close

2021-11-23

【NFL】老ガンマン vs 若き天才 壮絶な撃ち合いの末に 第11週サンデーナイトゲーム

◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆シュートアウトを制し、右手を掲げるチャージャーズQBハーバート=photo by Getty Images

全ての画像を見る

米プロフットボールNFLは、現地11月21日(日本時間22日)、全米各地で第11週の13試合が開催された。ロサンゼルスのサンデーナイトゲームは、ロサンゼルス・チャージャーズとピッツバーグ・スティーラーズが対戦。チャージャーズがシュートアウトを制して6勝4敗に、スティーラーズは5勝4敗1分となった。(写真はすべて Getty Images )

ロサンゼルス・チャージャーズ○41-37●ピッツバーグ・スティーラーズ
(2021年11月21日、SoFi スタジアム)


若い優れた才能が熟練の経験を上回る

 20世紀を代表するアメリカの名優、ジョン・ウェインの遺作「The Shootist」(邦題:ラストシューティスト」という映画がある。時代遅れとなった高名な老ガンマンが、がんで死期を悟り、自分を敵として付け狙う男や、自分を倒して名を挙げようとする若き天才ギャンブラーを決闘場に招き最後の勝負を挑むという作品だ。
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images
 第4Q、39歳の「老ガンマン」スティーラーズのベン・ロスリスバーガーと、23歳の「若き天才」チャージャーズのジャスティン・ハーバート。2人のQBの壮絶なシュートアウトはまさにその映画のクライマックスを思い起こさせた。


 ロスリスバーガーにとっては、初めてのSoFiスタジアムでの試合だった。きらびやかな最新鋭スタジアム。そしてチャージャーズには、ドラフト同期として長年戦ってきた宿敵フィリップ・リバースの姿もない。自分が長くリーグにいることを実感させられたに違いない。

 第4Qの冒頭、スティーラーズはレッドゾーンオフェンスに入りながら攻めきれずフィールドゴール(FG)に終わる。14点差が残っていた。1分30秒後、スティーラーズがチャージャーズのパントをゴール前でブロックし、絶好の位置で攻撃権を得る。ドラマの幕開けだった。

 スティーラーズはこのチャンスに、RBナジー・ハリスのTDラン。ビハインドを7点とした。対するチャージャーズは、ハーバートが、この日冴えたQBキープで36ヤードのビッグゲイン、ゴール前に迫ると、「最高のウェポン」RBオースティン・エケラーのランでTDを返した。
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images

 差は再び14点。試合残り時間は9分を切った。

 ロスリスバーガーはこのドライブのファーストプレーで、サックされ8ヤードをロスする。通算535回目。NFL最多記録を更新するヒットを受けた老ガンマンの早撃ちがここから冴えた。ノーハドル・ショットガンからパス8回中7回成功。仕上げはTEエリック・イブロンへのTDだった。
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images
 残り5分を切ったところで、ハーバートにミスが出た。WRキーナン・アレンを狙ったパスをインターセプトされ、ゴール前11ヤードからスティーラーズに攻撃権を渡してしまった。

 名手ロスリスバーガーはこのチャンスを逃さなかった。ルーキーTEパット・フライアムースにTDパスを決めて、スティーラーズがチャージャーズに追いついたのだった。

 チャージャーズにはこの後、議論を呼ぶプレーチョイスがあった。残り4分を切った自陣34ヤードの4thダウンで、ギャンブルに出た。スティーラーズディフェンスが意地を見せてギャンブルを止め、ロスリスバーガーとオフェンスに絶好のプレゼントをした。

 ロスリスバーガーは、しかしこのチャンスを生かしきれなかった。3回のパスで2回失敗、TDを奪えずKボズウェルのFGにとどまった。ラン攻撃を支えてきたRBハリスが、第4Q途中で負傷退場となったのが痛かった。

