発売中の『ボクシング・マガジン12月号』掲載のVol.1、当Webページに先週掲載したVol.2に続く第3弾!
  今回もWBO世界ライトフライ級チャンピオン田中恒成(畑中)が、WBO世界スーパーフライ級チャンピオン井上尚弥(大橋)に質問攻め! 尚弥はその一つひとつに丁寧に優しく、兄のように答え、恒成は「なるほど、なるほど」とボクシング小僧然として、感心することしきり。
 時折、素顔を覗かせながらも、高いレベルで呼応し合う両雄を、ご堪能ください。

構成/本間 暁        写真/高塩 隆
Structured by Akira Homma  Photos by Takashi Takashio

拳を鍛える&バンデージの巻き方

右のブローは、やっぱり破壊力が突き抜けている! 拳がサンドバッグにめり込んでしまうほど
写真/本間 暁

拳のどの部分をヒットさせるか、しっかりと考え、狙って打つ!
写真/本間 暁

恒成 拳はもう良いんですか? 最近、大丈夫そうですよね。
尚弥 大丈夫そうだよ(笑)。
恒成 練習でもまったく痛くないですか?
尚弥 うん。
恒成 オレ、試合終わって、次の試合までもずっと痛いんですよ。最初、脱臼したんですけど、それが治ってからも、“痛めた” じゃなくて、ずっと痛いんです。
尚弥 バンデージどうやって巻いてる? 試合のときだよ。アンコ(※何層にも折り重ねて厚みをつくるパート)とか。
恒成 いたって普通の巻き方で。病院のリハビリの先生と相談して、ここをこう通して、こう巻いて腱がズレないようにして、でもずっと痛くて。
尚弥 そっか……。オレはでも、サンドバッグを素手で打って、拳強くしちゃえ! みたいな。ガンガン叩いてたら良くなったよ。
恒成 最初、痛いですよね。
尚弥 最初は試合で痛めたような痛みで、それが河野(公平)さんとの試合前で、「ヤベー、これ失敗したな」って。でも叩き続けてたら強くなってきて。
恒成 オレ、空手をやっとったときは素手しかやってなかったのに、いまじゃ痛っ! みたいな(笑)。
尚弥 試合のとき、バンデージ巻くときこうやってアンコ作るでしょ。たとえば15周巻いて、それをペタッて付けるだけ?
恒成 はい。
尚弥 それはねぇ、痛めるよ。マジで。
恒成 というと……。
尚弥 たとえば、こういうガーゼ(と言いながら目の前のおしぼりを2つ取る)を2枚くらい使って、これをこう置いてこう折るの。
恒成 めちゃくちゃ分厚いですね。
尚弥 分厚いよ。だから、こういうアンコは作んない。
恒成 あのバンデージで作れる分厚さじゃ足りないってことですね。
尚弥 そうそう。バンデージは2本くらい使う。1本でしょ。
恒成 はい。
尚弥 それはでも、ちゃんとこれを使うよって言えば大丈夫。バンデージの巻き方も変えた方がいいかもしれない。オレは、1年前くらいの座間の試合から、バンデージのプロの人にやってもらうようになって。普段は15周アンコを作ってペタッとやるだけだけど、8オンスのときは必ず。あとは、いつも素手でサンドバッグを殴って鍛える(笑)。
恒成 そういうとこ単純ですね(笑)。
尚弥 単純だよオレ(笑)。
恒成 オレも次の公開練習、素手でやっとるかもしらんです。「今日はどんな練習やるんですか?」、「もう、このままいきます!」って(笑)。
尚弥 (笑)。原始的だけど、空手でもそうやって鍛えてるからね。
恒成 空手の人って素手で痛めないですもんね。
尚弥 ということは、それがすべてだよね。ボクシングは布とグローブに守られてるからね。

目指すモノ

──おふたりにプレッシャーをかけるわけじゃないんですけど、前々から本誌では『日本のボクシング界の新時代を築いていってもらいたい』ということで、この対談は個人的にも夢だったんです。
恒成 対談っちゅうのか、質問っちゅうのか……(笑)
尚弥 世間話っちゅうのか(笑)。
(一同爆笑)
恒成 あ、もうひとつ! 抽象的でもいいんですけど、どこを目指してやっていますか?
尚弥 目指す、かぁ……。
恒成 ゴールっちゅうか、最終的にこうなりたいというのがあるならでいいんですけど、そうじゃなければ、いま見えている、こうなりたいという……。
尚弥 アメリカへ行く前は目標とかどうなりたいとかなかったんだけど、この間アメリカで試合してみて、向こうのファンを増やしたいなって。アメリカでする試合数も増やしたいし。向こうでやるとなったら、どんだけ稼ぐかとかそういうところになるよね。
恒成 パウンド・フォー・パウンド目指すとか、そういうのはないですか?
尚弥 それはもう、やっていった結果だよね。
──いまもう、10位以内に入ってますよね。
尚弥 そうらしいですね。
──「ここまで来た」みたいな感情はないですか。
尚弥 それはあんまりないですね。
──見た人の評価ですからね。
恒成 なんかオレ、今日、しょうもない質問ばっかしてますね。
尚弥 (笑)

一緒に練習しよう!

