同世代もうらやむ才能

広島ユースのアウェー戦を取材していると、ボールパーソンを務める相手チームの選手から必ずと言っていいほど聞こえてくる言葉があった。
「7番のキックが凄い」「マジで巧い」「そんなところが見えているのか」

それらの感嘆の言葉は、今季トップ昇格する川村に向けられたものだ。
武器は精度の高い左足キック。視野の広さを生かした縦パスと、中長距離のフィードは年代でも屈指だ。さらに、180センチの高身長も相まって、早くから広島の未来を担うボランチとして将来を期待され、広島ジュニアユース時代には、U-15日本代表のフランス遠征で日の丸も背負った。

同じ高校生がうらやむほどのサッカーセンスを備える一方、課題も明確だった。運動量の少なさや球際の弱さなど守備力が明らかに不足しており、美しさと脆さが同居する“ガラス細工”のような印象を抱かせる選手だった。

変化の兆しが見えたのは、高校2年生となった一昨年の春。広島ユースで定位置を確保し、自慢の左足で見せ場をつくる機会が増えた。課題だった守備でも、沢田謙太郎監督から口酸っぱく指摘され続けたことで改善が進み、主力の一人として高円宮杯プレミアリーグWEST優勝に大きく貢献した。

試合での存在感が増したことにより、トップチームからも注目され始め、一昨年の11月にはオーストラリア合宿にも参加した。「プロの練習に参加する機会が増えて、プレーの余裕が増えてきたし、左足のパスは通用すると思った」

最上級生となり、その成長速度はさらに加速していく。開幕と同時にトップチームに2種登録され、昨年6月にはU-18日本代表に招集された。ワンランク上の世界や、同じ左利きの大型MF伊藤洋輝(磐田)のプレーを目の当たりにし、これまで言われ続けた自身の課題が浮彫になった。「あらためて、自分に足りないものを痛感して、悔しかった」と、川村は振り返る。自らの限界を超えて、より運動量や球際の激しさを意識し始めた。

同時に、「1、2年生の頃はチームが勝てば良いとしか思わなかったけど、チームメイトの自己主張が強いので、それに感化されて、最近は“俺が目立ってやる”という気持ちが出てきた。そうしたら、プレーも強気で行けるようになってきた」と話すように、大人しい印象があったメンタル面にも変化が見られ、試合中に味方を鼓舞するシーンや、鬼気迫る表情でゴールに迫る回数も増えた。

ひ弱だった姿は、もう過去のもの。美しくも、たくましい左足を武器に、プロの世界へと殴り込みに行く準備は進んでいる。

 
文・写真◎森田将義
 

川村拓夢[MF/サンフレッチェ広島ユース/3年]
かわむら・たくむ/1999年8月28日生まれ、広島県出身。小学生時代は原SCでプレーし、中学から広島の下部組織へ。U-15、U-18代表経験も持つ。今季、トップ昇格。180cm、65kg

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