上写真=6ラウンド、ダウンを奪った和氣は、一気にラッシュし、レフェリーストップに持ち込んだ
写真_馬場高志
19日、東京・後楽園ホールで行われたメインイベント、スーパーバンタム級10回戦は、元OPBF東洋太平洋&日本同級チャンピオン和氣慎吾(31歳=FLARE山上)が、元日本同級1位の中嶋孝文(34歳=竹原慎二&畑山隆則)を6回2分20秒でストップ。2016年7月以来、2度目の世界挑戦の準備段階に入った。
OPBFと日本王座を獲得し、すでに世界挑戦も経験しており、2度目のアタックを目指している和氣。日本、OPBFと2度挑戦しながらチャンスを生かせなかった中嶋。両者の明暗がくっきりと表われる結果となった。
和氣にとって中嶋は、日本ランカーに挑戦を受けてもらえずくすぶっていた時代に、戦ってくれた格上の相手。2012年5月、勇んで挑んだその試合に、だが和氣はダウンを奪われて判定で惜敗してしまった。
しかし、その後の両者はまったく異なるボクシング道を歩むことになる。現在、WBC、IBFで4位にランクされる和氣、ノーランカーとなった中嶋……。この試合は、和氣にとってはリベンジマッチであり、中嶋には一気の浮上を期す戦いだった。
中嶋は、なんとか入り込もうとする。和氣は距離をキープし、左ストレート、アッパーカットを上下に見舞う。右を伸ばして中嶋を押さえ込み、サイドに回り込む。2回、右を放り込んだ中嶋に、和氣が左アッパーをカウンター。足元をグラつかせた中嶋を一気に攻め立てるが、中嶋も右を返してなんとか食い止めた。
「力んでました? いや、無意識でした」。何度もロープに詰めて連打を見舞った和氣は、これまでにないような力みを感じさせた。きっちりリベンジしたいという思いとともに、世界戦仕様のラッシュを研鑽していることがうかがえた。
和氣の距離を崩せず、前の手で押さえ込まれ、中嶋は思うように手を出せない状況に追い込まれた。時折、タイミングの合った右で、和氣の顔をはね上げたが、その都度和氣はスッと間合いを外し、体勢を立て直して“次”を打たせなかった。1発もらってドタバタとしてしまう“経験不足”な姿は、もうなかった。
6回、右を振ってきた中嶋に、和氣は左アッパーをジャストミート。ドサリとキャンバスに転がった中嶋は、辛くも立ち上がったが、すぐに和氣がスパート。連打から左ストレートでロープにもたれかかった中嶋をレフェリーが救った。
「これで過去に区切りができました。スッキリしました。もう、世界しか見えません。年内に必ず世界チャンピオンになります」と、和氣は笑顔でキッパリ。と、バンデージに巻いたテーピングにはWBCの文字が印字されていた。
「いや、ただのカッコつけですよ」とうそぶいたが、WBC王者レイ・バルガス(メキシコ)、同暫定王者・亀田和毅(協栄)へのアピールなのは間違いない。
赤井祥彦代表によれば、「世界戦の準備に入ってはいますが、すぐに実現しない場合は、和氣本人の希望で、名のある選手、強い選手との試合を組みます」。
ランカー戦が組まれずに、鬱屈としていたころの姿はない。2度目の世界挑戦がすんなり決まるはずがない。とにかくいまは忍耐のとき。ただし、ただ安穏と待つのではない。自らチャンスを得るために攻める。腕をさらに磨くために戦う。がむしゃらさと、大人の落ち着き。いまの和氣は、その両方を手に入れているように思える。
文_本間 暁
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