写真上=小田(右)の右アッパーカットが利川を襲う
写真◉小倉元司
好カード、好ファイトが続く日本ユース・タイトルマッチだが、10日のライト級戦も例外ではなかった。小田翔夢(白井・具志堅スポーツ)と利川聖隆(横浜光)が、ともに持てる力を出し尽くした8ラウンド。かつてない苦闘を強いられた小田だが、初めてのベルトに「単純にうれしいです。獲れてよかった……」と喜びに浸った。
ここまで全日本新人王を経て9戦全勝(8KO)で日本4位に上がってきた20歳の小田と、14戦を重ねて9位に入った22歳、利川。圧倒的な強打とセンスでスター候補の一人に数えられる小田と、武骨なスタイルでじっくりと力をつけてきた利川。対照的なキャリアを歩んできた二人だが、勝利への執着心は同等だった。「やっぱりベルトがかかってるんで、頑張れたんじゃないですか」と小田は言う。
軽くステップを踏みながら回り込み、速いジャブから上下のコンビネーションで多彩に仕掛ける小田に対し、利川の戦法は一貫していた。小田の右ストレートにアゴを跳ねあげられ、左フックでボディを痛烈にえぐられても、ひるまず前に出て左右フックを返す。思い切って振る右が何度も危ないタイミングで交錯し、猛然とボディを叩き合っては互いの動きが止まりかける。
とてつもない消耗戦に懲りて小田は中盤から足を使おうと試みるが、利川の凄まじい闘志に呼応するように打ち合いに身を投じていく。終盤に進んでも利川は腰の入った左フックを脇腹目がけて叩き込み、小田がロープを背負う場面が増えてくる。
「相手(利川)のペースだったね」。具志堅用高会長が振り返った流れを小田が逆流させたのは、7回だった。利川の飽くなきラッシュに踏みとどまり、残るスタミナを使い切るかのような覚悟でワンツーを繰り出す。右をまともに食らった利川の上体が前にのめり、ついに立っているのがやっとの状態に陥った。
勝負あったーー。そう思われたが、驚くことに利川は、ここを耐え抜いたばかりか、最終回もラッシュを敢行。小田のカウンターを浴びながらも、がむしゃらに手数を出し続け、終了ゴングを聞いたのだった。
判定はジャッジ二人が77対75、77対76で小田、もう一人が77対75で利川のスプリットデシジョン。「早く倒すつもりが、あんなに頑張られるとは思わなかった。最後までプレスをかけてきて、強いなと」。そう利川を称えた小田は、反省も忘れなかった。「ボディはもっと効いてると思ったけど……。前に出てこれないようにしたかった。今日の試合を見直して、しっかり練習します」。
具志堅会長も「課題あるね。もっと自分のリズムでボクシングやらないと」と、今後に注文を出した。「これからだね。来年は日本タイトル。もっと力つけないとね」。
ベルト以上に大きなものを、小田はこの一戦で得たはずだ。
文◉藤木邦昭
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