 3点をリードされたチャージャーズだが、ハーバートは落ち着いていた。パスを2回決めて22ヤードを前進すると、スティーラーズディフェンスのカバレッジの乱れを突いて、左サイドラン沿いを縦に走ったWRマイク・ウィリアムズにパスをヒット。53ヤードのロングパスTDとなった。
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images
 残り2分9秒。老ガンマンの弾丸は尽きていた。通算536、537回目のサックを連続で受けて19ヤードをロス。さらに4thダウンでは、ディレイ・オブ・ゲームの反則まで犯す。ノーハドルでもディレイを犯すことはめったになかったロスリスバーガーらしくない姿だった。

 試合は終わった。映画「シューティスト」では老いたヒーロー、ジョン・ウエインが勝つが、現実の勝負では若い優れた才能を老いた経験が上回ることのほうが少ない。それがプロスポーツの冷徹な現実だった。
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images
 ハーバートはパス382ヤード3TD、ランでもキャリアハイの90ヤードだった。パスは通算で7000ヤードを超えたが、初先発から25試合目でのクリアは、カート・ウォーナー(元ラムズなど)、パトリック・マホームズに次いで3人目だという。

 ハーバートを助けたのがRBエケラー。ラン50ヤード2TD、パスレシーブ65ヤード2TD。NFLでランとレシーブの両方で1試合2TD以上を記録したのは、2013年のモーリス・ジョーンズドリュー(元ジャガーズなど)以来となった。

 533ヤードを許したスティーラーズディフェンス。大黒柱のOLB、T.J.ワットと、FSミンカー・フィッツパトリックを負傷で欠いたのが勝敗に直結した。ワットが欠場した試合は0勝3敗となった。

 ロスリスバーガーは通算55回目の1試合パス3TD以上を記録した。
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images

【得点経過】

スティーラーズ第1Q  残り8:29 Kクリス・ボズウェル36ヤードFG 
13プレー57ヤード 6:31 [3-0]

チャージャーズ第1Q  残り2:09 RBオースティン・エケラー6ヤードTDラン (キック成功)
 12プレー73ヤード 6:20 [3-7]

チャージャーズ第2Q  残り3:42 RBエケラー10ヤードTDパス←QBジャスティン・ハーバート(キック成功)
 12プレー98ヤード 6:54 [3-14]

スティーラーズ第2Q  残り1:09 WRディオンテ・ジョンソン 10ヤードTDパス←QBベン・ロスリスバーガー (キック成功)
 7プレー64ヤード 2:33 [10-14]

チャージャーズ第2Q  残り0:02 Kダスティン・ホプキンス 30ヤードFG 
8プレー63ヤード 1:07 [10-17]

チャージャーズ第3Q  残り11:50 RBエケラー17ヤードTDパス←QBハーバート(キック成功)
6プレー70ヤード 3:10 [10-24]

チャージャーズ第3Q  残り3:40 Kホプキンス41ヤードFG
 11プレー51ヤード 6:28 [10-27]

スティーラーズ第4Q  残り14:10 Kボズウェル36ヤードFG
 10プレー57ヤード 4:30 [13-27]

スティーラーズ第4Q  残り11:35 RBナジー・ハリス1ヤードTDラン (キック成功)
 4プレー3ヤード 0:58 [20-27]


チャージャーズ第4Q  残り8:48 RBエケラー5ヤードTDラン (キック成功)
 7プレー75ヤード 2:47 [20 34]

スティーラーズ第4Q  残り4:49 TEエリック・イブロン5ヤードTDパス←QBロスリスバーガー (キック成功)
 9プレー75ヤード 3:59 [27 34]

スティーラーズ第4Q  残り4:23 TEパット・フライアムース5ヤードTDパス←QBロスリスバーガー (キック成功)
 2プレー11ヤード 0:13 [34 34]

スティーラーズ第4Q  残り3:24 Kボズウェル45ヤードFG
4プレー7ヤード 0:19 [37 34]

チャージャーズ第4Q  残り2:09 WRマイク・ウィリアムズ53ヤードTDパス←QBハーバート(キック成功)
 3プレー75ヤード 1:15 [37 41]
◇チャージャーズ vs スティーラーズ◆=photo by Getty Images

【小座野容斉】

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事