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2023-01-22

【アメフト】JAPANのエースQB高木「壊しに来る」アメリカのDLに負けない  日本を背負って戦う選手たちに聞く(5) 

QB高木は「ここの、JAPANの練習場で起きていることが、当たり前だと思ってはいけない」それはどういう意味なのか=撮影:小座野容斉

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1月22日に、東京・国立競技場で行われる、アメリカンフットボールの国際試合「ジャパン U.S. ドリームボウル 2023」で、米国のアイビー・リーグ選抜と戦う日本選抜「ジャパン・オールスター」。選ばれて、日本を背負う選手に思いを聞いた。
 2020年早春に渡米し、テキサスで米プロ育成リーグTSLと戦った日本代表。その時エースQBを務めたのが、今回のJAPANでもスターターQBとなるであろう高木翼だ。

 今季の高木は、リーグ戦5試合と、ライスボウルまで含めたポストシーズン3試合、合計8試合で、パス128/175、成功率73.1%、1729ヤード、19TD(タッチダウン)でわずか1INT(インターセプト)。レーティングはNCAA方式で190.82、NFL方式でも138.01と驚異的なポイントとなった。

 QB人生で最高のパフォーマンスだったと言ってよい。だが、高木は異を唱えるだろう。なぜなら「今季はまだ終わっていない」からだ。誰よりもJAPANのQBとしてプレーすることに拘ってきた高木。今回の試合前に何を考えているのかを聞いた。

前回の日本代表では、様子見し過ぎた
板井WRコーチ(左)、山本HC(右)と話し合うQB高木=撮影:小座野容斉
――これだけのメンバーがそろった中で練習をするのは楽しいのでは
◇高木
めちゃめちゃ楽しいですよ。

――山本さん初めコーチ陣は、ライスボウルに勝った後まったく休んでいないというけれど、高木選手はどうですか
◇高木
休んでいません。1月3日まではライスボウルのことだけ考えてやっていました。4日からは、今回のプレーブックをインストールして。身体に関しては、傷めた個所もあったので、そこの回復には努めながらやってきました。ライスボウルが火曜日で、水、木、金と身体をケアしてプレーをインストールして、(
1月7~9日の)土・日・月と3連休はみっちり今回のJAPANに向けた練習でした。
ただ、富士通の選手は僕よりも傷んでいる選手は多いですよ。オフェンスラインとか含めて。

――ライスボウルは、非常にフィジカルでタフなゲームでした
◇高木
そうですね。本当にその通りでした。

――タフな相手という意味では、今回、全員がアメリカ人のチームと戦います。そういうチームとは、2020年3月、前回の日本代表の時に1回対戦している。そこからの学びというか、得られたものは。
◇高木
アメリカのディフェンスラインの選手は、言葉を選ばずに言えば、QBを壊すことに特化していると思います。Xリーグだと、途中で動きを止める部分もあると思うのですが。際どいところで、ラフィング・ザ・パサーの反則を取られないようにプレーするという。

それが、アメリカのチームだと、QBにいかにダメージを与えるかという考えを持っているように感じます。TSLとの対戦では、特にパスを通せば通すほど、そのことを身に染みて感じられました。

そういうような状況になった時でも。どうやったら崩れないでQBを続けられるか、というのがとても良い学びになったかと思っています。前回は、そういうことがいまいちよく理解できていない中でプレーしていました。向こうは、イエローが出そうかなという場面でも、お構いなしにヒットして、ダメージを与えようとして来ました。
今回は、そういうパスラッシュ、そういうディフェンスが来るとわかっています。その中でいかに勝利に導けるか、試合を壊さないか、意識しないといけないなと思っています。

――前回、QBへのラッシュがどんどん厳しくなっていくことを理解していなかったという話でしたが、でも試合内容的には、後半にかけてよりパスが決まるようになりましたが、そこは何が良かったんですか。
◇高木
相手のディフェンスに慣れて行ったんだと思います。マインドセットの部分も大きかった。最初少し様子を見過ぎてしまった。我々選手だけでなく、コーチ陣の方も同じ反省を持っていました。オフェンスコーディネーターだった富永一さん(現法政大学HC)と、反省として話し合いしました。

代表同士の練習を「当たり前」だと思ってはいけない
QB高木は「ここの、JAPANの練習場で起きていることが、当たり前だと思ってはいけない」それはどういう意味なのか=撮影:小座野容斉

