歓喜の北京オリンピックから9年

 2008年7月21日、皆さんはソフトボール日本代表が北京オリンピックで金メダルを獲得したときのことを覚えているだろうか。その年の流行語大賞にノミネートされた「上野の413球」の力投とともに、五輪戦士たちの素晴らしい戦いぶりを思い出す方も多いのではないだろうか。

 決勝戦の最終回、7回裏二死からアメリカの打者が放った鋭い打球を、三塁手の廣瀬芽が好捕。送球が逸れたものの、一塁手の佐藤理恵が身体を目いっぱい伸ばしてつかむ。佐藤がそのウイニングボールを空高く投げ上げ、マウンドでガッツポーズを掲げる上野の元に次々とナインが駆け寄る。そして、テレビからは解説の宇津木妙子氏の「よし!よし!よし!やったぁー!」という涙の絶叫が聞こえてくる。

 1996年のアトランタ大会から正式種目となったソフトボールは同大会で4位、2000年のシドニー大会で銀メダル、そして04年のアテネ大会で銅メダルと、何度もメダルを獲得してきたが、05年7月に12年のロンドン大会よりオリンピック種目から除外されることが決定。この時点で最後のオリンピックとなった北京大会で、斎藤春香監督率いる15人の戦士たちは、日本ソフトボール界に悲願の金メダルをもたらした。

画像: 北京オリンピックを大特集した本誌2008年10月号の表紙

北京オリンピックを大特集した本誌2008年10月号の表紙

宇津木麗華監督の下で再び金メダルを!

 あれから9年が経過。五輪種目から除外されたものの、日本代表は世界トップレベルの力を維持してきた。2010年の世界選手権で銀メダル、12年の世界選手権ではアメリカを破って42年ぶりの優勝を飾ると、14年は大会連覇を果たす。16年7月に行なわれた世界選手権は銀メダルに終わるも、その直後の8月、ソフトボール界に明るいニュースが飛び込む。20年東京大会でのオリンピック種目復帰である。

 そして、同年12月には20年東京オリンピックを見据えた、新生日本代表が始動した。指揮を執るのは宇津木麗華氏。中国出身の宇津木氏は、尊敬する宇津木妙子氏を頼って1988年に来日し、95年に帰化。以降、シドニー五輪、アテネ五輪で日本の主軸打者として活躍するなど、日本のソフトボール界を長きに渡ってけん引してきた。現役引退後は、ルネサスエレクトロニクス高崎(現ビックカメラ高崎)の監督に就任。2011年から14年まで一度日本代表チームを率いたのち、16年に日本代表監督に復帰。昨年の監督就任会見では、東京オリンピックでの金メダル獲得を宣言した。

画像: 選手として世界の大舞台で戦ってきた経験を生かして指導にあたる宇津木監督。目指すは金メダルただ一つだ

選手として世界の大舞台で戦ってきた経験を生かして指導にあたる宇津木監督。目指すは金メダルただ一つだ

北京戦士のビッグ2が支える現日本代表

 昨年12月に始動した新生日本代表は、選手の入れ替わりを行いながら活動2年目に突入した。現在、29名(ケガで2名が欠席)の候補選手たちが、昨年に続き沖縄・読谷村で強化合宿を行っている(12月5日~21日)。中心選手として名を連ねるのは、北京オリンピック当時25歳だった上野(現在35歳)と23歳(現在33歳)だった山田恵里だ。北京オリンピックで金メダル獲得という最大の目標を達成した二人は、オリンピック種目から除外されていた期間も使命感に駆られ、身を粉にしながら日本チームをけん引してきた。

画像: 今年で35才を迎えた上野。北京オリンピック後は、心の葛藤と戦いながらも代表で居続ける選択をしてきた

今年で35才を迎えた上野。北京オリンピック後は、心の葛藤と戦いながらも代表で居続ける選択をしてきた

画像: 現チームのキャプテンを務める山田。若い選手たちに持てるすべてを注入している

現チームのキャプテンを務める山田。若い選手たちに持てるすべてを注入している

 そのほか、チームを構成するのは、北京五輪の選考で漏れた河野美里(32歳)や、オリンピックの狭間の世代と言われる20代中盤から後半までの中堅世代、そこにオリンピックを知らない高校生4人を含めた若手選手が加わる。みな、それぞれオリンピックに懸ける思いは違うが、メンバー入りを目指して金メダルを獲るという強い気持ちを持ってこの選考に臨んでいる。来年以降も入れ替わりはあるが、最終的には15名のメンバーで本大会を戦うことになる。

打倒・アメリカの構図は変わらず

 チームが目指すのは、最大のライバル・アメリカを倒しての大会連覇である。ここ最近の世界選手権やそのほかの国際試合で日本はアメリカから勝利を収めているが、過去のアメリカを知る宇津木監督、上野、山田は皆一様に、今のアメリカは本来のアメリカではないと言い切る。現在のアメリカ代表は若手主体でチームを構成しており、おそらくオリンピック本番に向けては、最強のチームをつくり上げてくるはずだ。

 北京オリンピックで、私たちに衝撃を与えたアメリカの四番、クリストル・ブストスと上野の対戦を覚えているだろうか。決勝では、4回にソロ本塁打を浴びるも、次の6回の打席でブストスを敬遠。過去のインタビューで、あの選択が大きかったことを上野自身が回顧している。ブストスだけではない、北京オリンピック当時のアメリカは一番から九番まで気の抜けない打線だった。

 上野自身もここ数年のアメリカに対して、「昔と比べるとバッターのレベルもぜんぜん違う。あのころは一球も失投できないという緊張感があったけど、今は正直なところ、それがない」と言い切っている。そして、チームの指揮を執る宇津木監督も「まだ私の戦いは始まっていない」と話す。現時点での日本代表は、合宿や国際試合で選手個々のレベルアップを図っている段階。層の厚いアメリカに勝つには、まずは個々のレベルを上げる必要がある。そして、アメリカが本番を見据えたチームづくりをはじめた時点でやっと、日本もアメリカに対してのチームづくりを行っていくというわけだ。

 そこで、現時点で一つの目標となってくるのが、2018年に千葉県で開催予定の『第16回世界女子選手権』での優勝である。2020年の東京オリンピックの前哨戦とも言えるこの大会で、アメリカがどのようなチームをつくり、そして日米両国がどのような戦いをするのか。この後、日本は1月、2月、3月と国内外の強化合宿を予定している。多くのソフトボール関係者の願いがかなって開催されることになった、東京オリンピックでのソフトボール競技。全身全霊を懸けて戦いに挑んでいくソフトボール女子日本代表からますます目が離せない。

画像: 打倒・アメリカの構図は変わらず

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