうところが多いように感じる。それが、日本に来て2年たちながら彼の能力で勝ち切った試合が少ない理由だろう。

ランゲーム構築が鍵

この試合、ガードナーの強肩が切り開いた試合というよりは、パスとランのバランスアタックに近かった。ライズのプレー選択はパス37回、ランは最後のニーダウンを除いて28回。第1クオーターだけで7回49ヤードをゲインしたホマ。交代して、実質的なランプレーのスクリーンパスも含めれば100ヤードを走った宮幸の力があったため、ガードナーのスクランブルやQBキープが生きた。ミシガン大時代から、ガードナーはランが好調なときはパスも好循環に入る。200ヤードを超えたランオフェンスがパスによる400ヤードと4TDにつながったといってよい。

筆者は個人的にはディフェンシブなゲームを好むが、シュートアウトゲームを否定しない。招待された地元相模原の人たちの中には、初めてアメリカンフットボールを見た人も多いはずだ。「頼りになる、かっこいいQB」がTDを量産したこの試合にフットボールの魅力を感じたのではないか。しかし、その地元の人たちの感じた魅力を発揮し続けるためには、ランゲームをより一層磨き、ガードナーが局面でもぶれずに冷静な対応を続けることが重要だ。それがライズの悲願、日本一への道ではないだろぅか。【小座野容斉】

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】パスでも400ヤード4TDと日本に来て以来最高の成績をおさめたノジマ相模原のQBガードナー

【ノジマ相模原vsIBM】パスでも400ヤード4TDと日本に来て以来最高の成績をおさめたノジマ相模原のQBガードナー

◇須永恭通・ノジマ相模原ヘッドコーチ

・この勝利について

勝ったのはよい。試合前に、選手もコーチもスタッフも、相手が云々ではなく、とにかく自分たちが全力を出し切ろうと決めていた。それはできたと思う。しかしやってはいけないミスが多かったので、コーチサイドとしてはもっとマネジメントしなければという反省がある。

・去年から「スーパー9」のチームに勝てなかった。そこを乗り越えられたが

自分たちではそんなに意識していなかった。決して相手を軽く見ているわけではないが、勝てると思って試合をしていた。それは別に揺らぐことはなかった。ただ結果として勝って一つの山を越えたのは事実だろう。

・ホマが負傷して、代わりに入った宮幸が良い働きをした

RBはダブルエースでやっているので、最初はシオネが出ていたが、もともと宮幸が出るプランだったので、バタバタはしなかった。

・なんといっても7TDのガードナーに尽きると思うが

よかったところは多かった。ただ修正しなければいけないところはある。それはガードナーの実力や能力ということではなく、僕らコーチサイドや、もちろん選手も含めて、彼をチームにフィットさせなければいけない。どちらかが妥協して合わせるのではなく、高いレベルで融合させなければならない。それがまだまだ。もっとできると思う。

・八木を始め、出島、鈴木とだいぶ日本人のレシーバーにあってきたと思うが

彼らは常日頃からデビンと一緒に練習をしているので、その積み重ねの結果だと思う。

・ガードナーは、相手のブルックスやトゥアウに対してそれほど神経質にならないでプレーできていたように感じるが

サイドラインの我々もデビンも最大限、ケアはしていた。ただ我々が考えていた以上に、オフェンスラインが凄く良い働きをして、相手をコントロールできていた。それが序盤で我々にも分かった。だから今日は、もちろんデビンのパフォーマンスは大きかったが、OLの頑張りがその結果をもたらしたと考えている。

・次はLIXIL戦、昨年非常に好ゲームを展開しながら惜敗した相手だが

毎回、言っていると思うが、ウチのチームは相手は関係ない。自分たちの力を最大限出すということだと思うので。それができればどんな相手にも負けるとは思っていない。

・「敵は我にあり」ということか

その通り。もちろんLIXILは凄く良いチームで、簡単に勝てるなどと思っていないが、我々は自分たちの力を尽くすだけ。

◇ノジマ相模原QBデビン・ガードナー

・このゲームのスタッツは、IBMが556ヤード、あなたたちのチームが611ヤードだ。あなたたちのオフェンスがこれをやった

本当か?それはクレイジーだ。

・だがこの試合は15分クオーターではなく、12分クオーターだ。

分かっている。本当にクレイジーだ

・この結果にどんなことを感じているか

とてもグッドゲームだった。IBMは偉大なチームだが、我々はスターターも控えもみなエクスキュートした。ライズにとっても私にとっても素晴らしいゲームだった。

・IBMのジェームズ・ブルックス、チャールズ・トゥアウという米国人選手についてどう考えているか

非常にレアな選手たちだ。とても大きく、過去に多くの成功を収めてきた。だが、見ていて分かっていると思うが我々の日本人のOLがとてもよい仕事をしてくれた。パスプロテクション、ランブロック。このゲームの中で彼らにとって大きなチャレンジだったと思う。

・第2クオーターの宮幸へのパスは、

この試合、たくさんのプレーがあって記憶が曖昧で、憶えているプレーも憶えていないプレーもある。ただ今日のゲームは、そのプレーもそうだが、試合の行方を左右するようなビッグプレーが多数あって、それが我々がやることができた。

・宮幸のランアフターキャッチも凄かったが、ジェームズ、チャールズが凄いラッシュをしてきたのに、ナーバスにならずに落ち着いて決めた

そう見えたのは嬉しいが、実際には試合を通してかなりナーバスになっていた。そういう試合だった。

・5年前からは考えられないくらい、高い能力があるNCAAフットボールで活躍した選手がXリーグに来るようになった

Xリーグはずっとレベルが上昇し続けている。プレーだけでなくゲームの運営なども含めてトータルでレベルが上がり続ければ、もっと良い選手が来るようになる。米の大学で活躍しながらプロへいけなかった選手に、活躍の場を与える貴重なリーグになるだろう。

画像: 【ノジマ相模原vsIBM】試合後、ボランティアの学生たちと記念撮影をするノジマ相模原のQBガードナー

【ノジマ相模原vsIBM】試合後、ボランティアの学生たちと記念撮影をするノジマ相模原のQBガードナー

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