強攻策を選択した理由と根拠

 今春から高校野球の主要な公式戦で導入が決定したタイブレーク制。延長12回を終えて引き分けだった場合、延長13回は無死一、二塁から始め、打順は継続打順となる。延長12回の攻撃が九番で終わった場合、13回の先頭打者は一番から。二塁走者には八番打者、一塁走者には九番打者が入る運用方式まで決定した。

 無死一、二塁からの攻撃では、打順と相手投手との力関係や狙う点数によってさまざまな戦術が選択されていくことになる。

 2017年の夏の甲子園準決勝、広陵対天理では下記のようなシーンが見られた。2対3と1点を追う天理は4回裏、2連打で無死一、二塁とし、打順は八番・杉下海士と下位に向かっていくところ。中村良二監督は「点の取り合いになっていくことが予想された」という中で、この左の八番打者に「引っ張り」のサインで状況を動かしにいった。

「広陵の左投手に対して、二番から八番に打順を下げた杉下ですが、足が速く、ゴロでもダブルプレーはないですし、フライになっても一、三塁の形はつくれます。そうなれば投手の九番打者にスクイズをさせて、走者を二塁に置いて、上位でさらに得点を狙っていこうと考えていました」

 犠打で一死二、三塁をつくることと、打たせて最低でも一死一、三塁、うまくいけばさらに多くの得点を狙えるとの判断が「引っ張り」のサインを選択させた。結果は「出来過ぎ」の杉下の三塁打で2点を奪い、無死三塁となった(その後の得点はならず)。

画像: 無死一、二塁、杉下は甘く入ったボールを引っ張り、右越えの2点適時打とした

無死一、二塁、杉下は甘く入ったボールを引っ張り、右越えの2点適時打とした

 強攻させた理由にはバッテリーの配球の読みもあった。「バントを予想しやすいシチュエーションで、やらせようとするなら球が甘く入りやすく、バントをさせまいとするなら高めの速球を選択しやすい場面です。甘い変化球でも引っ掛けて一、二塁間に打てるでしょうし、インハイの直球でも引っ張りやすい。そうした条件も重なっていました」

 1点を争うタイブレークでも、自チームの投手の出来から先攻でも3点以上を狙っていかなければならないケースもある。そうした場合の奇襲に、考えられる一手だ。

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