4年前、ソチ五輪に臨むためロシアに降り立った羽生。今回はどんな表情で空港に降り立つのだろう。SOCHI, RUSSIA - FEBRUARY 03: Men figure skater Yuzuru Hanyu of Japan arrives at Sochi International Airport ahead of the Sochi 2014 Winter Olympics on February 3, 2014 in Sochi, Russia. (Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images) 

 ここは高層マンションの23階。冷たい風がピューピューと音を立てて窓ガラスを揺らしている。

 というわけで今、私と毛受亮介カメラマンは平昌(ピョンチャン)にいる。いや、正確にいうと毛受カメラマンは雑誌協会の代表撮影で開会式が行われる平昌にいて、私は氷上競技エリアの江陵(カンヌン)のメディアビレッジ(報道用宿舎)の一室で暖房を効かせながら、コンビニ弁当(3800ウォン)と辛ラーメンを食べつつ放送を見ている。

 なぜ開会式に行かないのか。それは寒いからだ。いや、ふざけてなんかいなくて真面目な理由だ。オリンピックの開会式を生で見るチャンスなんて、一生の間にそうあるものではない。しかし、そもそもどうして私がここにいるかといったらフィギュアの取材のためで、開会式に行ったがゆえに風邪をひいたとか、凍った道で転倒したとか、そういうマイナス要素をつくりたくなかった。

 2月6日に現地入りして以来、部屋に戻ったらうがいをして腕まで石鹸で洗い、毎食後に風邪薬を3錠、飲んでいる。さらにヨーグルトを毎日3食。万が一リタイアする事態になったら代わりの記者がいないので、わりと緊張感を持って過ごしている。

画像: 報道陣が宿泊するメディアビレッジ。私たちの部屋は23階でエレベーターがなかなか来ず、今朝は予定していたアイスアリーナへのシャトルバスに乗り遅れた。15分おきの発車なのでダメージはなかったが… 撮影:毛受亮介

報道陣が宿泊するメディアビレッジ。私たちの部屋は23階でエレベーターがなかなか来ず、今朝は予定していたアイスアリーナへのシャトルバスに乗り遅れた。15分おきの発車なのでダメージはなかったが… 撮影:毛受亮介

 さて、開会式に先駆けて今日の午前中からいよいよフィギュアスケート競技が幕開け。団体戦、男子とペアのSPが行われた。

 有力選手にミスが続いた男子SPは、宇野昌磨が冒頭の4回転で手をつきながらも、その後はうまく立て直して100点超え。ペアも須崎海羽・木原龍一組がパーソナルベストを更新し、1日目を終えて総合3位とまずまずの出足。皆さんも気分よく開会式をご覧になっているのではないだろうか。

 競技と並行して、現在の記者間の話題は「Xデー」だ。羽生結弦が現地入りする日が迫っているのだ。「空港はどこ?」「何時くらいの到着?」。スポーツ紙の多くは、翌朝の1面を羽生が飾ることになるだろう。カメラマンと記者をどう「競技担当」と「空港組」に振り分けるか頭を悩ませているが、そこにあるのは高揚感だ。長い沈黙を破り、ついに羽生が姿を見せる。久しく聞いていなかったあの声で言葉を発するのだ。胸が高鳴らないはずがない。

 昨夜、メディアビレッジの大通りでブライアン・オーサーコーチとすれ違った。韓国のスタッフと熱心に話していたので話しかけることはできなかったが(競技外のプライベートな時間でもあるし)、表情はとても明るかった。彼とて四六時中、羽生のことだけを考えているわけではないだろう。それでも仮に羽生がシリアスな状態であれば、できるだけ長くトロントにとどまっただろうし、「彼は100%になる」宣言も、「フリーで4回転4本、もしくは5本入れる」ことを示唆することもなかったはずだ。

 11月のケガで羽生はいったん心身ともに下降した。それでも練習を再開し、本来の技術を取り戻す過程の中で、心の面でも非常に充実していることが想像できる。「よーし、いいぞ、俺」「そうだ、その調子だ、俺」というように、一つひとつの技が少しずつ「できていく」ことの喜びを感じながら、とてもいい精神状態で韓国に乗り込んでくる気がするのだ。さらに試合になれば、羽生には大きなアドバンテージがある。世界中のどこのリンクでもホームにしてしまう、世界一熱いファンの存在だ。

 ともあれ、今は団体で頑張っているチーム日本の戦いを見つつ、羽生がどんな表情で韓国入りするのか、ニマニマしながら楽しみに待ちたい。

画像: 1年前からお色直しをしたフィギュア会場・江陵アイスアリーナ。ここで演技する羽生の姿を早く見たい 撮影:毛受亮介

1年前からお色直しをしたフィギュア会場・江陵アイスアリーナ。ここで演技する羽生の姿を早く見たい 撮影:毛受亮介

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