7月12日、大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場に指名挑戦者1位のジョナサン・タコニン(フィリピン/32歳/28勝22KO3敗1分)を迎え、現役最多6度目の防衛を目指すWBC世界ライトフライ級王者の拳四朗(BMB/27歳/15戦全勝8KO)に17日、“仮想タコニン”が合流した。
写真上=世界4位のタドラン(左)と6ラウンドのスパーリングを行った拳四朗(写真/船橋真二郎)
18日、練習拠点にしている東京・練馬の三迫ジムで、1階級下のミニマム級でWBC、IBFともに4位にランクされるペドロ・タドラン(フィリピン/22歳/13勝10KO2敗)と6ラウンドのスパーリングで初の手合わせ。序盤から拳四朗の右がよく捉え、何度も攻め込む場面をつくるなど、終始優勢だったが、打ち終わりを鋭い左で狙い打たれるところも目についた。スパーリング終了後、参謀役となる三迫ジムの加藤健太トレーナーと「パンチが当たると打ち気に逸って、足が止まってしまった」課題を確認し合い、修正点をミット打ちで反復。その場で体に叩き込んだ。
「日本人より結構飛び込んでくる感じ。思った以上に踏み込みが速いし、大きい」フィリピン人パートナーを拳四朗も歓迎。これまでは懐の深いサウスポーらしいサウスポーとスパーリングを重ね、対サウスポーの距離感を磨くことに力を注いできた。「感覚としてはかなりいい」(加藤トレーナー)と手応えをつかみ、ここからはタドランを中心にタコニンと近い好戦的なタイプにパートナーを切り替えていく。
ポイントは「前に出てくる分、パンチを当てやすい」相手に対し、「(KOの)欲を出して」(拳四朗)パンチを当てにいくのではなく、まずはパンチを当てられない距離、位置取りをしっかり意識し、「パンチをもらわない流れをつくること」(加藤トレーナー)。自分のパンチは当たり、相手のパンチは当たらない間合いを構築するのが拳四朗のボクシングの真骨頂。生命線となるジャブ、ステップとともに、いかに心をニュートラルに保つかが重要になる。
総じて思いきりよくパンチを振り回してくるのがフィリピン・ファイターの特徴だが、タコニンはアグレッシブではあるものの、決して大振りではなく、コンパクトにパンチを打ち込んでくるタイプ。パートナー探しに尽力した三迫貴志・三迫ジム会長が「厳選した」というだけあって、タドランは身長もタコニンと近く、前重心で攻めるが、パンチは左も右も実にシャープ。昨年8月、ミニマム級で無敵を誇るワンヘン・ミナヨーティン(タイ)の牙城に挑み、果敢に先手で仕掛けた若き実力者の片りんを見せた。
格好のパートナーを得て、対策は仕上げの段階に入る。スパーリングで出た課題をミット打ちで修正し、また次のスパーリングに臨む。その繰り返しで「課題を一つひとつ潰して、最終的に満点に近づけたい」と拳四朗。世界王者として初となる地元関西凱旋まで1ヵ月を切ったが、「気持ちはいつもと変わりない」と安定王者は気負うことなく調整を進めている。
取材◎船橋真二郎
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