6月7日にさいたまスーパーアリーナでWBC世界バンタム級チャンピオンのノニト・ドネア(39歳=フィリピン)との世界王座統一戦に臨むWBAスーパー・IBF世界同級チャンピオンの井上尚弥(29歳=大橋)が代表質問の形でインタビューに応じた。2年半前の激闘の再戦にもなるが、井上の言葉にはその端々から自信がこぼれる。戦いはあくまでリングに上がってからの感覚によるものと前置きしながらも「自分の最大限の力を出して、前回のような激戦にはしません」と力強く宣言した。初戦でやろうとしていたボクシングをすべて見せるQ 試合まで2週間を切っている現在の心境、そしてコンディションを教えてください。
井上「自分の中でも、ようやくここまで来たなという心境ですね。コンディションもうまく仕上がっていると思います」
Q SNSなどで「(コンディションは)1ミリのズレも許されない。徹底的に仕上げる」と書いています。
井上「毎試合がそうです。この時期の調整ではかなりうまくやれていると思います。ここからあと10日ちょっと、しっかりイメージをずらさないようにしたいです」
Q 今度の再戦については「一方的に触れさせず終わる」、「しっかり倒す」という発言をされています。早期決着を見据えているのですか? それともスピードで圧倒して出入りの多いボクシングを想定していますか?
井上「相手がドネアなので、そこは実際にリングに上がって、感じてみないと分からない部分が多いですけれど。そこはリングに上がってからなので……感覚でいきたいと思います」。
Q 初戦が思わぬ形で激闘になったことが、今回、一方的に勝ってみせるという思いにつがったのでしょうか。
井上「1戦目は一方的に勝つつもりでしたが、2ラウンド目に(目に)深いダメージを負ってしまって、そうならなくなりました。それが自分のなかで悔いが残っている部分ではあります。今回は1戦目にやろうと考えていた試合展開にしたいなと思っています」
Q 2ラウンドで眼窩底骨折を負いましたが、単なるアクシデントでもたらされたものですか、それとも何か修正すべき点があると考えていますか。
井上「アクシデントとは思っていないですけれど。ドネアの実力があって、ヒットされたパンチです。自分の不注意とフェイントにひっかかってしまったところはあります」
Q ドネアが「罠を仕掛ける」、「前回と違う戦い方をする」と話しています。その言葉をどう受け止めでますか。また、どう対応していくのですか。
井上「それはお互いさまだと思います。自分はどんな罠、フェイントがあろうが、すべてに対応できる状況にしているので。そこも楽しみにしています」
「すっきりとした内容で勝ちたい」(写真/大橋ジム提供)Q 今後を見据えて導入したと聞いていますが、体力強化に軸を置く八重樫(東トレーナーによる)トレーニングの効果に期待していますか。
井上「足腰が強くなっているのは感じています。何しろ自分が1番に気にしている腰痛が、八重樫さんのトレーニングで鍛えることによって腰痛がなくなってきています。すごく効果は出てきていると思います。不安は減った? そうです」
どちらが引き出しを多く出せるのか。それが勝負のカギになる「さいたまスーパーアリーナで3団体統一戦を行えるのは一種の運命です」(写真/大橋ジム提供)Q ドネアに勝ったそのあと、WBO王者のポール・バトラー(イギリス)との4団体統一戦、スーパーバンタム級で4階級制覇狙うのか。どちらを希望していますか。
井上「自分としてはバンタム級での4団体統一をまずは優先して考えていきたいです」
Q ドネア戦の内容によってパウンドフォーパウンド・ランキング(体重を同じとみなして全階級を通してのランキング)1位も見えてくると思います。
井上「次の試合もしっかり自分がやりたいボクシングすれば、そういった評価もあとからついてくると思います。まずは(そういう評価は)気にせず、自分の最大限を出していきたいと思っています」
Q 今回の一戦は『ドラマ・イン・サイタマ2』と言われています。
井上「第1戦でドラマにしてしまったという自分の誤算があります。今回はそういう試合にならないと思います。本当にここですっきりとした内容で勝ちたいと思います」
Q より気持ちのいいドラマが待っているということですね
井上「この先、4団体統一、4階級制覇するための試合だと思って臨みます」
Q ドネアは「前回と同じドネアではない」と発言しています。そのあたりはどう感じていますか?
井上「いろいろ策は練ってきていると思いますし、前回12ラウンド手を合わせてお互いに感じているものもあると思います。6月7日は、どちらが引き出しの多さを出せるのか。より感覚的に戦えるか。そこがカギだと思っています」
Q 今回は対立チャンピオンとの王座統一戦になりますね。
井上「ようやく3団体統一という大きな節目の試合ができます。自分の中でモチベーションは高いですし、やっぱり、こういう試合で自分は最大限のパフォーマンスを発揮できるタイプだと思っています。試合当日の自分自身に対して期待しています」
Q 今回も会場は同じさいたまスーパーアリーナです。
井上「さいたまスーパーアリーナで、日本人初の3団体統一をかけて戦えるのは一種の運命だと感じています。1戦目を含めてからの流れもファンも見てくれるはずです。そういったところも感じながら、試合当日は自分たちはいい試合を見せるだけです。ファンの方々には楽しでほしいと思っています」
Q ドネアが前回の井上選手との試合で復活し、ボクシングも向上したと発言しています。
井上「前回、自分との試合でモチベーションを含め、(ドネアの)評価を上げてしまったので。今回、自分との戦いを最後に、しっかり花道を作っていただきたい。そんな思いで臨もうと思っています」