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2022-05-31

【ボクシング】激闘ママ対決! 小澤瑶生が吉田実代を破り、3度目挑戦で世界王者の夢叶える

回転力のある攻撃で、小澤(左)は吉田を追い詰めていく

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 WBO女子世界スーパーフライ級タイトルマッチ、チャンピオンの吉田実代(34歳=三迫)対挑戦者、小澤瑶生(37歳=フュチュール)の10回戦は、30日、東京・後楽園ホールで行われ、小澤が2-1の判定ながら勝利を収め、新チャンピオンとなった。出産のために3年ぶりのリングだった小澤はここまで2度の世界挑戦に敗れ、3度目のアタックで念願の王座獲得となった。吉田は昨年6月、奥田朋子(ミツキ)から奪い返したタイトルの初防衛に失敗した。

 東京五輪を前にしてIOCは報道用のガイドラインを作っている。好ましくない表記とされたそのなかには、女性アスリートについて、ことさら母親であることを強調することもあった。ジェンダー平等を考えるとき、もっともなことだと理解はできる。

 だが、「一生のうちに一番痛かった」という苦しい出産を経てもリングに舞い戻り、勝利を奪い取った小澤が6月12日で満1歳になる長男に、いずれ勝利のこのときの喜びを語るとき、敗れはしたものの吉田の4月で7歳になった愛娘が、栄冠に追いすがる母親の姿を見て、何かを感じ取っていたとしたら、「闘うママ」という言葉はやはり大きな意味を持つ。私たちはそういう思いのひとつまみでも、読者に伝えたいと考えて原稿を書く。技術的な見解ばかりでプロボクシングは語りつくせない。選手それぞれのバックグラウンドがあって、ファンとつながる真実もあるはずだ。

 前置きが長くなった。この一戦だ。小澤のスピードと闘志が試合を支配した。初回からジャブを飛ばし、右ストレート、左フックと回転力を活かしてペースを握った。後手に回った吉田は徹してファイタースタイルで戦った。頭を下げるクラウチングスタイルで追い、飛びつくようにインサイドを奪うと、もみあいの中でボディ、顔面にとねじ込むように拳で抉っていく。効果的なパンチとは言えずとも、吉田の戦法は対戦者のスタミナ奪うには有力な手段だったかもしれない。中間距離から軽快にコンビネーションブローを打ち込む小澤も4回あたりから少しずつ切れ味が鈍っていった。

 中盤は吉田の粘り強い攻めが、試合の趨勢を掌握していった。得意の右オーバーハンドも再三、顔面をかすめていたし、強く打ち込む左もヒットした。8回には長い距離からの左ジャブを2発が、きれいに小澤の顔面を弾く場面もあった。

 小澤にすると、前半の大量リードを吐き出しかねない展開ではあったが、最後の2ラウンドに奮起する。多数のコンビネーションを重ね、手数で吉田を圧していく。チャンピオンはここでも再び後手を踏み、大事な勝負どころを見失ってしまった。
1児の母となり、念願の世界のベルトを腰に巻いた小澤
1児の母となり、念願の世界のベルトを腰に巻いた小澤

 採点は1者が96対94で吉田の勝ちとしたものの、残る2ジャッジは97対93で小澤を支持していた。

「準備期間は6ヵ月。ランニングでおじいさんにも抜かれるようなところからのスタートでしたが、試合前から勝つ自信はありました」

 晴れがましい笑顔を見せた小澤は22戦17勝(6KO)5敗。子育てしながらの現役続行は、「しばらくボクシングを忘れてから考えます」と語っている。吉田は18戦15勝3敗。
永田(左)は多彩なアタックで近藤の強打を封じた
永田(左)は多彩なアタックで近藤の強打を封じた

 前座8回戦では日本スーパーライト級王座を失ってから約1年ぶりの試合となる永田大士(32歳=三迫)が、近藤哲哉(25歳=横田スポーツ)に3-0の判定勝ちを収めた。

 変則ファイターの永田は序盤こそ、近藤の右ストレート、左フックを浴びるシーンがあったが、その後は多彩な角度からの攻撃で圧倒していく。6回にはバッティングで右目上をカットし、なおかつ不用意な被弾もありながらペースを明け渡さない。近藤の攻めはラウンドを追うごとに淡泊になり、永田はどの場面でも打ち勝っていった。

 永田は21戦16勝(6KO)3敗2分。近藤は12戦6勝(4KO)6敗。

文◎宮崎正博 写真◎小河原友信

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