12月31日に始まる第99回全国高校サッカー選手権大会。埼玉県代表としてこの大会の出場権を持ち、2021年は鹿島アントラーズをはじめ3クラブに4選手を送り込む昌平高校に、「ポジショニングの指導方法」について聞く。今大会の優勝候補にも挙げられる昌平の藤島崇之監督のポジショニングの考え方とは――。
出典:『サッカークリニック』2020年9月号
狙っているプレーを「いつ、どこで」するか――ポジショニングについての考えを聞かせてください。藤島 育成年代として次(のステージ)につなげなければいけないという前提で考えると、ポジショニングにおいて重視するのは、「相手を見て派生するもの」という捉え方です。つまり、相手がいる中で判断材料を得て、自分のプレーを選択することが重要なのです。チームによっては「ここにボールが入ったらここにいる」というような決まり事があります。それも指導法の一つですが、相手との関係によって判断し、選択することが重要だと思います。
――サッカーには攻撃時、守備時、守備から攻撃のとき、攻撃から守備のときという4つの局面があります。ポジショニングはそれらの局面においての原理原則に基づいて派生するもの、という考え方でしょうか?藤島 そうです。最も優先すべきは、ゴールに向かってボールを運んでフィニッシュまで持ち込むことです。相手の守備はそれを阻みに来るわけですから、ボールを受けたときに相手にとって嫌なポジションにいることが大事だと思います。
良いポジションだと思って先にその位置に入っても、相手に見られて、パスが出てくるタイミングになったときには良いポジションではなくなっていることが多々あります。だからこそ、パスを出したり受けたりする瞬間に良いポジションをとれるように、あえて手前にポジションをとって相手に食いつかせてから、一番入りたい裏のポジションをとるなどの工夫が必要なわけです。発想と駆け引きをいかに柔軟に選手に持たせられるかが、すごく大事な要素だと思います。
――「いつ、そこにいるか」ということですね。藤島 思うようなプレーができる場所にどのタイミングでいられるかが大事なのです。例えば、「良いディフェンスをしている」と言うことがよくあります。ただ、マークを徹底してパスを出させないのが良いディフェンスなのかと言えばそうでもなく、奪いきれずに蹴られてカウンターで沈んでしまうこともあるわけです。良いディフェンスとは、意図した場所にボールが動くようにし、そこでボールを奪い取れる守備です。
逆にオフェンスとしては、相手の誘いに乗らない、乗ったとしてもその逆を突くといったことが重要で、そこには駆け引きが存在します。駆け引きで上回るためには、セオリーにこだわり過ぎないことが必要です。システマティックにやり過ぎると、「この選手がこのポジションに落ちてきたらここを使う」といった約束事ばかりに気が向いてしまいます。こちらが望むような対応を相手がしていないのにパスを出して奪われるケースが生じてしまうのです。
みんなが良いポジションに入ろうとして、相手のギャップをとることばかり狙ってしまいます。ギャップをとることは重要ですが、相手が守備をセットしている状態でギャップに入り続けても、相手にとっては非常にわかりやすいのです。ギャップに立つ目的は相手を困惑させるためなのですが、セオリー通りにやると、逆にわかりやすくなり、こちらの意図が相手にバレバレの状態でプレーすることになってしまいます。
私たちは「ポジションを崩す」という表現を使いますが、相手のバランスを崩すことが必要なのです。そのためには相手の反応に応じて、ポジションを変えながらボールを動かしていかなければなりません。特に、引いてガチガチに守ってくるチームに対しては、セオリー通りにやってもなかなか崩せません。守備組織を壊す、つまり「相手のポジションを崩す」ためには、相手を見て、相手の守り方に応じて変化させなければいけないのです。
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