昇格決定前夜、思いが報われた

2017年11月11日、J2に所属するV・ファーレン長崎は、ホーム・トランスコスモススタジアム長崎で行なわれた2017明治安田生命J2リーグ第41節・カマタマーレ讃岐戦に3対1で勝利し、クラブ史上初となるJ1昇格を決めた。

試合後、スタジアムレコードとなる2万2407人の大観衆が見守る中で行なわれた「J1昇格達成&ホーム最終戦セレモニー」。今年4月に就任した髙田明代表取締役社長、故郷のクラブを大舞台へ導いた高木琢也監督ら選手・スタッフが笑顔を見せる中、ひと際日焼けした顔で喜びをかみ締める人物がいた。

「選手やスタッフの皆さん、ファン・サポーターの皆さんが喜んでいる姿がうれしい。これまでやってきたことが報われたような気がします」

声の主は本田悟氏。2014年9月からV・ファーレン長崎トップチームが専用練習場として使用してきた、長崎市戸石町にある「V・ファーレン十八銀行フィールド」のグラウンドキーパーだ。

「グラウンドが完成した当時のことを考えると感慨深いですね。(J1昇格を達成し)クラブを少しでも支えられたのではないかと思います」(本田氏)

2014年、J2参入2年目のシーズンを戦っていたV・ファーレン長崎は、専用の練習拠点を有しておらず、同年10月に長崎県で開催された「第69回国民体育大会」の影響で専用練習場の確保を急務としていた。そこで、施設名に名を残す株式会社十八銀行、JFL時代からのスポンサーである株式会社チョープロなど、地域のスポンサー各社の協力を得て同施設を急ピッチで整備。翌2015年春からは、施設に隣接していた民家をリノベーションした〝純和風クラブハウス″の使用も始まり、サッカーファンの注目を集めたことは記憶に新しいかもしれない。

以前は長崎市内のゴルフ場に勤務していた本田氏。同施設の整備に伴い、施設整備に尽力した株式会社チョープロに籍を置き、グラウンドに常駐して芝生管理に取り組むこととなった。

「最初は手探りのスタートで(苦笑)。ゴルフ場と違い『1日の練習でここまで芝生が荒れるのか』と思いましたね。選手やスタッフの皆さんなど、いろいろな人に教えていただきながら、チームがベストなパフォーマンスを発揮できるグラウンドを用意するよう努めました」(本田氏)

トレーニング前は「少しでも気持ちよくプレーしてほしい」と、グラウンドを一周して掃除をすることが日課だった。トレーニング終了後は、高木監督やチームスタッフに芝生の感想を聞き、時には県内各地のサッカー場を管理する〝先輩たち″の元へ足を運び、手ほどきを受けた。梅雨時など天候に恵まれない時は思うようなグラウンドコンディションを届けられず、申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうになることもあった。それでも、選手たちや、クラブへ声援を送るファン・サポーターのため、日々全力を尽くした。

記念すべきJ1初昇格を決めた前夜、そんな思いが報われたような出来事があった。

「明日の試合後に行なわれるセレモニー、ぜひ本田さんも参加してください!」

宮内祐樹主務からの電話。聞くと、選手たちからのリクエストであることを教えてくれた。
本田氏が所属する株式会社チョープロの荒木健治代表取締役もこれを快諾。「クラブや関係者の皆さんに感謝し、胸を張って参加してきてください」と、セレモニーへ送り出された。

そして、スタジアムを一周した際、今夏より期限付き移籍で加入したMF丸岡満から「良いグラウンドをありがとうございました」と声を掛けられた。過日、在籍最年長選手であるDF髙杉良太から届けられたメッセージには「今年だけの力で今があるわけじゃない。結果だけで返せないほどお世話になりました」と、現在のみならず、これまでクラブに携わったすべての人々への感謝の気持ちが綴られており、再び胸が熱くなった。

歓喜から数日が過ぎた日、「V・ファーレン十八銀行フィールド」には数台のトラックが停まり、引っ越し作業が行なわれていた。クラブは11月15日より、2015年より整備が進められていた天然芝1面、人工芝半面、新築の専用クラブハウスを有する「諫早市サッカー場」へ練習拠点を移転。来る新たなステージでの一年は、新天地で幕開けを迎える。そして、「V・ファーレン十八銀行フィールド」は今後、サッカーをはじめとする県内のスポーツ振興に活用される予定だ。クラブから要請があった場合、いつでもトレーニング会場として使用できるよう今後も〝プロ仕様″を念頭に管理していくつもりだという。

「さびしい気持ちも少しありますが、自分や『V・ファーレン十八銀行フィールド』の整備に携わった皆さんがやってきたことをムダにしないためにも、これからも良いグラウンドを作っていきたい。このグラウンドから、将来V・ファーレンでプレーするような選手が巣立っていってほしいですね」(本田氏)

たくさんの汗と涙、クラブを愛する多くの人々の思いが詰まった天然芝グラウンドは、ひとまずその大役を終えた。V・ファーレン長崎のさらなる飛躍を願いながら、これからもサッカーを愛する地域の人々を本田氏とともに底支えしていく。

選手やスタッフとともに歓喜のピッチに立った本田さん。その写真は大切に飾られている

Profile●ほんだ・さとる/1960年4月5日生まれ。長崎県出身。長崎県内の高校を卒業後、印刷会社等を経て、長崎市内のゴルフ場に勤務。2015年1月に株式会社チョープロへ入社し、V・ファーレン十八銀行フィールドのグラウンドキーパーを務める。V・ファーレン長崎ホームゲーム開催時は観客席から声援を送る。

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