──これからは、発言ひとつも大変になりますね。
尚弥 子ども生まれたし。
恒成 あ、おめでとうございます!
尚弥 ありがとう! 恒成はそっちのほうはどうなの?
恒成 オレは4回戦デビューです(笑)。超絶アウトボクサーです。
(一同爆笑)
尚弥 そっちはグイグイ行かないんだ?(笑)
恒成 もう凡戦です(笑)。いわゆるつまらん試合。
尚弥 (笑)
──尚弥選手はひとり暮らしして、結婚も早く、お子さんもすぐに生まれて。恒成選手もパッとひとり暮らしして、おじさんとしては、そっちも気になるところなんですが。
恒成 オレはもう、30ぐらいで。ゆっくりします(笑)
一同 (笑)
──さっきは尚弥選手の目ざすものを聞いたので、今度は恒成選手の目標を。
恒成 訊かれると難しいですね。
尚弥 難しいよね。
恒成 まず、口だけじゃなく、早く外でやりたいですね。難しいのはわかってますけど。なんか、あれだな。自分より凄い人を前にすると、調子こいたことを言えないな。
尚弥 (笑)
──もうあれですね、大橋ジム行きましょ!
尚弥 そうそう、スパーリングしようよ!
(一同爆笑)
尚弥 小國(以載)さんとはマススパー?
恒成 マス軽くやっただけです。スパーはこっちのほうだと、日本の選手だと黒田(雅之)選手、粉川(拓也)選手、長嶺(克則)選手……っていうくらいあんまりやったことないですね。
尚弥 向こうじゃ相手いない?
恒成 そうですね、ほとんどやらないですね。ジムの中で翔太(林)さんとか。あと兄ちゃん(亮明)とか。
尚弥 いま、亮明は学校の先生だよね。練習はしてるんだ?
恒成 はい。一所懸命やっとるんでしょうけど、気持ち的にどうかはわからないです。そう、接触ないので。
──そこは尚&拓と違うところですよね。
尚弥 そうなんだ。
恒成 高校時代、ホント嫌いでしたから。隣におれんくらい(笑)。
(一同爆笑)
恒成 いまはもう仲良いですけど。
──尚弥選手は拓真選手と仲良いですもんね。
尚弥 仲良いですね。
恒成 ケンカとかしないんですか?
尚弥 最近はねぇ。昔はしょっちゅうしてたよ!(笑)。高校くらいまで。普通にケンカしてた。
──スパーリングはもうやらないですもんね。
尚弥 やらせてもらえないですね。兄弟ゲンカになりますもんね(笑)。
(一同爆笑)
恒成 え、なんで?(笑)。スパーリングのときは割り切れそうじゃないですか。
尚弥 あのねぇ、いっちばんムカツクのよ、パンチもらうと(笑)。そうするともうねぇ、兄弟ゲンカみたいにくっついて、ボクシングじゃないのよ。とりあえず当ててやろうみたいな。
恒成 尚弥さんのほうから兄弟ゲンカを仕掛けてるんですね!(笑)。
尚弥 うーん、そうだね(笑)。
(一同爆笑)
恒成 逆ならありえると思ったんですけど。うちだったら、オレから仕掛けるならあると思ったけど。
尚弥 マスからスパーになって怒られるみたいな(笑)。「いい加減にしろよ!」って。
──スパーリングじゃないにしても、1度ふたりの手合わせをみたいですね。
尚弥 一緒に練習しようよ。
恒成 そう言っていただけると嬉しいです。お願いします!

