関東大学アメリカンフットボールは、6月5日、注目の一戦がある。法政大学オレンジ対日本大学フェニックスの交流戦だ。両雄は、過去2シーズン、関東一部TOP8の秋季リーグ初戦で顔を合わせ、勝利したチームが、その後も勝ち進んで甲子園ボウルに出場している。
昨年は法大戦で敗れた後、リーグ戦(2分割のブロック制)ですべて敗れ、順位決定戦で東京大学に勝っただけで終わった日大。捲土重来を期す今季は、中村敏英新監督が就任し、昨年からチームを指導していた平本恵也HCが留任、さらに吉江祐治総監督、小林孝至助監督という指導体制を作り上げた。
やはり気になるのはQBだ。3年生以下6人のQBの中から誰が頭角を現すのか。今春のチームスタート時「4、5人のQBが横一線」(中村監督)だった状態から、転機となったのが、5月22日の中央大学ラクーンズとの一戦だった。
日本大学フェニックス○35-10●中央大学ラクーンズ(2022年5月22日、東京・調布 アミノバイタルフィールド)日大は、昨秋のこのカード、前半10-10の同点で折り返しながら、後半にターンオーバーを連発して13-38で大敗した。今季も、TOP8のチームとの対戦では、6-20で明治大学に敗れるなど、ピリッとしなかった。
しかし、不安の中で始まった試合は、オフェンスが大きな収穫を得る結果で終わった。2人のQBがはっきりと頭角を現したのだ。
先発したのは、2年生の金澤檀(まゆみ)。金澤は、第1クオーター(Q)こそ、タテのロングパスが決まらず、インターセプトを喫するなど苦戦したが、第2Q以降はタイミングの速い、ショート・ミドルパスを重ねてコンスタントにオフェンスを進めた。
0-10とリードされた第2Q7分に、大型WR西山裕次郎に19ヤードのタッチダウン(TD)パスをヒット。9分には、自らのキープで19ヤードを走ってTDを奪って逆転した。さらに前半残り18秒で、WR西山にこの日2本目のTDパスを決めた。
金澤は、後半に入ってもパスの感触を保ち続け、第3Q10分にWR菅沼太一にTDパスを決めて中大を突き放した。
日大は、この後、QBを1年生の石上元輝にスイッチ。石上も、メリハリの利いた動きからパスを決め、第4QにTDパスで日大の勝利を決定的にした。
金澤はパス12/21で57.1%、168ヤード。ランは9回22ヤード。成功率と獲得距離はそれほどでもなかったが、パス3TD、ラン1TD。特に、サードダウンコンバージョンで、パス5/6、ランも含めて2TDと、勝負所での決定力が光った。
金澤は「敗れた明治戦から2週間。ディフェンスの動きにどう対応するか、レシーバーとOLとコミュニケーションをしっかりとって練習してきた、それがこの試合で、できたかなと思う。一つの答えというか、自分なりの良いパフォーマンスができた」という。
中村監督はQBについては「一定の評価基準を作り、そこまでのプロセスで金澤と決めたならば、ちょっと、しばらくは金沢に投資しようと思った。それが今日は結実した」という。
「最初のインターセプトの頃はフワッとしていたが、あの後から持ち直してくれた」という中村監督から見て、金澤の長所は、フィールドで冷静に見ることができる点だ。
「パスは高い基準で、機動力もある。2年生で、先輩QBがいて、それに臆さずにしっかり自分がリーダーだというところが出てくると良いQBになると思います。そこは課題と言えば課題」と評価する。
替わった石上については「フットボールの深い理解、QBがしっかりとオフェンスというか試合を作るということに長けたQB」という。「1年生でも全く臆さない。トレーニングでは一番声を出して、叱咤激励している」と評価する。中村監督の眼からは「現在はQBの2番手。金澤といい競争をして、スターターをとってくれてもいいくらい」と話す。
法大戦は、頭角を現しつつある日大の2人のQBにとって、試金石となる。
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法大は、この春、3試合目だが、TOP8のチームと対戦するのは初めて。RB星野凌太朗、QB平井将貴、OL斎藤穂高、柳沢圭祐ら下級生からチームをけん引してきたメンバーが最上級生となった。2年連続の甲子園ボウル出場を目指し、どのような戦いを見せるのか。
試合は、6月5日18時半、富士通スタジアム川崎でキックオフの予定だ。