画像: “アジア王者”会見に見た社会人野球の強さ

“アジア王者”会見に見た社会人野球の強さ

備わっていた人としての力
侍ジャパン社会人代表は第28回BFAアジア選手権で優勝を遂げた(左から北村、佐藤主将、石井監督、谷川)
落ち着きのある、大人の空気が流れていた。
10月9日の夕刻、台湾から到着し、羽田空港内で行われた優勝記者会見に登壇したのは石井章夫監督以下、選手3人だった。
侍ジャパン社会人代表は第28回BFAアジア選手権(台湾)で2大会ぶり19度目の優勝を遂げた。香港とパキスタンとの予選ラウンドで大勝すると、スーパーラウンドではライバルと目された韓国と台湾に快勝。台湾との決勝も投打がかみ合って、6対1と圧倒して無傷の5連勝でアジア王座へと上り詰めた。
記者会見冒頭で今大会、初めて侍ジャパン社会人代表を率いた石井監督が喜びを口にした
「アジアNo.1を取る、とやってきて、無事に優勝することができてホッとしている」
社会人として当然と言えば当然かもしれないが、選手3人は石井監督の話を、耳をそばだてるようにして聞いていた。次に佐藤旭主将(東芝)が口を開けば、石井監督はうなずき、谷川昌希投手(九州三菱自動車)、北村祥治内野手(トヨタ自動車)も一言一句を逃すまいと耳を傾けていた。
アジアのライバルチームよりも、技術だけが上回っていたのではない。人としての力が備わっていたのだと強く感じた。寄せ集めの急造チームとはいえ、個々が自立している社会人は「戦う集団」として結束するのが早いとされる。個性派選手が多かったそうだが、ここ一番でのまとまりは抜群であったという。
なぜ、一丸になれたのかと言えば「アジア王者」という目標設定があったから。そして、社会人野球(企業チーム)という、同じ境遇にある24人。都市対抗や日本選手権など、負けられないトーナメントの戦いに慣れている集団であり、短期決戦の瀬戸際では無類の強さを発揮できるのだ。トーナメントといえども精神的に成長段階にある高校生、リーグ戦が主戦場である大学生、1年間の長丁場で勝負するプロ野球。つまり、社会人はこの3つのカテゴリーとは、まったく違う世界でプレーしているのだ。
プロは野球が仕事だが、社会人は仕事と野球を両立する。実社会という厳しい環境に身を置き、一般社員とともに働く。その中で企業の「士気高揚」を目的として野球をする。給与をもらってプレーするわけだから、その重みは学生とは比較にならないほどの「責任」が伴うのである。
“負けられない試合”での粘り、集中力
極論を言えば、約1週間で勝負を決める国際大会に最も順応できるのが社会人だと思う。過去のオリンピックを振り返ってみても、公開競技だった1984年ロサンゼルス(金)、88年ソウル(銀)、正式競技となった92年バルセロナ(銅)、96年アトランタ(銀)と社会人を軸としたチーム編成で、4大会連続でのメダルを獲得している。だが、プロが解禁となって以降、プロアマ合同だった2000年シドニーは4位、プロ単独となってからも04年アテネ(銅)、08年北京(4位)と決して満足のいく結果を残せていないのが現状だ。
技術、戦術、体力では当然、プロが上であることは間違いない。しかし、国際大会へ向けた調整法、そして「負けられない試合」での粘り、集中力については、社会人のほうが明らかに経験値は高いように思える。野球・ソフトボールが復活する2020年の東京オリンピックは「最強チーム」を編成することになっており、プロが中心になることは間違いない。当然、侍ジャパンは世代間で行っていることだろうが、社会人とプロによる情報共有をさらに充実させてほしいと願う。
今回の優勝を受けて、自チームに何を持ち帰りたいのか? その質問に対して、亜大から入社2年目のトヨタ自動車・北村は姿勢を正して言った。
「個人的にもレベルアップしないといけないが、社会人野球全体にも今回の経験を存分に伝えていきたい。グラウンドでのプレー、私生活を含めて、常に見られていると肝に銘じて行動したい」
極限状況に追い込まれても慌てない。こうしたメンタルの充実こそが、落ち着いたプレーを生む。社会人野球の強さを感じた金メダル会見の1シーンであった。
文=岡本朋祐 写真=BBM

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