カナダのプロフットボール、CFLの今季開幕に「GO」サインが出た。現地6月13日、オンタリオ州トロントで開かれたCFLの理事会で、8月5日開幕という日程と今季からの労使協定(CBA)改定案について採択され、全会一致で可決された。
今季、CFLに日本から挑戦するLB丸尾玲寿里(ウィニペグ・ブルーボマーズ)、LB山岸明生、RB李卓(ともにモントリオール・アルエッツ)、K佐藤敏基(トロント・アルゴノーツ)ら、6人の選手にとっても朗報となった。
昨シーズンは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、シーズンを全休していた。今季も、当初は6月中旬に開幕の予定だったが、カナダ国内のCOVID-19感染第3波の影響で、約2カ月開幕をずらして8月5日とし、試合数も4試合減らして公式戦14試合としていた。
ランディ・アンブロジーCFLコミッショナーは、「カナディアンフットボールとカナダにとってエキサイティングな日です。この日に向けて、共に努力してきたファン、選手、コーチ、パートナーの皆さんの素晴らしい支援と忍耐に感謝したい。我々のゲームと国を愛するすべての人にとって、これは素晴らしいニュースです」と述べた。
ランディー・アンブロージーCFLコミッショナー=2019年12月、撮影:小座野容斉 先週までに、CFLは選手会(労働組合)とのCBA改定交渉を取りまとめていた。改定されたCBAでは、米国人以外の外国人選手を対象とするグローバルプレーヤーは、ロースター(正選手)枠が2から1となった。ロースターは全体でも、46人から最小43人、最大44人に減らされた。一方、練習生枠は5人増となった。いずれも今季限定の措置という。
今季日本からCFLに参加する6選手と所属チームは次の通り。
モントリオール・アルエッツ:LB山岸明生(富士通フロンティアーズ)、RB李卓(オービックシーガルズ)ウィニペグ・ブルーボマーズ :LB丸尾玲寿里 (アサヒ飲料チャレンジャーズ)、OL町野友哉(富士通フロンティアーズ)トロント・アルゴノーツ:K佐藤敏基(IBMビッグブルー)BCライオンズ:K山﨑丈路 (オービックシーガルズ) キャンプインは7月10日、プレシーズンは行わず、開幕は8月5日、 12月12日の王座決定戦「第108回グレイカップ」に向けて9チームがしのぎを削る。昨年の段階では、プレーオフ進出チームを現行の6から8に拡大することが決まっていたが、現状では今季は6のままの案が有力だという。
【解説】感染ピーク時から状況が大きく改善
XFLとの関係は不明 CFLの開幕が正式に決まった。昨年は中止のため、最大で8千万ドルに及ぶという巨額の損失となったCFLは、今季中止となった場合、リーグ存続自体を懸念されていた。
ロイター通信によると、カナダ国内の感染状況は、開幕2カ月延期を決定した4月中旬から下旬にかけてピークとなり、1日当たりの感染者は1万人を超えていた。先週末、6月12日の感染者は1200人余りと、ピーク時から大きく減少した。同日には、ワクチン接種が可能な12歳以上の在住者の70%以上が最低1回接種しているなど、状況は改善している。
とはいえ、楽観できる状況ではない。CFLの9チーム中3チームのフランチャイズがある東部オンタリオ州では、4月の第3派ピーク時には軍が出動するなど、感染状況はかなり深刻だったという。
CFLは、NFLのような米国のメジャープロスポーツとは異なり、テレビの放映料や、インターネットによる動画中継視聴料は大きな収入にはならず、観客が実際にスタジアムで観戦し、飲食なども含め、そこで使う金額が収益の最も大きな部分という。今回も、有観客が確実なフランチャイズでの開催を優先してスケジュールを組み立てた。開幕から数週間は中西部のアルバータ州、マニトバ州、サスカチュワン州に限定してゲームを開催する。
8月下旬には、カナダ東部の都市で試合が再開される予定というが、確定はしていない。カナダ政府の基準では、無観客、収容人員の35%までの有観客、制限なしの有観客という3段階のステージがあり、それぞれのステージでは最低3週間の期間が必要となる。
2019年の王座決定戦「グレイカップ」=photo by Getty Images CFLは、今年3月、米国の新興プロリーグXFLと提携関係を結んだ。昨年の巨額損失もあって、CFLが仮に今季も中止とした場合、XFLとの合併による新リーグや、カナディアンルールを取りやめ、アメフトルールに移行するのではという憶測も一部であった。
今年、CFLがシーズンを実施することで、当面そのような大きな統合は無くなったとみてよい。ただ、今季もシーズン縮小によって昨年ほど巨額ではないにしろ、赤字は避けられない見込みという。今後、長期的な視点の中で提携の様々な形について議論が交わされることになりそうだ。
カナディアンフットボール カナダで行われているアメフトと類似の競技。主な違いは、アメフトがフィールド上は11人でプレーするのに対し、カナディアンは12人、オフェンスは4ダウンではなく3ダウン制だ。1人多い選手は、オフェンスではレシーバー、ディフェンスではDBとなる。フィールドは幅が2割強、長さが1割、カナディアンが大きい。さらにエンドゾーンはアメフトの倍の奥行20ヤード。必然的にアメフトよりもパスが中心となり、ハイスコアな展開が主となる。
CFLでは攻守の枢要なポジションは1チーム約20名の米国人選手が占める。特にQBは、ほぼ100%が米国人。過去には、ウオーレン・ムーン(元オイラーズなど)、ダグ・フルーティー(元ビルズなど)、ジェフ・ガルシア(元49ナースなど)ら、日本のファンにもなじみが深い選手をNFLに輩出している。
2019年の王座決定戦「グレイカップ」=photo by Getty Images