米プロフットボールNFLの王座決定戦「スーパーボウル」が終わって10日が過ぎた。ロサンゼルス・ラムズがシンシナティ・ベンガルズを破ったこの試合で、キーとなる局面に登場して、明暗を分けた3人の若いCBについて振り返りたい。この3人には不思議な因縁があった。2016年のNFLドラフトで指名された「同期の桜」だったのだ。(写真はすべてGetty Images)
ベンガルズのCBイーライ・アップルにとって、ラムズが逆転TDを決めたドライブは最悪の思い出となった。WRクーパー・カップにTDを奪われたのが、マンツーマンについていたアップルだった。アップルは、2つ前のプレーでも、カップをカバーしていてパスインターフェアを取られていた。
ただしアップルの名誉のために言っておくと、このドライブで、アップルが明らかな失態を犯したのはこの2プレーだけだ。ベンガルズは、レッドゾーンに侵入されるまではゾーンディフェンスを敷いており、カップと結果的にマッチアップした選手は他にもいた。
ただ、アップルは標的にされるのには格好の存在だった。
AFCチャンピオンシップで、3年連続スーパーボウルを目指したチーフスに逆転勝ちした後で、チーフスのWRタイリーク・ヒルを、He’s a baby ! 「奴は赤ちゃんだ」と揶揄した。
ヒルと、チームメートのWRミコール・ハードマンは、アップルに激しく反発していた。
今回の逆転劇の後、ハードマンはアップルについて「自分の技をもっと磨いておくべきだったな」と攻撃するツィート。さらに他の選手たちもアップルを批判した。
アップルが自分で蒔いた種だったのは確かだ。アップルは、ベンガルズがポストシーズンに進出した際にも、自分の元の所属チーム、ジャイアンツとセインツの地元を馬鹿にするような投稿をしていた。
ラムジー、アップルは選手として試合に出場し、どういう形であれ、プレーの中で一つ結果を残し、それが記録となった。しかし、選手登録されずプレーもしていなかったのに、記録に残り、両チームの選手たちや、スタジアムの観客、さらに世界中のテレビ視聴者にネガティブな印象を残してしまった選手がいる。ベンガルズCBのバーノン・ハーグリーブスだ。
第2Qの終盤だった。残り5分余りからのオフェンスシリーズで、ラムズにトラブルが起きた。WRオデル・ベッカム・ジュニアの負傷退場だった。この試合、本領を発揮していたスターレシーバーの欠場は、QBスタフォードに焦りを生んだのかもしれない。この後のプレーで、エンドゾーンのWRバン・ジェファーソンを狙った強引なパスを、ベンガルズのSジェシー・ベイツにインターセプトされた。
しかし、ここでベンガルズに思わぬ反則が出た。この試合ではインアクティブの、ベンガルズCBのハーグリーブスがインターセプトを喜ぶあまり、フィールドに入ってセレブレーション。アンスポーツマンライクコンダクトを取られてしまったのだ。ハーグリーブスは、スタイルしておらず、Tシャツにサンダル履きの軽装。「選手ではなく関係者」と放送されてしまったのも無理はなかった。あまり目にしたことがないペナルティーだった。
前半残り2分でのエンドゾーンでのインターセプト、タッチバックで自陣20ヤードからのオフェンスとなるはずが、ハーフディスタンス罰退で、自陣10ヤードからとなってしまった。自陣内での10ヤードの差は大きかった。ベンガルズは、QBバロウが2本のパスを決めてファーストダウンを奪ったが、その後ラムズOLBレナード・フロイドにサックされて8ヤードのロス。結局パントとなってしまった。
ベンガルズのザック・テイラーヘッドコーチ(HC)は試合後、「あれは愚かなことだった。我々は規律あるチームだと自負していたが、あれは、非常に規律に欠けた瞬間であり、悔しかった。」と述べた。テイラーHCが悔しがるのも無理はなかった。ベンガルズのこの試合最初の反則罰退が、プレーではないこの行為だったからだ。
6日後、NFLはハーグリーブスに対して、5555ドルの罰金を科すことを発表した。
ハーグリーブスは今シーズンの終盤にベンガルズに入団、最終週のブラウンズ戦で負傷してポストシーズンの試合は出ていなかった。契約は今季限りだ。ハーグリーブスが、汚名を晴らす機会がこの後訪れるのだろうか。
1巡上位指名、ポジションTOP3の指名だった
スーパーボウルの舞台で、注目を集めた3人は、2016年ドラフトの同期生。それどころか、CBのポジションではTOP3のエリートだった。ラムジー(フロリダ州立大)は1巡全体5位ジャガーズが指名した。アップル(オハイオ州立大)は1巡全体10位でジャイアンツが指名、ハーグリーブス(フロリダ大)は1巡全体11位でバッカニアーズ指名だった。
CBは、1巡で指名されることが多いポジションだが、全体11位までに3人が指名されたのは、過去10年でこの2016年ドラフトだけ。それくらい、3人ともに評価は高かった。
ちなみに大学時代の成績で、最もインターセプトが多かったのはハーグリーブス(10本)で、4本のアップル、3本のラムジーと続いた。複数のドラフトサイトが、ハーグリーブスをポジションNo.1と評価していた。アップルをトップCBと評価するサイトも多かった。
3人がいずれも当初に指名されたチームにいないというのが、DBをドラフトで指名する難しさとは言える。ただ、ラムジーは、大型トレードでラムズに移籍後、スーパースターへの道を切り開いた。
アップルは、3年目の途中でジャイアンツから放出されて以降、チームを転々として、現在のベンガルズが4チーム目。ハーグリーブスも、バッカニアーズを4年目の途中で放出され、テキサンズを経て、ベンガルズに流れついていた。
彼らのドラフト同期生は、全体1位がライオンズQBジャレッド・ゴフ(ラムズ指名)、2位がコルツQBカーソン・ウェンツ(イーグルス指名)、3位はチャージャーズDEジョーイ・ボーサ、4位にカウボーイズRBエジキール・エリオット、7位には49ERSのDEデフォレスト・バックナー、スーパーボウルでサックを決めたラムズOLBフロイド(ベアーズ指名)もこの年の1巡9位だ。
下位指名では、2巡45位でタイタンズのRBデリック・ヘンリー、2巡47位でセインツWRマイケル・ト-マス、4巡135位でカウボーイズQBダック・プレスコット、5巡146位で現ペイトリオッツOLBマット・ジュドン(ベアーズ指名)、5巡165位でチーフスWRタイリーク・ヒルという、スーパースターたちがそろっていた。
2022年も、4月28日から3日間、NFLドラフトが開催される。指名されたエリートたちには数年後どんな運命が待っているのだろうか。
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