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2021-11-29

【アメフト】ミシガン大・ハーボウHC、ついにオハイオ州立大に勝利 アラバマ大は奇跡の逆転勝ち 宿敵に勝つ意味の重さ

宿敵・オハイオ州立大についに勝利したハーボウHCを、フィールドになだれ込んだファンがもみくちゃにした=photo by Getty Images

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米大学アメリカンフットボールは、今季第13週の11月27日(日本時間28日)、全米各地で伝統のライバル対決があった。カレッジフットボールでは、時として優勝以上に重視されるのが宿敵との一戦に勝利することだ。今回は、Big10 のミシガン大vsオハイオ州立大、SECのアラバマ大vsオーバーン大の2試合にスポットを当てた。

 ミシガン大学○42-27●オハイオ州立大学
(2021年11月27日、アナーバー、ミシガン スタジアム)

 NFLベアーズやコルツのQBとして活躍し、49ERSのヘッドコーチ(HC)としてスーパーボウルにも出場したミシガン大のジム・ハーボウHCにとって、どんな栄冠や成功よりも欲していた勝利を手中にした。就任以来7年、敗れ続けていた、宿敵オハイオ州立大との一戦でついに勝利した。

ランで5TDを挙げる圧倒的な活躍を見せたミシガン大のRBハスキンス=photo by Getty Images


 1897年に始まり、今年で117回目の顔合わせとなった両校の対決。過去17年はオハイオ州立大の14勝1敗(2020年は新型コロナ感染症で中止、2010年は記録抹消)と圧倒的な差がついていた。

宿敵オハイオ州立大に完勝。歓喜のミシガン大ファンがフィールドを埋めた=photo by Getty Images
 ミシガン大が4年生のパワーバック、ハッサン・ハスキンスの機関車のような走りで、地上戦を支配、10年ぶりの勝利を手にした。ホームのアナーバー、ミシガンスタジアムを埋めた10万を超える観衆は、勝利後、雪の舞うフィールドになだれ込んで埋め尽くし、待望の勝利を喜んだ。

ランで5TDを挙げる圧倒的な活躍を見せたミシガン大のRBハスキンス=photo by Getty Images

 ハスキンスはラン28回、169ヤード5タッチダウン(TD)を挙げた。ミシガン大のチームランは41回で297ヤード6TDを積み重ね、オハイオ州立大を蹂躙した。オハイオ州立大はレッドシャツフレッシュマン(1年生)のQBで、今季のハイズマントロフィー有力候補の1人、C.J.ストラウドがパス394ヤード2TDと奮闘したが、及ばなかった。ストラウドを3QBサックに仕留めたのが、同じく最上級生のDEエイダン・ハッチンソン。今季12サックはミシガン大の新記録、来春のドラフトでも注目の存在となりそうだ。

ミシガン大のDEハッチンソン(右)は3QBサックを記録、オハイオ州立大撃破の原動力となった=photo by Getty Images
 RBハスキンスは「アメージングだ。ブロックしてくれたオフェンスのラインメン、1人1人に感謝したい」と語った。DEハッチンソンは「コーチ・ハーボウのオハイオ州立大戦初勝利に貢献できてとてもうれしい。コーチは本当に喜んでいた」と話した。

 ミシガン大OBのハーボウHCは「選手たちが、よく準備をして、最後までほんとうによくやり抜いた。ハスキンス、ハッチンソン。二人の最上級生がシーズンを通じてチームを背負い続けた。この男たちが魂のプレーをしてくれた」と、選手たちに最上級の賛辞を送った。

 勝利の後、ハーボウHCは、ミシガン大のウォルデ・マニュエル体育局長から「君はホームランを放った」と称賛されたという。

 ミシガン大はこの試合の前までは全米ランキング5位。全米2位のオハイオ州立大を破ったことで、ランクの上昇は確実で、4チームのトーナメントで全米王座を争うカレッジフットボールプレーオフ(CFP)制度になってから初めて、全米4強の一角に食い込むことになりそうだ。ただし、前提条件としては、次週のBIG10優勝決定戦、アイオワ大との試合に勝利することが前提となる。




