5月16日にあった関東大学アメリカンフットボールの春季オープン戦、日本大学フェニックス対法政大学オレンジ(ともに関東学生1部TOP8 )の一戦から両チームの今を探った。
日本大学フェニックス●13-19○法政大学オレンジ(2021年5月16日)
前半、主導権を握ったのは日大。QB加藤俊輔のパスがテンポよく決まった。第1クオーター3分にはK高橋寛太のフィールドゴール(FG)で先制、9分には、QB加藤から新加入のWR毛利元気へタッチダウン(TD)パスが通った。その後両チームがFGを一本ずつ決めたが、第2クオーター8分に日大がセーフティーを奪われた。
後半は一転して法大のペース。第3クオーターにエースRB星野凌太朗のランTDで点差を詰め、第4クオーターには、QB平井将貴のランTDで逆転した。法大はディフェンスでも後半は日大オフェンスに得点を許さず押し切った。
【日大 vs 法大】第3クオーター10分、法大RB星野が12ヤードを走ってTD=2021年5月16日 撮影:小座野容斉
新戦力台頭に手ごたえ…日大 半世紀近くの間、甲子園ボウルをかけて競ってきた両校にとって、春の勝敗に特別の意味はない。
敗れた日大の収穫は、2年生QB加藤の活躍だ。橋詰功監督いわく「昨年は4番手だったQBで、試合に出るのは初めて」だったが、よくコントロールされたパスを早いタイミングで決め続け、オフェンスのリズムを作った。後半に入ってランを封じられたために、やや手詰まりになり逆転されたが、パス22/33で221ヤード、1TD。後半に1インターセプトを許したが、レシーバーが弾いたボールに法大ディフェンスが反応したもので、加藤のミスの割合は少ない。金看板だった林大希の後継QB候補として手を挙げた。
【日大 vs 法大】初の実戦で巧みにパスを決め続けた日大QB加藤=2021年5月16日 撮影:小座野容斉 3年生WR毛利も存在感を見せた。パスに対してしっかりタイミング良く走り込んでキャッチを重ねた。173センチと上背はないが、ボールへの寄りが正確で、集中力がある。小学生で始めたフラッグフットボールでは富士通のチーム「FFFC」で日本一となり、高校からアメリカに渡ってカリフォルニアのジュニアカレッジでもプレーを重ねた。橋詰監督は「やはり、アメリカでプレーしていた選手は競争という部分に強い。単純に球際に強いというのもそうだが、チーム内でも競争する力をいうものをナチュラルに持っている」と評価する。
「DLのスターター4人の内2人が1年生」というディフェンス陣も含め、甲子園ボウル連続出場に向け、若い力が台頭した形となった。
【日大 vs 法大】第1クオーター8分、日大QB加藤からのパスをキャッチしたWR毛利がTD=2021年5月16日 撮影:小座野容斉パスオフェンスにもっとリズムを…法大 一方、勝った法大には喜びはない。有澤玄監督は「向こうは、若手をどんどん投入していたが、うちはかなり1本目中心で戦って、ようやくこの結果」と話す。今季の法大は、QB平井、RB星野、WR小山昭瑛と、実績・経験を積んだ選手が揃ったオフェンスが関東ではトップ級と目されるが、この日は日大に苦戦した。後半になって、星野のランが出るようになりペースを握ったが、QB平井はパスで9/15、93ヤードの獲得にとどまり、課題を残した。
【日大 vs 法大】第4クオーター4分、法大QB平井がスクランブルからTD=2021年5月16日 撮影:小座野容斉 「勝って終わることができたのはよかった」という平井だが、逆転のTDランは「プレーアクションのパスプレーだったけれども、レシーバーが空いていないので、スクランブルした。本来はパスで決めたかった」という。
「サードダウン、ロングでもショートでも取り切れないという課題が、この試合でも出た。QBとしては、ワイドスプレッドでもっとパスでリズムを作ってオフェンスを進めるようにならなければ」と反省する。
法大QBのエースナンバー4を下級生から背負う平井の理想とするQBは、OBの菅原俊(現オービックシーガルズコーチ)だ。「ゲームを作る」部分を見習いたいという。甲子園ボウルを連覇した偉大な先輩に少しでも追いつくためにも、この春は大事な戦いが続く。
【日大 vs 法大】有澤監督(中央)の話を聞く日大の選手たち=2021年5月16日 撮影:小座野容斉
【日大 vs 法大】橋詰監督(中央右)の話を聞く日大の選手たち=2021年5月16日 撮影:小座野容斉