かつては名古屋での調整が続いた恒成だが、東京の角海老宝石ジム、金沢のカシミジムなど、出稽古も徐々に増えてきている。尚弥との合同練習が実現すれば、大きな話題になること必至!
写真/本間 暁

アニソン!? とコスチューム

画像: 9月のアメリカ初進出では、イエロー&ブラックのコスチュームで登場した尚弥。年末のカラーははたして── 写真/山口裕朗

9月のアメリカ初進出では、イエロー&ブラックのコスチュームで登場した尚弥。年末のカラーははたして──
写真/山口裕朗

同じく9月のV2戦では、やや派手な衣装で登場した恒成。首の装飾が「チクチクした(笑)」そう
写真/石井愛子

恒成 いまから練習ですか?
尚弥 うん。これから。
恒成 ジムまでは遠いんですか。
尚弥 空いてたら、家から車で30分。免許持ってる?
恒成 はい。
──恒成選手は運転してます?
恒成 してないです。最近、車買ったとこです。まだ来てないです。
尚弥 何買ったの?
恒成 トヨタの86です。
尚弥 いいじゃん!

<すき鍋定食を完食した恒成に対し、尚弥はざるそばをかなり残している>

恒成 本気でダイエット始めるつもりらしいですね。
尚弥 (笑)。60くらいにしようと思ってね。練習ガッツリやった後は、しっかり食べるけど。恒成は筋トレしてる?
恒成 してます。フィジカルトレーニングに週3で行きます。行ってますか?
尚弥 うん。フィジカルは週2で、筋トレは朝、各自で。スポーツクラブ行ったり、家の前で懸垂をやったり。器具を使うときは高村さん(淳也トレーナー)の相模原に週1行ったり、自宅に週2で来てくれたり。それは体使って、スクワットだったりバービーだったりサーキット系。で、そこで浩樹がアニソン流すっていう(笑)。
(一同爆笑)
尚弥 いつでもアニソンだし、練習するときもアニメのTシャツだし。
恒成 大橋ジムで流れとる音楽は誰が決めるんですか?
尚弥 あれはねぇ、オレがiPodつないだり、CD流したり。さすがにそこでアニソンは流れない(笑)。
恒成 そこのアニソンはないんですね。
尚弥 さすがにねぇ、流せない。そんな度胸はあいつにはない(笑)。
(一同爆笑)
恒成 18時台19時台でアニソンを流すとかじゃないんですね(笑)。
尚弥 ヤバいでしょ、それは(笑)。
──拓真選手はちょっとハマり始めてるって浩樹選手に聞きましたが。
尚弥 ハマってるっていうか、浩樹が聴いてるから覚えちゃってるみたいな。
──尚弥選手は一切ない?
尚弥 耳に残りますからねぇ……。
恒成 何て曲名あるんですか? ひとつだけ教えてください(笑)。
尚弥 そもそも『ラブライブ』って知ってる?
恒成 名前は。常連そうですね(笑)。
尚弥 もう、常連だよー(笑)。
恒成 それこそ浩樹さんので知ったくらいです。
尚弥 オレもそうだよ(笑)。
恒成 入場曲とはいかんまでも、毎日聴いとったら、「今日の試合前、車で何を聴いて来たんですか?」、めっちゃ真剣な顔して(声のオクターブを下げて)「ラブライブ」……っていつか言っとるかもしれないです。
(一同爆笑)
尚弥 入場曲がもうアニソンだから。あ、入場といえば、今度の年末の試合、3人とも全員トランクスの色一緒なんだ。トランクスって、どっかのデザイナーに頼んでる?
恒成 大阪まで行ってます。
尚弥 あ、行ってんだやっぱり。
恒成 はい。尚弥さんはミズノですか?
尚弥 オレはミズノ。自分で色選んで、だいたいパターンがあるじゃんミズノって。だからそこで色を組み合わせて。
恒成 最初にガウンだけそこの大阪で、トランクスはミズノだったんですけど、クォリティを上げてきたところで、ミズノのほうから「トランクスもそっちのほうがいいんじゃない?」って言ってもらって。なんで、おんなじセットアップで。
尚弥 あ、じゃあそこはミズノの素材は使ってないんだ。
恒成 はい。で、「mizuno」って入れるっていう。
尚弥 ああ、そういうことね。
恒成 なので、そこで、こうしたい、こういうのがいいんじゃないみたいに決めてます。
尚弥 恒成は毎回デザインが派手になってるから。
恒成 おかしい方向に行ってるんじゃないか? っていうのがあるんですけど(笑)。自分の中では良くても。この前のは炎の部分がチクチクしたんで(笑)、消そうかなと思います。
一同 (笑)
尚弥 ミズノだとパターンが限られてるからね。今度はトランクスもシューズもガウンもみんな一緒。
恒成 それはおもしろいですね。あんまりないですもんね。みんなで合わせてっていうのは。
尚弥 おもしろいでしょ!