アラバマ大学○24-22●オーバーン大学<延長タイブレーク4回>
(2021年11月27日、オーバーン、ジョーダンハーレ スタジアム)

敵地・オーバーンのハーレスタジアムで、ゲーム最終盤に見事な逆転劇を見せたアラバマ大のQBヤング=photo by Getty Images
 アラバマ大が、長年の宿敵、オーバーン大との伝統の一戦で、最終盤まで大苦戦の末に、劇的な逆転勝ちを飾った。

 「アイアンボウル」の名で知られるライバル対決が始まったのは1893年。以来対戦を重ね今回が86回目。10勝1敗、全米ランキング3位のアラバマ大に対して、オーバーン大は6勝5敗と今季は不本意なシーズンだった。それだけに、宿敵との1戦にかけていた。

 直近のエースQB3人(マック・ジョーンズ、トゥア・タゴバイロア、ジェイレン・ハーツ)がNFLのスターターとしてプレーしているアラバマ大は、現在のエース、ブライス・ヤングも、今季ハイズマントロフィー候補の一角となるほどのパス成績を残している。そのヤングがオーバーンディフェンスに封じ込まれた。DEデリック・ホールらが強烈なプレッシャー。ヤングを7回もサックした。
オーバーン大の激しいパスラッシュに苦しんだアラバマ大のQBヤング=photo by Getty Images

 アラバマ大は、ゲーム中にOL2人を入れ替える異例の対応策を取ったほど。さらに、前半でWRジェームソン・ウィリアムズが、パントリターン中にターゲティングの反則で退場となったのも痛かった。アラバマ大が第3クオーター(Q)まで無得点だったのは、5年ぶりだった。

 第4Q残り8分で、ようやくチーム初得点となるフィールドゴール(FG)を決めて3-10とした。しかし、第4Q残り2分で、4thダウンギャンブルを止められた時には、流石のアラバマ大もこれまでかと思われた。

オーバーン大との延長タイブレークで、戦況を冷静に見つめるアラバマ大の名将ニック・セイバン=photo by Getty Images

 アラバマ大のニック・セイバンHCは勝利を信じていた。残っていたタイムアウトを使い切って、オーバーン大のオフェンスを止めると、残り1分35秒、自陣ゴール前3ヤードからという土壇場のオフェンスを開始した。

 ここで、QBヤングがスタッツなどで測れない真価を発揮した。サイドライン際にテンポよくパスを投げ込み、12プレー97ヤードを進んで同点としたのだ。ヤングが同点TDパスをヒットしたWRジェコリー・ブルックスは、この試合の前まで、今季わずか2キャッチ21ヤードという成績しか残していない伏兵だった。オーバーン大の勝利を信じていた本拠地のファンは、信じられないものを見たという表情だった。

 延長タイブレークで、アラバマ大とヤングは、本来の輝きを取り戻した。タイブレーク1回表はヤングがTDパスを決めた。2回裏はKウィルリチャードがFGを決めた。タイブレーク3回目からは2ポイントコンバージョンだけの勝負に。4回表、オーバーン大QB、T.J.フィンリーのパスは失敗。その裏、QBヤングがWRジョン・ミッチ―にパスを決めて、決着をつけた。

敵地・オーバーンのハーレスタジアムで、ゲーム最終盤に見事な逆転劇を見せたアラバマ大のQBヤング=photo by Getty Images

 セイバンHCは「偉大な逆転勝ちだった。何度も何度もタオルを投げそうになった」と振り返った。QBヤングは「本当に良いチームを相手に、タフな状況の中で、辛うじて勝つことができた。これがアイアンボウルだ。様々な感情が入り乱れている。それは我々が真剣に取り組み、誇りに思っていることだから」と話した。

 アラバマ大は現地12月4日、ジョージア大(全米1位)とSEC優勝戦を戦う。

【小座野容斉】

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