「今度こそ引退する。永久にだ」。現地2月1日、米プロフットボール・NFLで、現在はタンパベイ・バッカニアーズのQB、トム・ブレイディが23年間にわたる現役生活に終止符を打つことを表明した。自身のTwetterアカウントに、ビデオ投稿した。
スーパーボウル優勝7回、通算パス獲得ヤード、通算パスTDなど、あらゆる部門でNFL史上1位の記録を持つ「GOAT(the Greatest Of All Time、史上最高)」のQBは、ちょうど1年前の2022年2月1日に自身のインスタグラムで引退を表明しながら、40日後に引退を撤回し、2022年もプレーした「前歴」がある。
45歳にしてパスを投げた回数はNFL1位 ブレイディの「引退発表」は、現地2月1日朝の、tweitterの53秒のビデオ投稿で明らかになった。
“ I’ll get to the point right away, I’m retiring. For good. ”
「すぐに本題に入るよ。私は引退する。永久にだ」と、ブレイディは語った。
そして
"I know the process was a pretty big deal last time, so when I woke up this morning, I figured I'd just press record and let you guys know first, I won't be long-winded. You only get one super emotional retirement essay, and I used mine up last year, so really thank you guys so much to every single one of you for supporting me."
「前回、(引退発表の)プロセスが、かなり大きな問題だったことを知っているので、今朝起きたとき、私は、単純に(スマートフォンの)録画ボタンを押して、最初に(ファンの)あなた方に知らせようと思った 。くどいことは言わない。超感動的な引退エッセイは一度だけ。私は昨年それを使い切ってしまった。だから、私を支えてくれた人々の一人一人に、お礼を言う。本当にありがとう」
と話した。
ブレイディは、ニューイングランド・ペイトリオッツで、2001年シーズンのスーパーボウルを初制覇して以来、史上最多の10回出場、7回優勝、5回のMVPに輝いた。QBとしても、歴代最多の通算89214ヤード、649タッチダウン(TD)など、NFLの大半のパス記録を塗り替えてきた。
2020年に、長年所属したペイトリオッツからバッカニアーズへ移籍し、最初のシーズンでスーパーボウルに優勝した。2021年は44歳にしてパス5316ヤード(自己最高)、43TD(同2位)と、年齢を超越した魔神のようなパフォーマンスを見せた。
ポストシーズンでラムズに敗れた後、引退を発表しながら「自分の居場所はまだフィールドにあり、スタンドにはないことを悟った」と撤回。2022年シーズンもバッカニアーズでエースQBとしてプレーした。しかし、この撤回で、ブレイディと、妻で世界的スーパーモデル、ジゼル・ブンチェンさんの夫婦関係に亀裂が入った。
ブレイディ・ブンチェン夫妻は、協議を重ねた。しかし、それぞれの世界で、他の追随を許さないトップスター夫婦には、妥協の余地が無かった。現地10月28日に離婚を発表した。ブレイディは10月23日、パンサーズにTD無しの完敗。10月27日、レイブンズに敗れた。多くのミスがあっただけでなく、NFL史上最多となる通算555回目のサックも浴びた。そして、翌日の離婚発表だった。
今回のブレイディの発表を、「今度こそ間違いなく引退だろう」と受け止める向きもある一方で、また撤回して、現役を続けるのではないのかと考えるメディアやファンは多い。もちろん昨年の撤回が記憶に新しいからだ。だがそれだけが理由ではない。
ブレイディの2022年の成績は、
パス490/733、成功率66.8%、4694ヤード、25TD、9INT(インターセプト) 。
45歳にして、パス試投数と成功数は自己最高で、NFL1位。4694ヤードはNFL3位。
離婚協議がシーズン中も続き、フットボール以外の精神的な労苦があったこと。バッカニアーズのOLに故障者が続出して、パスプロテクションが持たなかったこと。ホットレシーバーだった、TEロブ・グロンコウスキーが引退してしまったことなど、多数のネガティブな要素を考慮すれば、まったく文句を言えない成績だった。
だから、この「引退発表」の前までは、来季のブレイディの移籍先として、レイダースや49ers、パンサーズ、ジェッツなどのチーム名が挙がっていた。
ディビジョナルプレーオフのカウボーイズ戦で喫した、エンドゾーンでのINTなどを見ていると、ブレイディにも衰えが忍び寄っていると思えなくはない。だが、彼が再度、引退撤回をすれば、「ぜひ我々と共に」と希望するチームが、3指を下回ることはおそらくない。
ブレイディ狂騒曲が、これで終わりになるとは、現時点で考えにくい。
一つだけ言っておきたいのは、「引退発表」のタイミングだ。昨年もそうだったが、スーパーボウル出場が決まり、両チームが盛り上がっていくこの時期に、なぜこのような発表をするのか。スーパーボウル終了後でもいいのではないだろうか。
トム・ブレイディの主な記録
トム・ブレイディの持つ主なNFL記録と業績は以下の通り。・QBとして試合出場:335試合・QBとして最多勝利:251勝・最多パス試投:12050回・最多パス成功:7753回・最多パスTD:649本・最多通算パスヤード:89214ヤード・通算被サック:565回・1シーズン最多パス成功:485回(2021年)・選手としてスーパーボウル最多出場:10回・選手としてスーパーボウル最多優勝:7回・スーパーボウルMVP最多選出:5回・NFLのシーズンMVP:3回(2位タイ)・選手としてポストシーズン最多出場:48試合・選手としてポストシーズン最多勝利:35勝・ポストシーズン最多パス試投:1921回・ポストシーズン最多パス成功:1200回・ポストシーズン最多パスヤード:13400ヤード・ポストシーズン最多TD :88本・ポストシーズン最多被サック:81回・プロボウル最多選出:15回・QBとしてポストシーズン最多進出:18シーズン・レギュラーシーズン10勝以上が最多:19シーズン・40歳以上で10勝以上のシーズン:5シーズン・40歳以上で先発勝利数:68勝・40歳以上でスーパーボウルに先発出場:3回・40歳以上でスーパーボウル先発勝利:2勝