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2022-04-29

【NFL】ドラフト初日、他の全チームが回避の中、スティーラーズだけがQBを1巡指名した理由とは

スティーラーズが1巡で指名したケニー・ピケット。今季のドラフトで、QBではただ1人の1巡指名となった=photo by Getty Images

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  米プロフットボール、NFLの2022年ドラフトが、ネバダ州ラスベガスで現地4月28日(日本時間29日)、第1日が終了、22チームによる1巡指名32選手が確定した。

 全体1位はジャクソンビル・ジャガーズが、ジョージア大学のエッジラッシャー(EDGE)、トレボーン・ウォーカーを指名した。トップ5は全員ディフェンスの選手だったが、1~6位までディフェンスが指名された1991年以来となった。
 オフェンスとディフェンスは16人ずつ。ポジション別ではOL(オフェンスライン)が最多の9人、以下WR(ワイドレシーバー)6人、EDGE(エッジラッシャー)5人、CB(コーナーバック)4人、S(セーフティー)3人、DT(ディフェンシブタックル)2人、LB(ラインバッカ―)2人、QB(クオーターバック)1人だった。RBとTEは1巡指名が無かった
 大学別では全米王者のジョージア大の5人が最多で、アラバマ大、ミシガン大、。オハイオ州立大が2人で並んだ。カンファレンス別では、SECが12人で最多だった。

パンサーズ、シーホークスなどがQBを回避

 過去4年連続で全体1位で指名されていたQBだが、1巡はスティーラーズが全体20位で指名したケニー・ピケット(ピッツバーグ大)だけとなった。
 QB指名が1巡で1人だったのは過去20年間で、2013年ドラフト(ビルズのEJマニエル、全体16位)だけ。またQBの指名がここまで遅い順位だったのは1997年(49ersのジム・ドラッケンミラー、全体26位)以来だった。

 パンサーズ、シーホークスは、まだ今季の先発QBが確定しておらず。負傷から復帰のジェイミース・ウィンストンを抱えるセインツ、エースのマット・ライアンを放出したファルコンズも合わせた4チームは、チーム状況としてはQB獲得に動いてもおかしくなかった。しかし結局、指名を回避。今ドラフトはQB不作という前評判を裏付けた形となった。
 スティーラーズがピケットを指名しなかった場合、1巡ではQB指名がなかった可能性も強い。
 スティーラーズは、ベン・ロスリスバーガーが引退し後継者を探していた。ただ、今春にFAで元ベアーズのエースQBミッチ・トゥルビスキーを獲得、さらに控えのメイソン・ルドルフもいた。4月に不幸な事故で、若手のドゥエイン・ハスキンズが亡くなったが、どうしても1巡で指名する必要があったわけではない。
ピッツバーグ大のエースQBだったピケット。スティーラーズには、マリーノを指名しなかった悔恨があった=photo by Getty Images


地元のスター、マリーノを指名しなかった悔恨

 それでも、スティーラーズは当初からQB指名と決めていた節がある。それには過去の出来事が大きく関係している。
 1983年のドラフトで、スティーラーズは地元ピッツバーグ大のQBダン・マリーノを指名できる順位だったが、指名しなかった。当時のエースQBテリー・ブラッドショーの代わりよりも、ディフェンスの大黒柱だったDTジョー・グリーン(1981年で引退)の後継者獲得を優先したのだ。
 1巡で指名したDTガブリエル・リベラは、テキサス工科大では「セニョール・サック」という異名をとった優れた選手だったが、不幸にもルーキー年の10月に交通事故を起こし、再起不能の重傷を負って引退してしまった。その一方で、マリーノは、ドルフィンズで、歴史に残る偉大なパッシングQBとなって長く活躍、引退後は殿堂入りを果たしたした。
 同時期、長年にわたってフランチャイズQBの不在に苦しんだスティーラーズは、ロスリスバーガーが入団するまで20年以上に渡って、スーパーボウル勝利から遠ざかった。
 マリーノと同様に地元ピッツバーグ大のヒーローだったピケットを、スティーラーズが今回見逃すことができなかったのも無理はない。

