アメリカンフットボールのXリーグ「X1 エリア」は10月29日に第5節の2試合が大阪・ヨドコウ桜スタジアムであった。富士フイルム ミネルヴァAFCとアズワン ブラックイーグルスの1戦では、富士フイルムが試合残り18秒からタッチダウン(TD)と2ポイントコンバージョン(CV)を決めて、劇的な逆転勝ちをした。
富士フイルムは3勝2敗で勝ち点9、アズワンと勝敗、勝ち点で並んで3位となった。
X1エリア 第5節 富士フイルム ミネルヴァAFC○15-14●アズワン ブラックイーグルス(2022年10月29日、ヨドコウ桜スタジアム) 先制はアズワン。QB糟谷啓二郎がキーププレーで一気に敵陣に攻め込むと、次のプレーでWR川畑一輝へロングパス。46ヤードのパスとなって、3プレーでタッチダウン(TD)を奪った。
その後は両チームのディフェンスがしっかりと守って7-0のまま、後半へ。
3Q、富士フイルムは、44歳のRB井岡淳がショートヤーデージランを連発してTD。同点とした。
しかし、直後のオフェンスシリーズで、アズワンは2度の3rdダウンコンバージョンを乗り越えて、RB三谷和也がランTD、再び勝ち越した。
最終盤の4Q残り1分36秒、富士フイルムは自陣18ヤードからのオフェンス。QB鈴木貴史のパスでボールを進めると、残り26秒からのスナップで、鈴木がWR小山昭瑛へロングパス。左サイドライン際でパスを捕った小山はそのままエンドゾーンへ走り込んで49ヤードのTDとなった。
富士フイルムはエクストラポイントでも、QB鈴木が、2ポイントコンバージョン(CV)でWR安達絹心にパスを決めて、15-14と逆転。残り時間は18秒だった。
ルーキー小山がビッグプレー決めた 富士フイルムがドラマチックな逆転勝利を飾った。
ラストドライブ、短いパスで少しずつ進んでいたが、30秒を切った残り時間を考えると、どこかでビッグプレーが必要な状況だった。
そのビッグプレーを、完璧なパスで決めた。ヒーローはルーキーのWR小山だ。
「タテを、一発を狙って攻めようという話はしていた。その一発を取り切った」
「パスを捕った瞬間、前に選手がいなかったので、TDまで行けると思った」
伏線はあった。富士フイルムに残っていたタイムアウトは1回のみ。ただし、フィールドゴール(FG)を蹴るわけではないので、どこかいいタイミングで使えばよい。
富士フイルムは直前3回のパス成功は、すべてインバウンズでのデッド。時計は回っていた。
時間を残すためタイムアウトを使っても良かったが、あえて使わずに攻めた。アズワンディフェンスに一息つかせず、プリベントなどで対応をする間を与えなかった。
小山にとっては、Xリーグで初のTDパスだった。189センチの長身と、シュアハンド。法政大学の副将・エースレシーバーとして、関東で名をはせ、甲子園ボウルにも出場したが、Xリーグでは鳴かず飛ばずだった。
「環境が変わって、キャッチの数とかも減ってしまって。自分の思うようなプレーができず悩んでいた」という。
この日は、昨年12月の甲子園ボウル以来の関西でのゲーム。小山は「ここへ来る列車の中で、昨年の甲子園での写真を見て、自分の気持ちを作っていた」。
それがチームを救うビッグプレーにつながった。
朝倉孝雄ヘッドコーチ(HC)は、「小山は、今までのリーグ戦で、散々パスを落としまくって、『借金』がだいぶあるので、まだまだ褒めません」と言いながらも、大器がここ一番でやってのけた大仕事に満足げだった。
QB鈴木「自信をもって投げ込んだ」 富士フイルムは、TD後に、迷うことなく2ポイントCVを選択した。すでに2敗している以上、ここで引き分けても意味がない。かすかな入れ替え戦出場の望みをつなぐためにも、当然だった。
その大事な2ポイントを、エースQB鈴木が、WR安達へのスラントパスで決めた。
「プレーに迷いはなかった。何度も練習で決めてきたパス。自信をもって投げ込んだ」という。
同点に追いついた後で、直ぐにまたTDを許すなど、決して良い流れではなかった試合。
だが鈴木は「ディフェンスが良く止めて、オフェンスに時間を残してくれた。チーム全員が諦めていなかった」という。
リーグ戦はあと2試合、対戦相手や入替戦は関係ない。「自分たちのオフェンスをしっかりやり切るだけ」と、次戦に心を向けていた。