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2022-11-05

【アメフト】富士通QB高木翼とオービックRB李卓 ユニコーンズ同士が雌雄を決するライバル対決

富士通QB高木翼とオービックRB李卓 慶応ユニコーンズ出身の2人が雌雄を決する日が来た=撮影:小座野容斉

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国内最高峰のアメリカンフットボール、Xリーグの「X1 スーパー」は、11月6日にレギュラーシーズン最終節の3試合が横浜スタジアムである。

 注目は、やはりディビジョンBの富士通フロンティア―ズ対オービック シーガルズの一戦だ。X1 スーパー屈指のライバル対決、今年はどのような戦いを見せてくれるのだろうか。双方のオフェンスの柱である2人に注目した。
 富士通のQB高木翼と、オービックのRB李卓だ。

パス絶好調にも一喜一憂せず 高木翼
=撮影:小座野容斉
 高木は今季好調だ。スターターQBとなって2年目。ここまで4試合でパス61/80、成功率76.25%、957ヤード12タッチダウン(TD)でインターセプト(INT)はわずか1。
 ヤードとTD数ではリーグ1位だが、第3節のアサヒ飲料戦を除けば、2Q終了か、3Q途中で退いているので、フル出場していれば、もっと数字は伸びているはずだ。
 パス能力の指数、パサーズレーティングは、NCAA方式では223.73、NFL式でも149.84(158.3が上限)という極めて高い数値が出ている。
 1試合ならともかく、2カ月にわたるシーズン。アサヒ飲料戦のような悪天候下での試合もあった。積み上げてきた数字が、今の高木のスタンダードを物語っている。
=撮影:小座野容斉
 第4節のエレコム神戸戦は、特に内容があった。コントロールがよく、レシーバーとのタイミングもあっていた高木は、どんどんロングボールでバーティカルに攻めた。
 チームのゲームMVPに選出されたWR小梶恭平への68ヤードパスを筆頭に、20ヤード以上のパスが6本、15ヤード以上が8本。順調以上の仕上がりだった。

 ただ高木は、一喜一憂はしなかった。
 「確かに、パスのフィーリングは良かった。ただ、自分は、QBとしてそんなに調子に左右されているわけではない。自分のメンタルをコントロールして、とにかく目の前のプレーに集中することができたのは良かったと思う」
「2試合続けて関西への遠征ということで、今までになかった状況だったり。そういう周囲のいろいろな条件に左右されずに集中できたことが良かった」
「自分の調子という以上に、OLの調子が良かったと思う。パスプロテクションは完ぺきだった。くわえて、ブリッツを多数仕掛けてくるディフェンスに対して、自分のポケットムーブで、動いてそこからパスを決めることができたのは収穫だった」

=撮影:小座野容斉
 宿敵オービックとの戦いにむけて、高木は、もう一段、マインドチェンジが必要だと思っている。
「ここで勝って、1位で抜けるか、負けて2位になるか全然違う。もうトーナメントが始まるくらいの気持ちで臨みたい」
 今春30歳になった高木だが、自身のQBとしての能力をもっと伸ばせると考えている。
 「正式に先発QBになったのは去年で、まだ2年目。去年のビデオを、今、見返していても、もっとこういうプレーができたと思う部分がいっぱいある。自分の伸びしろを信じて、1試合1試合成長を重ねていきたい」

 高木にとって、QBとしての完成を求める旅は続いている。これから続く、ライバルたちとの試合も、その過程に過ぎない。

李卓、苦闘するオービックの救世主になるか
=撮影:小座野容斉

 今季のシーガルズは、苦闘の連続だ。2年前のライスボウル王者が、もがき苦しんでいる。
 QBジミー・ロックレイ、ディフェンスの大黒柱DEバイロン・ビーティー・ジュニア、Sブロンソン・ビーティー、LB岩本卓也ら、中核メンバーがチームから抜けた。
 変わって加入した、QBジェイソン・スミスが、不安定なクオーターバッキングを続けており、オフェンスが乗り切れない。富士通から移籍したWR中村輝晃クラークの能力も生かせていない。
第3節の東京ガス戦では、インターセプトとファンブルロストを連発して、チームの足を引っ張った。敗戦の瀬戸際まで追い込まれた。


 第4節のアサヒ飲料戦では、QBスミスが、ようやくポテンシャルを見せた。 パス13/17で169ヤード2TD。チームのハート&ソウル、木下典明に41ヤードの先制TDパスも決めた。木下は、2020年シーズンに負傷して以来のTDパスレシーブとなった。
 課題だったターンオーバーもゼロに抑えた。とはいえ、シーガルズの本来の「らしさ」が戻ったとは言えない。
=撮影:小座野容斉

 そんな時に、カナダから朗報がもたらされた。CFLに挑戦中だったRB李卓が、日本に戻ってくるのだ。
 しかも、11月6日の富士通戦に出場できるという。

 李卓は、今季、昨年に続いてCFLモントリオール・アルエッツのプラクティスロースターで練習を重ねてきた。

 昨年とは異なり、ゲームでの出番はなかったが、アメリカ人やカナダ人のプロ選手の中で、半年近く鍛錬してきた。能力にはさらに磨きがかかっているに違いない。
 NFLでもCFLでも、RBというかTB(テールバック)は、原則としてフィールドには1人しか出場できないポジション。同時に複数選手が出場できるWRやOL、LBとは違う。

 特にCFLの場合は、スキルポジションは、ほぼアメリカ人選手で固められている。カレッジフットボールの準トップ級タレントで、NFLに少し足りなかった選手や、元NFL選手がゴロゴロしている世界だ。彼らに勝たなければ、試合には出られないのだ。
 他の日本人選手に比べて、李卓の挑戦したハードルは高い。それを承知のうえで、戦ってきた熱い魂の持ち主。今のオービックに大きなエネルギーを与えるに違いない。

 李卓が最後に日本でプレーしたのは2021年1月3日のライスボウルだ。その一つ前のジャパンXボウルでは富士通を破って、7年ぶりの栄冠をつかむ原動力となった。

 鍛え上げたパワーとテクニックを、試す場がなかった李卓にとって、シーズンの最後に宿敵との戦いが待っていた。李卓はオービックの救世主となるのだろうか
        ◇
 高木翼と李卓は、慶応義塾大学の先輩後輩だ。ユニコーンズでは高木が3年生の時に李卓が1年生だった。QBとRBのスターターとしてチームをけん引し、甲子園ボウルを目指したが、夢は果たせなかった。

 あれから8年。2人は別のチームに分かれ、日本の最高レベルの戦いで、雌雄を決しようとしている。目が離せない戦いとなりそうだ
 =撮影:小座野容斉

【小座野容斉】

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