 もちろん不安もある。他の31チーム、特にQBを欲している4チームが1巡で動かなかったという事実。また、ピケット自身が、NFLから注目されるような活躍を見せたのは1シーズンだけという点や、コンバインで発覚した、NFLのQBとしては最小クラスの手の大きさなどだ。
 テキサンズから大型トレードでデショーン・ワトソンが加わったブラウンズ、2019年のリーグMVPラマー・ジャクソンを擁するレイブンズ、昨季スーパーボウル出場を果たしたジョー・バロウのベンガルズ。バリバリの一戦級ばかりの同地区内のQBに、ピケットが伍していけるのか。この1巡指名の「賭け」がスティーラーズの今後の命運を握ることになる。

2021年のハイズマントロフィー投票では3位となったピケット(左から2人目)=photo by Getty Images

1巡指名された32選手

■1巡1位 ジャクソンビル・ジャガーズ
EDGE トレボーン・ウォーカー(ジョージア大学)

■1巡2位 デトロイト・ライオンズ
EDGE エイダン・ハッチンソン(ミシガン大学)

■1巡3位 ヒューストン・テキサンズ
CB デレク・スティングリーJR(ルイジアナ州立大学)

■1巡4位 ニューヨーク・ジェッツ
CB アフメッド・ガードナー(シンシナティ大学)

■1巡5位 ニューヨーク・ジャイアンツ
EDGE ケイボン・ティボドー(オレゴン大学)

■1巡6位 カロライナ・パンサーズ
OT イーケム・エクウォヌ(ノースカロライナ州立大学)

■1巡7位 ニューヨーク・ジャイアンツ
OT エバン・ニール (アラバマ大学)

■1巡8位 アトランタ・ファルコンズ
WR ドレーク・ロンドン (USC)

■1巡9位 シアトル・シーホークス
OT チャールズ・クロス (ミシシッピ州立大学)

■1巡10位 ニューヨーク・ジェッツ
WR ギャレット・ウィルソン (オハイオ州立大学)

■1巡11位 ニューオーリンズ・セインツ
WR クリス・オレーブ (オハイオ州立大学)

■1巡12位 デトロイト・ライオンズ
WR ジェームソン・ウィリアムズ (アラバマ大学)

■1巡13位 フィラデルフィア・イーグルス
DI ジョーダン・デービス (ジョージア大学)

■1巡14位 ボルティモア・レイブンズ
S カイル・ハミルトン(ノートルダム大学)

■1巡15位 ヒューストン・テキサンズ
OG ケニオン・グリーン(テキサスA&M大学)

■1巡16位 ワシントン・コマンダーズ
WR ジャハン・ドットソン(ペンシルバニア州立大学)

■1巡17位 ロサンゼルス・チャージャーズ
OG ザイオン・ジョンソン(ボストンカレッジ)

■1巡18位 テネシー・タイタンズ
WR トレイロン・バークス(アーカンサス大学)

■1巡19位 ニューオーリンズ・セインツ
OT トレーバー・ぺニング (ノーザンアイオワ大学)

■1巡20位 ピッツバーグ・スティーラーズ
QB ケニー・ピケット(ピッツバーグ大学)

■1巡21位 カンザスシティ・チーフス
CB トレント・マクダフィー(ワシントン大学)

■1巡22位 グリーンベイ・パッカーズ
LB クエイ・ウォーカー(ジョージア大学)

■1巡23位 バッファロー・ビルズ
CB カイル・イーラム(フロリダ大)

■1巡24位 ダラス・カウボーイズ
OT タイラー・スミス(タルサ大学)

■1巡25位 ボルティモア・レイブンズ
C タイラー・リンダーバウム(アイオワ大学)

■1巡26位 ニューヨーク・ジェッツ
EDGE ジャーメイン・ジョンソン2世(フロリダ州立大学)

■1巡27位 ジャクソンビル・ジャガーズ
LB デビン・ロイド(ユタ大学)

■1巡28位 グリーンベイ・パッカーズ
DI デボンテ・ワイアット(ジョージア大学)

■1巡29位 ニューイングランド・ペイトリオッツ
OG コール・ストレンジ(テネシー大学チャタヌーガ)

■1巡30位 カンザスシティ・チーフス
EDGE ジョージ・カラフティス(パーデュー大学)

■1巡31位 シンシナティ・ベンガルズ
S ダクストン・ヒル(ミシガン大学)

■1巡32位 ミネソタ・バイキングス
S ルイス・シーン(ジョージア大学)

【小座野容斉】

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