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2022-09-13

【NFL】土壇場でコーチが「背信」の選択 シーホークスと対戦のブロンコスQBウィルソン不覚

試合後、昨年まで10年間共に戦ったシーホークスのキャロルHCと言葉を交わすブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images

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 アメフトの世界最高峰、米プロフットボール・NFLは、現地9月12日に、ワシントン州シアトルで第1週のマンデーナイトゲームがあった。


 シアトル・シーホークスがホームにデンバー・ブロンコスを迎えた試合。シーホークスのフランチャイズQBだったラッセル・ウィルソンがブロンコスに移籍して、最初のゲームが古巣との対戦だった。シーホークスがブロンコスの追い上げをかわして、1点差で逃げ切った。(写真はすべてGetty Images)

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NFL 第1週マンデーナイトゲーム
ブロンコス  3  10  0  3  16
シーホークス 7  10  0  0  17
2022年9月12日、@シアトル、ルーメン・フィールド



シーホークスは、後継の先発QBジーノ・スミスが前半は絶好調だった。パス17/18、164ヤード、成功率94.4%、2タッチダウン(TD)と文句のつけようがなかった。ただし、ブロンコスも負けてはおらず、13-17と4点のビハインドで折り返した。
 後半に入ってブロンコスのオフェンスは、2回連続でゴール前1ヤードに迫った。しかし、2回ともランでTDを狙ってファンブルロストした。ブロンコスは第4Qにもゴール前3ヤードに迫ったがTDを取り切れず、フィールドゴール(FG)で1点差に迫った。ブロンコスは、最後のオフェンスシリーズでは、64ヤードのFGを選択し、失敗。試合はあっけなく決着した。
昨年まで10年間共に戦ったシーホークスと対戦したブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images
議論呼ぶ64ヤードのFGトライ

 この試合で一番論議を呼んだのは、ブロンコスの最後のオフェンスだった。

 第4Q残り4分2秒。自陣22ヤードから、タイムアウトは3回。

 2012年以降の10シーズンで、第4Qに勝利を決めるドライブを32回(NFLで2位)経験したQBウィルソンにとっては、格好の舞台だった。時間を使い切ってFGでもいいし、TDを奪って、2ポイントコンバージョンを決めて、シーホークスのQBスミスに重圧をかける手もあった。スミスは前半と打って変わって、後半はまったくオフェンスを進められなくなっていた。

 思ったほどにドライブが進まず、ゴールまで46ヤード、4thダウン残り5ヤードとなった。この段階で、残り時間は1分1秒。そのまま時計を流し、4thダウンでオフェンスのプレーを始めようとしたところで、ブロンコスサイドラインはタイムアウト。

 そしてFGトライを選択した。

 多くの修羅場をかいくぐってきたQBウィルソンに4thダウン5ヤードを任せるのか、64ヤードのFGを狙うのか。この試合がHCデビューだったブロンコスのナサニエル・ハケットは、後者を選択した。
ブロンコスのQBウィルソンと、新任のハケットHC=photo by Getty Images
 付言すれば、64ヤード以上のFGは、NFLでは歴史上3回しか決まっていない。昨年レイブンズのKジャスティン・タッカーが決めた66ヤードは、天候の影響を受けない屋内競技場(フォードフィールド)での記録だった。

 シーホークスの本拠地、ルーメン・フィールド(屋外)の最長FGは56ヤード。

 そして自己最長は61ヤードFGで、60ヤード以上は4回トライして1回成功というのがKブランドン・マクマナスの実績だった。

 4thダウンのオフェンスプレーは「ギャンブル」と言い現わされるが、どう考えても、この64ヤードFGの方がギャンブルだった。そしてこのギャンブルは失敗した。
 
 試合後の会見で、ハケットHCにはこの選択に対する質問が集中した。ハケットHCによれば、マクマナスは試合前の練習で、この付近からの距離でも決めていたから、という。

 しかし、ハケットHCは、パッカーズでオフェンスコーディネーターとして、アーロンロジャースの3年間で2回のMVP獲得をアシストしたパス戦術の専門家。ブロンコスは、ウィルソンのために、ハケットをわざわざ招聘していた。それだけに、最大の勝負所で、結果的にウィルソンを信用しなかった選択は、納得できなかった。
ブロンコスの新任ハケットHC=photo by Getty Images
 この春、ブロンコスは、ウィルソン獲得のために、2つの1巡を含む複数のドラフト指名権と、3人の選手を放出した。9月には、ウィルソンと5年2億4500万ドル(約353億円)の巨額契約を結んだ。ウィルソンのために支払った代価は、いったい何のためだったのか。勝負所でチームを託すことのできるQBを獲得するためではなかったのか。