――警戒しなければならないことは他にありますか
◇高木
 全員がアメリカ人のチームを相手にやると、ここの(練習の)フィールドでやっている「当たり前」が通用しないことがあると思います。我々は日本人のQBで練習していて、それ用に、ディフェンスもいろいろ準備してやっているかもしれない。でも、相手は、タテ(のパスを)どんどん投げてくるかもしれないし、レシーバーもハイポイントで決めてくるかもしれない。

いい意味でも悪い意味でもそれが言えるかなと思っています。この中で、日本のトップ選手同士で、代表のオフェンスと代表のディフェンスで練習している。そこでやっていることが、当たり前だと思ってはいけないと思っています。

 今、我々のディフェンスは、いろいろなサインをやって、3DLにして、パスカバレッジも複雑でいろいろなカバーをやっていますが。もしかすると相手は正攻法のカバーしかないかもしれない。前回のTSLの時は、そういうことが起きました。ナチュラルなカバー2と、ブリッツなしのマンツーマン。で、3rdダウンになると2フリーのマンカバーを混ぜてきたりというシンプルなディフェンスだったので。

 我々のディフェンスは、トムさん(トム・カウマイヤー)がパスディフェンスをやっていて、結構複雑なことをやっていて。練習でずっとそれを相手にしていたので、それを前提に我々のオフェンスも考えてしまったことがあったので。

もちろんそれぐらいの、複雑さやクオリティーでやってくることもあり得るとは思うのですが。そうではなくて、本当に正攻法のカバー2で来られて、それでいながらこちらのランも出ない。そういうことが起きた時に、前回は試合中のアジャストが大変になった。

ここの、JAPANの練習場で起きていることが、当たり前だと思ってはいけない。前回の対戦の中で一番の学びはそれかもしれないですね

――ニクソン選手のような米国人選手がはいって戦うというのは前回との大きな違いですが、戦術は変わってくるのでしょうか
◇高木
ゲームプラン次第ですが。今はプレーブックをインストールして、満遍なくどういう状況にも対処できるようにしている状況です。荒木さん(オフェンスコーディネーター)の考えによると思います。

2つの軸でQBを続けている
ハドルでも積極的に発言してきた高木。右は前回のキャプテンだったWR近江=撮影:小座野容斉
――3年前の試合後のロッカールームで、藤田智HC初めコーチ陣の皆さんが話したことを覚えていますか
◇高木
よく覚えています。私自身が、今QBを続けている中で二つ軸があります。一つは、米国人QBがスタンダードになっているXリーグの中で、日本人QBとして勝って結果を残す、そして勝ち続けるということ。もう一つは日の丸を背負って戦いたいということです。私は、高校・大学とアメフトをやってきたのですが、U19とか、U23とか、世代別の日本代表に選ばれたことが無かった。
 前回のTSLとのゲームで初めて日の丸を背負えました。勝つためにいろいろな努力をして行ったつもりでしたが、ああいう(敗戦という)結果に終わって。だから藤田さんたちのお言葉は今も忘れることはありません。
今回、こういう試合をする機会を頂いて、相手が違うので、リベンジではないのですが、僕の中ではアメリカに勝つチャンスを貰えたという意味では、リベンジの機会なので、本当に感謝しています。

――世界選手権もなかなか行われない状況の中で、今回の試合はどのような意味を持ちますか
◇高木
 2019年のオーストラリア大会が、延期というか中止になって。その後の、2023年のドイツ大会も、日本協会はまだ発表していませんが、IFAF(国際アメリカンフットボール連盟)の方では延期を決めている。そういうニュースもあります。つまり、もう8年間大会が無くなってしまうんですよね。

 2015年の米国のカントン大会(オハイオ州)の代表が招集された時、僕は社会人1年目だったんですよ。銀行に就職して、トライアウトすら受けに行けなかった。研修を受けながら、代表の選手たちが活動しているのを、トイレとかでスマホで見ながら、めちゃめちゃあこがれていました。「あそこに立つんだ」という思いで、先ほどの2つの軸を持って、ずっと今までやってきました。

 だから、今回の試合も、ポジティブな気持ちしかないです。そもそも、こういうトップレベルの選手が集まって練習する機会があるだけで、全然違います。日本のフットボールの底上げにつながると思います。

【小座野容斉】

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