米大学アメリカンフットボール・カレッジフットボールは、NFLに勝るとも劣らない人気を持つメジャースポーツだ。NFLより早く、今週末の週末にWeek1(第1週)※を迎える。NFL開幕前のため、9月1日(木)から5日(月)まで連日ゲームが開催される。
第1週で全米最大の注目カードは、現地9月3日のオハイオ州立大学(BIG10 =ビッグテン)とノートルダム大学(独立校)の激突だ。2023年NFLドラフトの有力候補選手が目白押しの両校の対戦は、今シーズンの全米王座決定戦になってもおかしくないほどの好カード。そしてこのゲームは、日本でもライブで見ることができるという。
日本テレビ系スポーツ専門局「ジータス」と、ネットライブ中継「NFLGO」が日本語実況・解説で生放送する。
NCAAカレッジフットボール開幕週オハイオ州立大学バッカイズ(BIG10、全米2位) vs ノートルダム大学ファイティングアイリッシュ(独立校、全米5位)オハイオ州オハイオスタジアム 9月3日日本時間9月4日(日)8:15 ~ 12:45【解説】村田斉潔 【実況】増田隆生
PCやスマホ、タブレットで見られるライブ配信サービス
「日テレジータス NFLGO」今年は秋の開幕週からスタート!
※すでに一足早く11試合が、8月最終週の土曜・日曜に行われたが、米メディアなどは、これを「Week0=ゼロ週」と呼んで、今週末が本当の開幕であることを印象付けている。全米1位の超強力オフェンスは今年も健在・・・オハイオ州立大学 オハイオ州立大とノートルダム大は、ともに、カレッジフットボールで五指に入る名門であり強豪。米カレッジに興味がない人でも、この両校の名を聞いたことがないというフットボールファンはいないだろう。今季の開幕前ランキング(AP通信)はオハイオ州立大が全米2位、ノートルダム大が全米5位となっている。両校の見どころを探りたい。
オハイオ州立大の注目は、全米屈指の超強力オフェンスだ。昨年は1試合平均のトータルオフェンス561.7ヤードと得点45.7は全米1位。今年のNFLドラフトではギャレット・ウィルソン(ジェッツ全体10位)。クリス・オラベイ(セインツ全体11位)の2人が1巡指名された。しかし、2人の先輩WRをしのぐ、大学史上屈指のタレントと見られているのが、ジュニア(3年生)のWRジャクソン・スミスエンジバだ。
5つ星ランクの超高校級選手として2020年に入学、昨年に大ブレークした。ポジションは当初スロットだったが、95レシーブ、1606ヤード、9タッチダウン(TD)。特に1月のローズボウルでは、1試合347ヤードレシーブのボウルゲーム記録を打ち立て、全米を驚かせた。今年の2月に20歳になったばかりで、まだまだ成長途中。40ヤードのタイムは定かではないが、トップスピードに乗る加速がカレッジトップ級と評価される。しかもビッグゲームでの集中力と勝負強さは目を見張る。2人の先輩以上、ドラフトTOP5の可能性もあるとされる。
そのスミスエンジバを引き立てるのが、QBのC.J.ストラウドだ。昨シーズンは12試合でパス317/441、成功率71.9%、4435ヤード、44TD、6INT。カレッジフットボール最高の賞であるハイズマントロフィーの投票では4位となったが、3位のケニー・ピケット(現スティーラーズ)を、ほぼすべてのパスの成績で上回った。
特に、強豪との対戦が続いたシーズン後半からしり上がりに調子を上げ、4試合でパス成功率79.4%、1760ヤード、18TDでわずか1INT。この間のレーティングは200を超えた。ローズボウルでは573ヤード6TD。終始リードされながら、最後は逆転勝ちした。
ミシガン大に敗れたゲームでも、エイダン・ハッチンソン(現ライオンズ)に3サックを浴びるなど激しいパスラッシュにさらされながらパス394ヤード、2TDを挙げるなど、強いディフェンスにも冷静に対処できる。
