アメリカンフットボールのXリーグ「X1 エリア」は10月15・16日に第4節の4試合が東西の2会場で開催された。電通クラブキャタピラーズが品川CCブルザイズに、ペンタオーシャン・パイレーツが富士フイルムミネルヴァAFCに勝って、開幕4連勝で勝ち点12とした。ブルザイズは勝ち星がなく、富士フイルムは2勝2敗で勝ち点6のまま。
1敗で追うアズワン・ブラックイーグルスが三菱商事クラブ トライアックスに勝って3勝目(勝ち点9)。警視庁イーグルスは名古屋サイクロンズに勝って2勝2敗(勝ち点6)とした。
全勝の電通とパイレーツは、次節の10月30日に富士通スタジアム川崎で対戦する。(写真はすべて撮影:小座野容斉)
ペンタオーシャン・パイレーツ○24-13●富士フイルムミネルヴァAFC(2022年10月16日 富士通スタジアム川崎) 富士フイルムが1Q9分にQB鈴木貴史からWR桑原司へ36ヤードのロングパスが決まり、先制のTD。パイレーツは2Q2分に赤津裕之の27ヤードフィールドゴール(FG)を返し、7-3と富士フイルムがリードして折り返した。
パイレーツは、3Qに、QB西澤凌介からWR大通広志へ7ヤードのパスTDで逆転。さらにRB柴田健人の4ヤードランTDでリードを広げた。4QにもRB草野公平のTDランで富士フイルムを突き放した。
富士フイルムもQB鈴木からWR佐藤十八のTDパスが決まり反撃するが、次のオフェンスシリーズで、鈴木がTDを狙ったパスをパイレーツDB牛島卓也がインターセプトし、決着が着いた。
地上戦支配したパイレーツが逆転勝ち 昨年のこのカード、パイレーツが、チームリーダー赤津が試合最後のプレーでFGを決めて競り勝った。前半の最終盤、同じようにFGをパイレーツが狙う場面があり、同じように赤津が蹴った。しかし富士フイルムが見事にブロック。7-3と僅差ではあったものの、富士フイルムがモメンタムをしっかりつかんで折り返したように思えた。
しかし、パイレーツの底力はそんなものではなかった。3Qの冒頭から3回のオフェンスシリーズ連続でTDを奪って、試合の流れを完全に変えた。
3つのドライブでは、176ヤードを進んだが、QB西澤のパスは3回40ヤードだけ。77%にあたる136ヤードをランでゲインした。
パイレーツのチームトータルランは174ヤード。柴田が14回103ヤード、草野が10回64ヤード。2人のRBの力強いランで地上戦を完全に支配したのが、勝因となった。
対照的に富士フイルムはランがほとんど止められた。試合を通じて、山田大葵と堀大機の2人のRBで26ヤードだけ。タックル・フォー・ロスで押し込まれたうえに、NCAAのルールではQBサックもランのロスヤードとしてカウントするために、トータルで-9ヤードとなった。
パイレーツの川畑文人ヘッドコーチ(HC)は「富士フイルムも、やはり強いチームなので、ガチンコでやって勝てたのは良かった。ランプレーが後半にかけて本当にじわじわと効いた」と話した。
2チームが出場できる入替戦だが、川畑HCは「一つも負ける気はない」という。
X1スーパーのチームはリーグ戦は5試合。エリアは7試合後に入替戦となる。
「とにかく全部勝って、先に(入替戦を)決めて、最終戦だけは少し選手を休ませられれば」
そのためにも、次戦、10月30日の電通戦は、必勝の構えだ。
富士フイルムに新たなホットライン 富士フイルムは、地上戦で力負けしたが、収穫もあった。QB鈴木はエースWR桑原との間にホットラインを保っているが、さらにTE森章光の間に新たな線が繋がった。森は6回72ヤードのレシーブ、特に後半の反撃のドライブで、勝負強いキャッチを見せた。
オービックシーガルズ時代は、エースTEとして、3度のライスボウル制覇に貢献した35歳。いったん引退したが、ラグビーなど他のコンタクトスポーツを見ていて闘志がよみがえったという。「大きな負傷もないので、身体は動く」という森が、この後3試合のキーマンとなりそうだ。
電通クラブキャタピラーズ○41-20●品川CCブルザイズ(2022年10月15日 富士通スタジアム川崎) 電通が得意のパスオフェンスで、ブルザイズを撃破した。1QにQBアーロン・エリスからWR南賢人に18ヤードのパスが決まって先制のTD。2Qには、WR小貫哲に2本のTDを決めて21-0とリードした。
ブルザイズは2Qに天田裕貴が100ヤードのキックオフリターンTDで反撃。3Q,4Qに1TDずつを返して、一時は11点差まで詰め寄ったが、電通は残り2分から10得点を重ねて、押し切った。
今季16試合目のQBエリス、レシーバーに投げ分け 電通の深川匠HCは試合後、苦笑い。「横綱相撲とまでは言いませんが、しっかりと強さを見せて勝ち切る」はずが、4QのブルザイズのTDではリードが一桁になりかけた。
試合の終盤で、ブルザイズのオンサイドキックをキャッチしてフィールドゴール(FG)に繋げ、さらに、相手陣内でのインターセプトから、残り19秒でランTDを奪った。勝敗の決まった試合でフットボールのマナーには反する得点だが、エリアでの首位争いを考えれば、得失点差(最大で1試合20)上、必要なプレーだった。
オフェンスは好調だ。来日して4試合目のQBエリスが、自己最高の4TDパス。TDは12本目となった。
最初の2試合は特定のレシーバーにパスが偏る傾向があったが、この2試合は多くのレシーバーに投げ分けられるようになっている。この日は昨年のエースWR小貫に初めてTDを決めたのも大きい。
出身のセントフランシス大学は、イリノイ州のシカゴ近郊にあり、NCAAとは異なる組織、NAIAの配下。「僕は日本でプレーする、最初のNAIAカレッジ出身のQBだと思う」という。昨シーズンは欧州の新興プロリーグELFのシュツットガルト・サージに所属していた。
今季も来日する前に、春から夏にかけてオーストリアのチームでQBをしていたため、「今日で16試合目だよ」と笑う。「タフだね」と返すと、「タフではないけれど、こんなにシーズンが長いのは初めて」という。
日本のフットボールは「個々の選手で、NFLやNCAAのような素材はいない。だがELFと比べても、チームもゲームも、非常に組織的で、高いスタンダードの中で遂行されている」という。
そして「もっとレベルの高い場があるのはよくわかっている。来年は必ずそこでプレーする」と、X1スーパー昇格を誓っていた。
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警視庁イーグルス○17-3●名古屋サイクロンズ(2022年10月15日 大阪 MKタクシーフィールドエキスポ)アズワンブラックイーグルス○49-0●三菱商事 クラブ トライアックス(2022年10月15日 大阪 MKタクシーフィールドエキスポ)