~To be continued~

PROFILE
いのうえ・なおや◎1993年4月10日生まれ。神奈川県座間市出身。身長164cmの右ボクサーファイター。父・真吾さんがアマチュアボクシングをしていた影響を受け、小学1年(6歳)でボクシングを始める。その後、父が開いた『井上ボクシングジム』(神奈川県秦野市)でトレーニングを続け、小学6年からスパーリング行脚を開始。すでに全国で名前を知られる存在に。
 2007年、中学3年で『第1回U-15全国大会』に出場し、優勝と同時に優秀選手賞を獲得。相模原青陵高校に進学し、1年でインターハイ、国体、選抜の全国3冠を果たした。アジア・ユース銅メダル、世界ユース・ベスト16、インドネシア大統領杯金メダル、世界選手権ベスト16、全日本選手権優勝、アジア選手権銀メダルなど、高校時代は7冠を達成している。
 2012年10月2日プロデビュー。2013年8月25日、田口良一(ワタナベ)の持つ日本ライトフライ級王座に挑戦し、判定勝ちで奪取。国内最速タイ記録の4戦目での獲得だ。同年12月6日、ヘルソン・マンシオ(フィリピン)を5回TKOで破り、空位のOPBFライトフライ級王座を獲得。5戦目での同王座獲得も国内男子最速タイ記録。2014年4月6日、WBC世界ライトフライ級王者アドリアン・エルナンデス(メキシコ)を6回TKOで倒し、6戦目という国内最速世界王座奪取記録を作る(防衛1=返上)。
 2014年12月30日、世界に名高い名王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を衝撃の2回KOで打ち砕き、WBO世界スーパーフライ級チャンピオンに。これまた当時、世界最速8戦目での2階級制覇を達成した。しかし、この試合で右拳を負傷し、手術も経て、1年のブランクをつくった。
 その後、5度の防衛戦を5勝(4KO)でクリアし、今年9月9日、念願のアメリカ初登場。カリフォルニア州スタブハブ・センターで行われたスーパーフライ級メインキャスト総登場の『Superfly』で、アントニオ・ニエベス(アメリカ)を6回終了TKO。6度目の防衛を果たした。12月30日、横浜文化体育館で7位のヨアン・ボアイヨ(フランス)とV7戦を行う。来年2月24日、アメリカで再び開催される『Superfly2』への出場を熱望している。
アマチュア戦績=81戦75勝 (48KO・RSC)6敗
プロ戦績=14戦14勝(12KO)
 弟・拓真(21歳)、従兄・浩樹(25歳)とともにアマ時代から切磋琢磨し、現在も同じ大橋ジムで励む。尚弥は2015年12月に結婚し、今年10月5日、男児が誕生している。

PROFILE
たなか・こうせい◎1995年6月15日生まれ。岐阜県多治見市出身。身長164cmの右ボクサーファイター。空手の支部長だった父・斉(ひとし)さんの影響で3歳から空手を習い始める。小学5年で、打撃を練習するために地元のイトカワジムでボクシングを習い始め、そのおもしろさを知って競技変更。中学生になり、U-15全国ボクシング大会にも出場し、中京高に進学。元OPBFスーパーフライ級王者の石原英康監督の指導を受けて、1年で国体優勝を皮切りに、インターハイ、選抜など4冠を果たした。また、3年時に出場したアジア・ユース選手権では銀メダルを獲得している。
 2013年11月10日、現役高校生のままプロデビュー。2014年10月30日、OPBFミニマム級王者・原隆二(大橋)を10回TKOで下し、国内男子最速となる4戦目でOPBF王者となった。
 2015年5月30日、フリアン・イエドラス(メキシコ)とのWBO世界ミニマム級王座決定戦に臨み、12回判定勝ち。5戦目での世界獲得を果たし、井上尚弥の6戦目を上回り、国内最速世界王座獲得記録を更新した(防衛1=返上)。
 2016年12月31日、すでに2階級制覇を果たしている名高いモイセス・フエンテス(メキシコ)とWBO世界ライトフライ級王座を争い、5回TKO。8戦目での2階級制覇は井上尚弥と並び日本最速記録。
 今年9月13日、パランポン・CPフレッシュマート(タイ)を9回TKOで破り2度目の防衛を果たしたが、両目眼窩低を骨折。年末にWBA王者・田口良一(ワタナベ)との統一戦を行うことで、両陣営が交渉を始めていたが、負傷によって、この話はいったん白紙となった。
アマチュア戦績=51戦46勝(13KO・RSC)5敗
プロ戦績=10戦10勝(6KO)
2014年4月に中京大学経済学部に入学。現在、4年生で在学中。

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