191センチ99キロ。QBとして理想的な体格を持ち、今年の10月で21歳。現時点で、2023年のNFLドラフト全体1位指名の最有力候補と言い切って良いだろう。
オハイオ州立大には、その他にも、パリス・ジョンソン、ダワンド・ジョーンズの両OT、昨年は1年生でランで1172ヤード15TDを記録したRBトレビヨン・ヘンダーソンなど、将来のNFLスター候補がぞろぞろいる。
ディフェンスは、オフェンスに比べ小粒なのは否めない。Sロニー・ヒックマン、LBトミー・エイチェンバーグらの4年生を中心とするが、ハスケル・ギャレットがNFL入りして、昨年5サック以上の選手はわずか一人。かってのボーサ兄弟のようなモンスターはいない。ただ、元々はハードノーズなフットボールを身上とするカレッジだけに、オフを経て新たなスターが台頭する可能性もある。
NFL注目の精鋭揃うディフェンス 36歳新HCの手腕は・・・ノートルダム大 ノートルダム大は、オハイオ州立大とは対照的に、新たなチームを作り上げる年になる。昨年、ブライアン・ケリーヘッドコーチ(HC)が、レギュラーシーズン終了後、ボウルゲームを残して突然退任し、ルイジアナ州立大学のHCとなった。ケリーHCは12シーズンに渡ってチームを率い、ボウルゲームも含め113勝40敗。直近5年連続で二けた勝利という、カレッジ屈指の実力派コーチだった。流出の理由は報酬だ。米メディアによると、ケリーHCの年俸は、この転職によって267万ドル(3億7200万円)から900万ドル(12億6200万円)と、3倍以上に増えたという。
突然のHCの流出で、ノートルダム大はディフェンスコーディネーター(DC)だったマーカス・フリーマンを後継HCに指名。フリーマンはノートルダム着任わずか1年だったが、フィエスタボウルまでの4週間でチームをまとめ上げ、オクラホマ州立大に35-37と敗れたものの善戦した。大学側は、そのままフリーマンを今季もHCとして雇うこととして、2月に新コーチ陣を発表した。
フリーマンは、オハイオ州出身の36歳。オハイオ州立大でLBとして51試合に出場して活躍し、NFLのベアーズに指名された。しかし、キャンプでカットされ、その後も複数のチームにアタックしたが実らず。そのまま選手をあきらめコーチの道に進んだ。HCとして初の開幕戦が、故郷で、母校との対戦ということになる。
オフェンスではQBジャック・コーン、RBカイレン・ウィリアムズ、WRケビン・オースティンという、昨年のエースが全員NFLへ進んだ。しかし、今季も全米5位と評価は高い。その理由はディフェンス力にある。
昨シーズン11サック6ファンブルフォース(全米1位)のDEアイザイア・フォスキー、「カレッジフットボール最強の双子」DLジェイソン&ジャスティン・アデミローラ、大型CBキャム・ハート、過去2シーズンで9INTのSブランドン・ジョセフと、NFLも注目する精鋭が揃う。スーパースターSカイル・ハミルトン(現レイブンズ)が抜けた穴は感じさせないだろう。
オフェンスは、昨年レシーブ840ヤード、7TDのTEマイケル・マイヤーに期待がかかる。アジア系の新QBタイラー・バックナーは、高校時代に1シーズンでパス4474ヤード53TD、ラン1610ヤード28TDという記録を残したこともある、期待の19歳だ。ただ、身体は小さく、特段優れた身体能力があるわけでもない。
1試合平均211ヤードを記録した2020年のような、ランでボールを進め、ゲームを作るフットボールを確立したい。
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全米のメディアの多くは、オハイオ州立大の優位を予想するが、名門校同士の戦いは戦力や戦術を超えたところに勝敗の分岐点がある。好ゲームを期待したい。