米プロフットボール・NFLインディアナポリス・コルツのエースQBフップ・リバースが現地1月20日、現役引退を発表した。リバースはチャージャーズ時代、2016年まで本拠地として過ごしたサンディエゴの地元紙記者に「今がその時、正しい決断だ」と語った。リバースは、コルツのQBとして、1月9日のワイルドカードプレーオフでバッファロー・ビルズに24-27で敗退、去就を注目されていた。
現役最後の試合となったプレーオフのビルズ戦。ゴール前オフェンスに臨むコルツQBリバース=photo by Getty Images
米スポーツ専門局ESPNのアダム・シェフターとクリス・モーテンセンによると、リバースは、(2008年に)AFCチャンピオンシップでプレーした日でもある1月20日に引退発表をすることを決めていたという。
「NFLのQBとしてプレーするという子供のころの夢を実現してくれた神様に感謝したい」とリバースは語った。
「まだパスを投げられるし、プレーすることが大好きだ」というリバースだが、高校フットボールのヘッドコーチになることを決めているという。
サンディエゴ・チャージャーズ時代のQBリバース=photo by Getty Images17年目、39歳になるシーズン、リバースはルーキー年からプレーしたチャージャーズに別れを告げて、 1年2500万ドルの契約でコルツのエースQBとなった。16試合に出場し、パス4169ヤード、24タッチダウン(TD)、11インターセプト(INT)、成功率68%という成績で、コルツは11勝5敗。AFC南2位の成績を残しプレーオフにも進出した。
コルツのフランク・ライクHCは「まだ良いフットボールができる」と、来季もリバースが戻ってくることを望んでいたという。
リバースは引退声明の中で次のように感謝の言葉を語った。
「16年に及ぶチャージャーズ、そして17年目のコルツに感謝しています。選手としても人としても成長させてくれたコーチ陣に感謝しています。サポートスタッフに感謝しています。毎週、肉体的にも精神的にも挑戦的に相手をしてくれた敵のディフェンスに感謝しています。プレー中の冗談やからかいも楽しかった。私が判定に不服で騒いだことを我慢してくれた審判に感謝しています。ほとんどの場合、私の言うとおりだったと思いますが」
「サンディエゴのファンに感謝しています。応援とブーイングの双方をくれた全米のファンにも感謝しています。チームメートには特に感謝しています。この競技をプレーする上で、最も私が好きだったのは、チームメートになってくれたことでした。ありがとう」。
「最後に妻であり親友のティファニー、そして子供たちのハル、キャロライン、グレース、ガナー、サラ、ピーター、レベッカ、クレア、アンナに感謝します。皆さんの揺るぎないサポートがなければ、ここまでやり遂げることはできませんでした」。
「私の選手としてのキャリアは終わったが、次の章が始まる」。
現役最後の試合となったプレーオフのビルズ戦でパスを投げるコルツQBリバース=photo by Getty Images
【評伝】変則フォームから正確なパス スーパーボウル未出場QBでは最高のパス成績フィリップ・リバースは、1981年12月生まれ、アラバマ州出身の39歳。
ノースカロライナ州立大学では1年生から先発QBとなり、4シーズン49試合に出場、13484ヤード、95TDという成績を残して、2004年のドラフト1巡全体4位でニューヨーク・ジャイアンツに指名された。
指名の約10分後に、全体1位でQBイーライ・マニングを指名していたサンディエゴ・チャージャーズと、QB同士のトレードがあり、チャージャーズに入団した。
ノースカロライナ州立大時代、ゲーターボウルでノートルダム大を破ったノースカロライナ州立大のQBリバース=2003年1月1日、photo by Getty Imagesチャージャーズでは、QBドリュー・ブリーズの控えとして2シーズンを過ごした後、2006年シーズンから先発QBに昇格した。以降チャージャーズのオフェンスの柱として活躍した。
196センチ、105キロの大型パサー。野球の内野手のような、小さく横手投げに近い変則の投球フォームを酷評されたが、試合では、強肩と正確なコントロールを誇った。
シーズンパス4000ヤード以上が12年、プロボウル選出8回、2008年からは3年連続でパサーズレーティング100超を記録するなど、AFCを代表するQBだった。
優れたパス成績を残しながら、スーパーボウルだけが縁遠かった。
2004年ドラフトでは、イーライ・マニングとベン・ロスリスバーガー(ピッツバーグ・スティーラーズ)がドラフト1巡指名の同期だった。スーパーボウルには、ロスリスバーガーが3回出場2回優勝、イーライも2回出場2回優勝。しかしリバースはAFCチャンピオンシップ進出が1回だけだった。
先発に昇格して1年目、AFCディビジョナルプレーオフでペイトリオッツに敗れ、QBブレイデイと言葉を交わすリバース=2007年1月14日、photo by Getty Imagesその唯一のチャンスが、13年前の1月20日で、当たった相手がレギュラーシーズン16戦全勝のニューイングランド・ペイトリオッツとQBトム・ブレイディだったのは運が悪かったとしか言いようがない。しかもこの試合、リバースは膝のACLを断裂していたという。
AFCでは、リバースが入団以来2018年までの15シーズン中14シーズンで、ブレイディ、ロスリスバーガー、そしてペイトン・マニングが在籍するチームのいずれかがスーパーボウルに進出し続けた。2019年は、ニューヒーロー、QBパトリック・マホームズのチーフスに敗れ、シーズンを終わった。
2019年のシーズン公式戦最終戦で、チーフスとの戦いを終えた後、若きスターQBパトリック・マホームズと握手をするフィリップ・リバース=photo by Getty Images最後のチャレンジと、コルツに移籍して臨んだ今季も、力及ばずプレーオフ初戦で敗退していた。
通算成績はパス8134回、5277回成功、パス成功率64.9%、63440ヤード、424TD、209INT、レーティング95.2。これら全ての数字は、同期のロスリスバーガーとイーライよりも優れていた。
負傷に強く、プレーオフも含めて、252試合連続でプレーをした。パス63440ヤードは、ブリーズ、ブレイディ、ペイトン、ブレット・ファーブに次ぐ史上第5位。スーパーボウル未勝利、未出場QBとしては最高だった。
私生活では、中学校時代からの相思相愛の恋人、ティファニーさんと学生結婚。9人の子宝に恵まれた。引退後は、生まれ故郷、アラバマ州フェアホープにあるセント・マイケル・カトリックハイスクールのコーチとなるという。