アメリカンフットボールの関東大学1部TOP8は、10月23日、東京・調布のアミノバイタルフィールドでBブロックの2試合が行われた。日本大学フェニックス対中央大学ラクーンズの対戦は、中大が日大のミスに付け込んで、大差で快勝した。中大は2連勝。2連敗の日大は甲子園ボウル出場の可能性が消滅した。
中央大学ラクーンズ○38-13●日本大学フェニックス(2021年10月23日、アミノバイタルフィールド)【得点経過】
中大 第1Q 6:28 QB西澤→WR相浦9ヤードTDパス(渡邉キック成功)
[7-0]
日大 第1Q 10:34 K高橋32ヤードFG成功
[7-3]
中大 第2Q 0:53 K渡邉45ヤードFG成功
[10-3]
日大 第2Q 5:45 QB金澤→WR小林44ヤードTDパス(高橋キック成功)
[10-10]
日大 第3Q 2:59 K高橋51ヤードFG成功
[13-10]
中大 第3Q 4:01 QB西澤→WR井上19ヤードTDパス(渡邉キック成功)
[13-17]
中大 第3Q 8:13 RB針ケ谷7ヤードTDラン(渡邉キック成功)
[13-24]
中大 第3Q 10:52 DE小山ファンブルリカバー、78ヤードリターンTD(渡邉キック成功)
[13-31]
中大 第4Q 8:58 RB三澤5ヤードTDラン(渡邉キック成功)
[13-38]
3回のファンブルロストをすべてTDに結び付けられ 日大の中大戦敗戦は、2016年のリーグ戦以来で4度目。2000年代の初頭には、4年間で3回敗れるなど、苦手にしていた時期もあった。ただし、この日の敗戦は、内容が悪すぎた。2人のQBが3回ファンブルロスト。それをすべてタッチダウン(TD)に結びつけられた。
最初のファンブルは、1年生QB金澤檀。初戦の法大戦に続いて先発した金澤は、決めるときは良い弾道のパスを投げる。しかし、狙い過ぎて、明らかにボールを持ち過ぎる傾向があり、中大のパスラッシュで何度もサックされた。
第3Q6分、3rdダウン12ヤードからのオフェンスがその典型だった。中大のパスラッシュはフロントの4人だけだったが、金澤はスナップされてから5秒以上パスを投げず、ポケットの中を逃げ惑った。日大のパスプロテクションが持たずに、中大DE水野健佑にサックされ、ボールをファンブルした。
中大はこのターンオーバーをしっかりTDに結びつけた。日大にとって11点のビハインドとなった。
日大は次のオフェンスから、QBを2年生の加藤俊輔に変えた。加藤は、今春のオープン戦で好結果を残し、エースの座を確実にしたかと思われていたQB。金澤と違い、クイックリリースでプレーの展開も速かった。右ロールしながらタテにパスを投げ込んで中大ディフェンスのパスインタフェアを誘うなど、技ありのクオーターバッキングで、40ヤードを前進し、エンドゾーンまで15ヤードと攻め込んだ。
しかし、1stダウン10ヤードで、加藤はボールをファンブル。中大DE小山嗣晶が拾い上げると、無人のフィールドを疾走した。78ヤードのファンブルリカバーリターンTD。4点差に詰めるべき局面で18点差となり、日大の傷を深くした。
写真を確認すると、ショットガン隊形で、QB加藤がスナップされたボールから目を切って他の方向を見ていた。TDまで15ヤードと攻め込んだ場面、展開するはずのプレーサイドが気になったのだろうか。ただ、まだ第3Q、しかも1stダウンで、落ち着いてしっかり攻めるべき場面だった。
3回目のファンブルは第4Q3分。3ポゼッション差を追いかける展開で、3rdダウンで加藤がスクランブルしたが、完全にランに切り替えたわけではなく、ボールをしっかり抱え込んでいなかった。片手で持っていたボールを取り落とし、中大にしっかりリカバーされた。
気ばかりが焦って、ボールが前に進まない日大オフェンスを象徴するシーンだった。
3つのファンブルともに、経験の浅いQBが起こしがちな典型的なミスで、アメフトでは頻繁に目にする。ただ、それを、昨年の関東覇者であり、日本の学生フットボールをリードしてきた日大のQBが立て続けに起こし、敗戦を招いた。
もちろん、QBだけを責めることはできない。リターンTD以外の2TDは、ファンブルロスト後に、日大ディフェンスが中大のランにずるずると押し込まれて奪われた。ターンオーバーはアメフトにつきもので、そんな時こそディフェンスが頑張らなければならない。しっかりと中大のランを止めていれば試合はまったく違う展開になったはずだった。
2年連続で甲子園ボウルに出場する目標はこれで断たれた。残り2試合で、本来の、落ち着いたしっかりとしたフェニックスのフットボールを取り戻す。それが今の日大と菅原大斗主将に残されたミッションだ。この日、観客席の端で試合を観戦した、橋詰功前監督と昨年までのエースQB林大希もそれを望んでいる。