画像: 【ドラフト候補の肖像】JR東日本・田嶋大樹 「心技体」すべての面で成長を遂げ、満を持してプロへ

【ドラフト候補の肖像】JR東日本・田嶋大樹 「心技体」すべての面で成長を遂げ、満を持してプロへ

つかんだ力を抜く感覚
大きな目標を立て、それに向かって邁進する。考え方もプロ向きだ
数字ばかりではない。ドラフト候補と取り上げられるごとに“最速152キロ左腕”と評される田嶋大樹の力量を示していたのは、今年の都市対抗、伏木海陸運送との1回戦だった。130キロ台後半の直球をコーナーに突き、打者の打ち気を逸らすようにブレーキの効いたスライダーを交えていく。走者を出せばギアを上げ、球速は140キロ台後半に。凡打の山を築き、相手打線を寄せ付けず1安打完封。チームを3年ぶりの初戦突破に導く省エネ投球で、ピッチングの幅を見せつけた。
「60~70パーセントの力でも、コースを間違えなければ長打はない。ずっと心がけていたんですが、今までは80~90パーセントにしか抑えられなかった。うまく、力を抜く感覚をつかめたのは(都市対抗二次)予選のセガサミー戦から。目指してきた投球ができました」
その考えは、歩んできた社会人での3年間があってこそ。1年目に走り込みで基礎体力を培うも、2年目の昨年の都市対抗1回戦では9回まで無失点も延長10回にサヨナラ被弾。「試合終盤に打たれることが多い」と反省を生かし、200球を超える投げ込みを敢行して投げるスタミナを強化した。さらに胸に誓ったのは「勝たなければ意味がない。チームを勝利に導く」こと。だからこそ、制球力を重視。さらに力を抑えることで連投も苦にしなくなった。
その“技”を支えるのは“心”に加えて“体”に他ならない。自身を「感覚派」という左腕は、理論よりも感性を大事にし、調子のバロメーターは「ボールを持ったときの重さの感覚」だという。そこから体の感覚にも目を向けた。
「ボールが重く感じても軽く感じてもダメ。重いときは疲労が原因なので修正が利くのですが、軽過ぎるのが一番よくないんです。その理由は何かトレーナーさんに聞いたんです。そうしたら『インナー(マッスル)が人より緩い』と言われて」
以降、キャッチボールやブルペンでの投球練習前後にチューブ・トレーニングを欠かさず「インナーの締り具合」も感覚で調整。体調管理にも気を配り、寮の食事がでない休日は、野菜も多く摂るように。「自分の投球が、チームの結果を左右する」と、エースの自覚が意識の変化をもたらした。
「勝利」の2文字を追い求め
社会人での3年間で“心技体”すべての面で成長を遂げ、満を持してプロへ――。その運命の1日、10月26日のドラフト会議を約1カ月後に控えた現在の心境を問うと、意外な答えが返ってきた。
「いつかプロになりたいという漠然とした思いはありましたけど、小さいころからプロにあこがれて『ずっと目指してきた』というわけではないんです。プロを本気で意識し始めたのは今年に入ってからなんです」
意識が変わったのは、身近な存在の影響が大きかった。社会人の日本代表で、ともにプレーした源田壮亮(トヨタ自動車→西武)、山岡泰輔(東京ガス→オリックス)がプロの舞台で躍動。ただ、刺激を受けたのは確かだが、夢を描いているわけではない。
「実際にプロに入ってみないと分からないことばかりだと思うんです。だから今、不安とか希望はないんですよね。入って何を感じるかが大事。そこで初めて自分に必要なことが分かると思うんです」
どこでプレーするにも、大事なのは自分自身。淡々と話す背景には、ブレることのない理想の投手像がある。少し語気を強めたのは、話題がプロから自身について戻ったときだった。
「分かっていても打たれないストレートを投げたい気持ちはあります。でも、やっぱり一番は勝てる投手が目標。そのために、何が必要か考えてやってきたので」
勝利を求めて鍛錬を積んできた社会人での3年間。そんな田嶋にとって、プロの舞台は目指してきた場所ではなく、成長した先にたどりつく場所だ。「希望の球団はありませんし、先発にこだわりもないんです。必要とされる球団で、必要とされるポジションで頑張りたい」と、地に足を着けて前に進む。
プロ入りを果たせば、1年後はシーズンが終わっている。「漠然と先発なら10勝はしていたい思いはありますけど、次の年に、もっと勝てるように何かを感じていれば」と最後まで口を突いたのは“勝利”の2文字だ。プロに挑む21歳は“運命の日”に夢を叶えるわけではない。プロの舞台は、さらなる目標を見つける出発点と位置付ける。
文=鶴田成秀 写真=井田新輔

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