文/宮崎正博

画像: 来日経験もあるゾラニ・テテ。世界戦の最短KO記録でさらに大きな注目を集めた

来日経験もあるゾラニ・テテ。世界戦の最短KO記録でさらに大きな注目を集めた

開始5秒。右フック一撃で挑戦者が失神

 昨年11月18日、イギリス・北アイルランドはベルファストのSEEアリーナで行われたWBO世界バンタム級タイトルマッチで “世界記録” が誕生した。IBFのスーパーフライ級に続いて今年4月にこの王座を獲得したゾラニ・テテは、同じ南アフリカ出身のシボニソ・ゴニャと初防衛戦を行い、なんと11秒でKO勝ちを収めたのだ。このKOタイムはおよそ130年の歴史を持つ近代ボクシングの世界タイトルマッチ史上、最短の記録になるのだ。

 南アフリカ人同士による海外初のタイトルマッチとあって、ふたりの故郷では大きな関心を呼んだ試合だったが、結末はあまりにあっけない。サウスポーに構えた両者がリングを一周した直後、テテが繰り出した右フック。この一撃でゴニャは昏倒する。このときオープニング・ゴングから5秒。イギリス人レフェリーのフィル・エドワーズはカウントを開始したが、目をつむったまま意識を失っているゴニャを見て、カウントを止めて試合終了を宣したもの。

 もちろん大喜びのテテだったが、立ち上がれない同胞の姿を見て冷静になったか、肩車をしようとするセコンドを押しとどめて、対戦者の姿をのぞき込んでいた。ともあれ、29歳のテテは29戦26勝(21KO)3敗。175cmの長身から繰り出すパンチは危険きわまりない。これまで勝ち味が遅い傾向もあったが、世界記録達成も決してフロックではない。

前世界記録は17秒

 こんな “事件” があったら、どうしても「じゃあ、その前の記録保持者は?」と気になるところ。元1位は1994年9月3日、オーストリアのウィーナー・ノイシュタットでの、これもWBOのタイトルマッチ、スーパーバンタム級チ ャンピオンのダニエル・ヒメネス(プエルトリコ)が地元のハラルド・ガイアーをストップした17秒。ヒメネスは決してKOパンチャーではなかったが、右ストレートがいきなりジャストミート。ガイアーのダメージは深く、キャンバス上で立ち上がろうともがく。20戦全勝11KOのヒーローの世界戦とあって大盛り上がりだった場内は一瞬にして静寂。ラウル・カイズ・シニアのカウントが9のときに何とか立ち上がったガイアーは、そのままばったり倒れ込んでストップされた。

 このKOタイムは長く世界に知られていなかった。ガイアーのキャリア作りが未熟で、世界戦公認を問題視したこともあってか、しばらく世界的には無視されていたのだ。ともあれ、開始5秒で倒したテテの記録はカウントアウトしていても、この17秒よりも早い。文句な しの世界新記録樹立と言えよう。

強烈だったマクレランの左ボディ

 1993年8月6日、プエルトリコのバヤモンでのWBC世界ミドル級タイトルマッチ。史上有数の強打者対決となったジュリアン・ジャクソン(ヴァージン諸島)との強打戦で鮮やかなTKO勝ちを収めたばかりのジェラルド・マクレラン(アメリカ)がジェイ・ベル(アメリカ)を20秒でKOしている。こちらはレフェリーのトニー・ペレスがしっかりとカウント10まで数え上げている。ベルの右ストレート、左をかわしたマクレランが右をフェイント気味に出して、下からかき上げるような左フック。ボディを痛撃されたベルはひとたまりもなくリングに横ばいになったまま身動きひとつできなかった。「初回? ボディ一発で?」。情けないなんて言ってはいけない。角度といい、タイミングといい、あまりに素晴らしいマクレランのパンチだった。

4位はホプキンス。長寿命の礎に強打あり

 もうひとつ。これもミドル級の世界戦だ。1996年アメリカ・アリゾナ州フェニックスのIBF戦。チャンピオンはバーナード・ホプキンス(アメリカ)。挑戦者のスティーブ・フランク(ガイアナ)を右ストレート一発で沈めている。この時間は24秒。フランクはからくも立ち上がったが、その目はうつろなまま。レフェリーのロバート・フェラーラはカウントを9まで数えたあと、フランクの目をのぞき込んでそのままストップをコールした。

 49歳まで世界チャンピオン(ライトヘビー級)だったホプキンスは2016年、51歳でラストファイトを行ったが、得意のダーティートリックと巧妙な試合運びばかりの選手ではない。一撃の破壊力があってこそ、長寿命を保つことができたのだ。

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