16日、岐阜メモリアルセンターで行われたWBO世界フライ級タイトルマッチは、チャンピオン田中恒成(畑中)が元統一世界ライトフライ級王者・田口良一(ワタナベ)に3-0の判定勝ちで初防衛に成功した。紆余曲折を経て実現した「宿命の戦い」に敗れた田口。試合後、控室の扉は堅く閉ざされた――。
写真上=田口(右)の右ストレートが田中を襲う
写真◎早浪章弘
田口は頭痛を訴え、医師の診断を受けたとジムは説明。体調が心配されたが、やがて「5分」の約束で室内に報道陣を迎え入れた。
「教えてもらったことができませんでした。気持ちの強さでは絶対に負けないと思っていたのですが……。ちょっと(田中の動きが)止まっている部分もあったし、いけるかなと思ったんですが……」
精一杯やれましたか? の問いには、うつむきがちにそう答えた。右目の周囲が赤く腫れている。フライ級初戦だったことで、パワーの差について問われると「特別には……。田中くんが世界一強かったということだと思います」と、王者の実力を認めた。
3回のチャンスには「詰めたかったんですけど、自分の中でまだチャンスはあると思っていました」と、ここでは勝負に出なかった理由を説明。その後、ジャブが減ったのは「相手の手数が多くなって、出せなかった」とした。下されたスコアについては「119と聞いたときは、1ラウンドしか取ってないのかと。見栄えが悪かったのかな」と、無念そうに言った。
「もっと自分のボクシングをやりたかった」と話す一方で「動き自体は(前回の)ブドラー戦より良かったと思います」と、自身の成長も感じた様子。ブドラー戦では試合直後に引退を決意したというが、今回は「(引退も)なくはないですけど……」と、揺れる思いをにじませた。頭痛は「さっきよりは良くなったですけど、まだ痛いです」。この痛みを経験するのは、6年前の井上尚弥戦以来だという。
渡辺均会長は「思った以上によくやった」と田口の健闘を称え、「井上も強かったが、世界戦で対戦した中では一番くらいです」と田中の強さを認めた。今後については「やるべきことはやったので、あとは本人の気持ち次第。人生設計もありますから」とした。
いまはただ、激闘に痛んだ体をゆっくり休めてほしい。
取材◎藤木邦昭
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