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2021-08-08

【アメフト】CFL開幕、日本人初得点を記録したK山﨑が味わった「成功と失敗」

=photo by Getty Images

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カナダのプロフットボールCFLは、現地8月5日に2021年シーズンが開幕した。開幕戦では、ハミルトン・タイガーキャッツとウィニペグ・ブルーボマーズが対戦し、前シーズン王者のブルーボマーズが19-6で勝利した。この試合で、ブルーボマーズのLB丸尾玲寿里(アサヒ飲料)がスペシャルチームで登場し、CFLで初めてプレーした日本人となった。現地8月6日には、BCライオンズとサスカチュワン・ラフライダーズが対戦し、ラフライダーズがライオンズを34-29で破った。ライオンズのK山﨑丈路(オービック)は、第2クオーターに43ヤードのフィールドゴール(FG)を決め、CFL史上初めて日本の選手として得点した。


 QB非常事態のライオンズ、山﨑にも「主軸の期待」

 ライオンズは第2クオーター残り6秒で、FGを選択した。山﨑にとってはCFLで最初のFGトライだ。6-32と大差でリードされた場面だったが、山﨑はしっかり落ち着いて決め、日本のフットボールの歴史に新たな一歩を記した。

 山崎は第3クオーター9分にも40ヤードのFGを決めた。しかし、本人にとっては、苦いデビューだったはずだ。より短い2本のFGを外したからだ。

 前シーズンは5勝13敗で最下位だったライオンズは、13勝5敗のラフライダーズの前に劣勢だった。アウェーの会場で、満員の3万5千人の前での試合。何よりも問題だったのはQBだった。エースの米国人QB マイケル・ライリーが肘の負傷で満足に練習ができていなかったのだ。

 ライオンズは2020年ドラフトで指名したルーキー、カナダ人QBのネイサン・ロークを先発させた。これは歴史的な出来事だった。カナダのメディアによれば、CFLは1958年の現行の形式になって以来、過去62シーズンで、カナダ人のルーキーQBが開幕戦に先発したことは一度もなかったという。

 CFLでは、QBは米国人のポジションと決まっている。例えば直近5シーズンのドラフトでは、米カレッジフットボールのオハイオ大で大活躍したロークを含めても、カナダ人QBが指名されたのは2回しかない。ロークの先発は、緊急事態を通り越した異常事態だった。

 ロークはインターセプトリターンタッチダウン(TD)を喫するなど散々の出来だった。ラフライダーズに得点を積み重ねられて一時は31点をリードされた。追い詰められたライオンズは後半から、負傷のエースQBライリーを投入し、猛然と追い上げた。前半は不調だったロークも、第4クオーターに再登場し、パスでTDを決めた。ライオンズは、前半終了時の9-32から29-34まで差を詰めた。

 そういう試合展開で山﨑は43ヤードと40ヤードFGを成功させながら、31ヤードと37ヤードを失敗した。失敗の2本は、そのままアウトオブバウンズに出たため、CFLのルールによって、「シングル」という1点がそれぞれ加えられたものの、成功していれば6点。

 また山﨑は第4クオーターにもTD後のエクストラポイントのキックを失敗していた。パーフェクトな仕事であれば、計算上はライオンズが奇跡的な逆転勝ちを収めていたことになる。

 不利な点はあった。カナディアンルールのFGは難しい。ボールがセットされるのはハッシュと呼ばれるフィールド中央をタテに走る破線の上だが、フィールドが横方向に2割強広いので、ハッシュ自体もアメフトよりも広がった位置にある。ゴールポストの幅の外から斜めに狙うことになる。いくらキャンプで練習を積んでも、初めての実戦では影響が出たのだろう。

山﨑はSNSを通じて以下のようにコメントした。

「試合は、最終的に課題が残る結果となりました。正直、試合になれば緊張もありませんでした。自分の実力不足を真摯に受け止め、もっと試合運びの部分からもしっかり学んで練習から積み上げ続けていきます」

「ただ、出来なかったこともありましたが、出来たこともたくさんありました。3万人のクラウドノイズとか、そういう環境要因とは関係のないところで自分はやっていると再確認できましたし、ミスの後も修正して平常心で臨めました。」

「何よりも最初のFGトライでCFLで日本人初の得点をあげることが出来たことには、素直に誇りを持ちたいと思います」

 ライオンズのリック・キャンベルヘッドコーチ(HC)は山﨑について以下のように語った。

「彼のために言い訳をするつもりはないが、彼は最初から厳しい状況でプレーしていた。本来なら、(すべて中止となった)プレシーズンゲームを数試合こなすことができたし、そこから得るものが大きかったはずだ」

「このような状況下でプレーすれば、誰だって思い通りにはいかない。彼はよく耐えてくれた。彼には精神的なタフさがある。もし私だったら、あのような状況、文字通り異国でプレーする状況に置かれて、あれほどのことができるかどうかはわからない」

 サイドラインの信頼を失っていないことは喜びたいが、ライオンズにはQBの健康問題が継続している。得点力が懸念される中で、チャンスは確実にものにしなければならない。山﨑は既にチームの主軸の1人として、サイドラインからもファンからも期待されている。

キャンプ中のK山﨑=(C) BC Lions
キャンプ中のK山﨑=(C) BC Lions


【動画】山﨑が日本の選手として初めて決めたFG

【CFL公式サイトの動画】ライオンズの反撃届かず ライオンズvsラフライダーズ戦ダイジェスト
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 新型コロナウィルス感染症の影響で、昨シーズンを全休したCFLにとっては、2019年の王座決定戦「グレイ・カップ」以来1年9か月ぶりのゲームとなった。オープニングカードは、グレイカップの再戦で、リベンジを期したタイガーキャッツを、王者ブルーボマーズが返り討ちにした。

 ブルーボマーズは、2019年優勝時の原動力だった、QBクリス・ストレベラーがNFLのアリゾナ・カーディナルスに移籍したが、そのシーズンの終盤にトレードで加入したザック・コラロスがパスで2TDを決めるなど、エースQBとしてしっかり仕事をした。

 日本の丸尾は、スペシャルチームで登場。Xリーグの公式サイトによれば、タックルでヘルメットが脱げる場面もあったという。丸尾は自身のツイッターアカウントで「ゲームの序盤で、規則上、出場できなくなった。けれども大丈夫です。皆さんの応援に感謝して、力に変えています。また戻ってきます」と投稿した。負傷のためのメディカルルールによる退場と見られる。

【小座野容斉】

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