 この結末は、今後に波紋を残すことになりそうだ。

 QBウィルソンのコメント
 「コーチ・ハケットを信じている。自分たちがやっていることを信じている。そして、4thダウン残り5ヤードで、(オフェンスを)プレーする方法を見つけることができれば、それも素晴らしいことだったろう。FGは、間違った判断だったとは思っていない。(マクマナスは)成功できると思っていた」

ブロンコス、勝ち越し機を何度も逃す

 アメフトに限らず、スポーツに「勝てる試合」はない。ただ、それにしても勝ち越す機会が何回もあったのに、ブロンコスはそのどれをもつかみ損ねた。

 ファンの心情としては、第3Q、2度のゴール前1ヤードで2度ともファンブルロストしたのが痛恨だったかもしれない。

 ただし、この場面は、裏を返せばシーホークスディフェンスのファインプレーでもあった。
第3Q、ブロンコスのゴール前1ヤードで、RBゴードンがエンドゾーンを狙うが、この後ファンブルロストする=photo by Getty Images
 特に第3Q5分41秒からの3rd&1は、シーホークスのベテランDTアル・ウッズが、対面のブロンコス右Gグラハム・グラスゴーを1対1で3ヤード近く一気に押し込み、ブロンコスRBジャボンテ・ウィリアムスの進路を塞いでしまったのだった。

 米メディアによると、Gグラスゴーは、パスプロテクションのつもりで腰高なスタート。しかし、プレーは、オーディブルでランに切り替わっていた。グラスゴーがオーディブルコールを聞き取れなかったのは、名うてのルーメン・フィールドの、クラウドノイズのため。ウィルソンはかって自分を愛してくれたファンから手厳しい返礼を受けた。

 むしろ惜しかったのは、第4Qのゴール前3ヤードだ。

 1stダウンでは、右に流れたウィルソンがランで行くと見せかけて、その前にいたRBを狙わず、さらに奥に流れてきたTEエリック・トムリンソンにTDパスを決めたかに見えた。しかし、198センチの大型トムリンソンは、細かくステップできず、つま先がラインに掛かってアウトオブバウンズの判定。

 2ndダウンでは、RBにフェイクを入れて、モーションしてきたTEアンドリュー・ベックに絶妙のタイミングでショベルパス。あっさりTDを決めたかに見えた。しかし、プレーとは無関係の位置で、WRコートランド・サットンが不用意なフォルススタートの反則。TDは取り消された。

 「たら」「れば」は無意味を承知でいえば、第3Qの2度のゴール前1ヤードに比較して、この2プレーは、ほぼ決まっていただけにもったいなかった。
試合終了後、去年までのチームメート、シーホークスWRメトカーフとジャージを交換するブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images

■試合経過
1Q残り11:26 シアトルTEディスリー38ヤードTDパス←QBスミス 【0・7】
1Q残り6:55 デンバーKマクマナス30ヤードFG【3・7】 
2Q残り7:20 シアトルKマイヤーズ49ヤードFG【3・10】
2Q残り5:34 デンバーWRジュディ67ヤードTDパス←QBウィルソン【10・10】
2Q残り2:24 シアトルTEパーキンソン25ヤードTDパス←QBスミス【10・17】
2Q残り0:00 デンバーKマクマナス40ヤードFG 【13・17】
4Q残り6:13 デンバーKマクマナス26ヤードFG 【16・17】

米国の同時多発テロから21年。試合終了後、去年までのチームメートと共に祈りをささげるブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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