米プロフットボール・NFLは、現地10月14日(日本時間15日)、ペンシルバニア州フィラデルフィアで第6週のサーズデイナイトゲームがあり、フィラデルフィア・イーグルスとタンパベイ・バッカニアーズが対戦。バッカニアーズが、粘るイーグルスを振り切って5勝1敗とした。イーグルスは2勝4敗となった。(写真はすべて Getty Images )
タンパベイ・バッカニアーズ○28-22●フィラデルフィア・イーグルス(2021年10月14日、リンカーン・フィナンシャル・フィールド)【得点経過】
バッカニアーズ 第1Q, 残り9:26 TEO.J.ハワード 2ヤードTDパス←QBトム・ブレイディ(キック成功)
10回75ヤード, 5:34 [7-0]
イーグルス 第1Q, 残り6:01 TEザック・アーツ5ヤードTDパス←QBジェイレン・ハーツ(キック成功)
7回7575ヤード, 3:25 [7-7]
バッカニアーズ 第1Q, 残り0:33 WRアントニオ・ブラウン23ヤードTDパス←QBブレイディ(キック成功)
9回75ヤード, 5:28 [14-7]
バッカニアーズ 第2Q, 残り1:56 RBレナード・フォーネット2ヤードTDラン (キック成功)
11回72ヤード, 5:36 [21-7]
バッカニアーズ 第3Q, 残り5:47 RBフォーネット1ヤードTDラン (キック成功)
12-79ヤード, 7:41 [28-7]
イーグルス 第3Q, 残り2:15 QBハーツ6ヤードTDラン (キック成功)
7回75ヤード, 3:32 [28-14]
イーグルス 第4Q, 残り5:54 QBハーツ2ヤードTDラン (QBハーツ2点CVパス→WRクェズ・ワトキンス)
7回54ヤード, 3:05 [28-22]
ブラウンとフォーネットが光り輝く 第3Q9分に、バッカニアーズRBフォーネットが自身2本目のタッチダウン(TD)をランで決め、28-7となった段階で、試合の大勢は決まったかに思えた。
しかし、ここからイーグルスの逆襲が始まった。3回のオフェンスシリーズで2本のTDを奪い、さらにQBハーツが2ポイントコンバージョンをパスで決めて、22-28、差を6点とした。
残り時間は、5分54秒。つい先日のマンデーナイトゲーム、レイブンズ対コルツ戦のような大逆転劇を引き起こそうという、イーグルスの望みを打ち砕いたのは、やはりQBブレイディだった。
勝負を分けたのは残り3分24秒、イーグルス陣45ヤードからの3rdダウン7ヤードの場面。その前のプレーでRBフォーネットのランを2ヤードで止めたイーグルスは、勝負をかけて後半1回目のタイムアウトを使っていた。
ボールがスナップされ、イーグルスディフェンスのプレッシャーを受けたブレイディは右にロール。WRブラウンに27ヤードのパスを決めた。
ブラウンは左のスロットからパスコースに出たが、ブレイディの動きを見て反対側の奥に走り込んでいた。以心伝心のパスだった。
イーグルスはやむなく残り2回のタイムアウトを使い切った。余裕のできたブレイディはTEキャメロン・ブレイトに10ヤードのパスを投げてファーストダウンを更新。2ミニッツウォーニングを1stダウンで迎えた。
タイムアウトがないイーグルスに余計なプレーを重ねる必要はない。2ミニッツ明けの残り2分を、3回のニーダウンで流して試合を終えた。名人らしい勝利と思えた。
この試合のバッカニアーズのヒーローはWRブラウンとRBフォーネット。ブラウンはパスレシーブ93ヤード1TD、フォーネットはラン81ヤード2TDに加え、パスレシーブでも6回46ヤードを記録した。
2人は、かって問題児扱いされていた。
スティーラーズのエースレシーバーだったブラウンは、2010年ドラフト6巡という低い評価ながら、たたき上げでスター選手となった。身長178センチ、82キロと小柄で、格別スピードがあるわけではない。WRオデル・ベッカム・ジュニアのワンハンドキャッチのような人を驚かせる技を持っているわけでもない。正確なルート能力と、QBとの意思疎通による「痒いところに手が届く」レシービングで、APオールプロのファーストチームに4年連続選出されるまでになった。
しかし2018年のシーズン終了後に、QBロスリスバーガーとの関係が悪化して退団。その後レイダース、ペイトリオッツでも問題を起こした。昨シーズン後半まで、どの球団からも声がかからない状態だった。
フォーネットも、パワーとスピードを兼備したカレッジNo.1RBと評されて、ルイジアナ州立大で大活躍し、2017年ドラフトで、ジャガーズに1巡全体4位指名で入団した。1年目からラン1040ヤードと活躍。2年目は怪我などもあって不本意だったが3年目の2019年にはラン1152ヤード、パスレシーブ522ヤードという成績を残していた。
しかし、ジャガーズは、4年目の春にフォーネットを放出。練習態度や、2018年の試合中の乱闘騒ぎなどを問題視していたという。
ブラウンもフォーネットも、フットボールに対する取り組み自体は真面目だった。ふとしたボタンの掛け違いから、「不良選手」扱いされた。彼らを戦力として評価したバッカニアーズ。フィールドで、その能力を引き出しているのがブレイディだ。
ブラウンもフォーネットも、スーパーボウルに優勝して選手として「更生」した。そして再びその美酒を味わうために、かっての輝きを取り戻している。その求心力は間違いなくブレイディが生み出している
ハーツの「独り相撲」脱却がカギ
イーグルスは、第1QのTD後、2回目のオフェンスシリーズから3&アウトが5回、インターセプトが1回と、惨憺たる状態だった。ランパスオプションのQBハーツが、ランでもほとんど独りでキープして自滅していた。後半に入り、RBマイルス・サンダースへのギブを増やし、オフェンスが回るようになった。
ハーツのパスは成功率が5割を切っているが、前後半のTDドライブで見せた、2本のロングパスは、バッカニアーズディフェンスの反則が無ければ成功していた可能性がある。ゴール前で見せるQBキープでは2試合連続で2TDランと決定力がある。
ハーツが、周囲の戦力を信頼し、ボールを散らすことができるようになれば、まだまだイーグルスのオフェンスは向上する可能性がありそうだ。