close

2023-06-04

ビッグマッチ凱旋試合と言えば谷津嘉章! 引き抜き合戦の犠牲となり、スタン・ハンセン&アブドーラ・ザ・ブッチャー相手に血だるま&史上最悪の日本デビュー戦【週刊プロレス】

アントニオ猪木をパートナーに日本デビュー戦に臨んだ谷津嘉章

初めてビッグマッチでのメインが凱旋試合の舞台として用意されたのは谷津嘉章だった。ニューヨークMSGで公式デビューを果たした後、WWF地区をサーキット。中堅・若手相手ながらもシングル無敗で半年後にワンマッチ凱旋を果たす。新日本プロレス生え抜きでは初となる東京・蔵前国技館でのデビュー。それもメインイベントでアントニオ猪木のパートナーに起用される破格の待遇だったが、ほとんど何もできず血海に沈み、その舞台とは正反対の史上最悪の日本デビュー戦となった。

谷津嘉章がデビューした翌1981年は、新日本プロレスにとって大きく飛躍した年となった。4月23日、東京・蔵前国技館で初代タイガーマスクがセンセーショナルなデビューを果たし、一気に人気が爆発。虎戦士再登場を期待する声が高まり、2カ月後の6月24日、同じ蔵前国技館で「3大スーパーファイト」と銘打った特別興行が組まれ「水曜スペシャル」の特番生中継が決定した。

当初予定されていたのは、タイガーマスクvsビジャノⅢ、アブドーラ・ザ・ブッチャーvsキラー・カーン、アントニオ猪木&ダスティ・ローデス組vsスタン・ハンセン&タイガー・ジェット・シン組。タイガーマスク再登場、ブッチャー新日本マット初登場、外国人2大エースのコンビ結成、そして、それを猪木&ローデスのドリームタッグが迎え撃つ…と、いずれの組み合わせも話題性十分だった。

しかし、全日本プロレス移籍が決まったシンが不参加を通達してきた。またローデスも、NWA世界ヘビー級王座をハーリー・レイスから奪取したことで世界王者のスケジュールを引き継ぐことになり来日をキャンセル。猪木のパートナーが宙に浮いてしまった。通常の大会であれば藤波辰巳との師弟コンビで事足りるが、それではインパクトに欠ける。そこで猪木は、WWFタッグに挑戦するまでに成長した谷津嘉章を急きょ帰国させ、パートナーに大抜てきしたのだった。

鳴り物入りで入団した超大物にとって最高の舞台だったが、対戦相手が悪かった。新日本のエース外国人の地位を奪い取ったハンセンと、全日本のエース外国人だったブッチャー。外国人エース争いが勃発すると考えて当然。その2人にタッグを組ませてライバル心を刺激。互いを意識するあまり空中分解の意見もはらんでいたが、2人は互いにパートナー以上の暴れっぷりを印象づけてやるとばかり、谷津をなぶりものにした。

試合開始当初こそ、ハンセンをアームドラッグで投げ飛ばし、ドロップキック2連発を叩き込んだ谷津だったが、場外戦で狂乱ペースに巻き込まれるとなすすべなし。ブッチャーの鉄柱攻撃とビール瓶攻撃で頭を叩き割られ、ハンセンのラリアットで文字通り血の海に沈んでしまった。その間、わずか10分足らず。また、1本目終了直後にウエスタン・ラリアットを浴びた猪木もダウンした。

しかもこの一戦は3本勝負。2本目開始のゴングが鳴っても谷津は場外で動けず。その谷津への攻撃をやめないハンセンとブッチャー。2人がリングに戻ることなく、わずか38秒で反則負けがコールされて試合は1-1のタイとなったものの、決勝ラウンドになっても谷津は起き上がれない。猪木がリングに飛び込んできて2人を相手にするも試合の権利はなく、今度は猪木の反則が宣せられた。インターバルの時間を含めても、谷津が3カウントを聞いてから4分ほどしかたっていない。

何もすることができなかった猪木と、見殺しにされた谷津。結果的に谷津は、このつまずきを最後まで挽回できなかった。もし引き抜き合戦がなければ、ローデスのNWA世界王座奪取がなければ…谷津はまた違ったプロレス人生を歩んでいたはず。と当時に、この一戦には凱旋試合の重要性が凝縮されていた。

橋爪哲也

加入月0円! 週プロmobileプレミアムはバックナンバー1500冊以上から最新号まで読み放題!!

送料無料通販!

新日本プロレス旗揚げ50周年記念シリーズ③70年代編 不滅の闘魂伝説(B.B.MOOK1583) | 週刊プロレス powered by BASE

70年代プロレスとは何か?創立50周年を迎えた新日本プロレスの原点がここにある。1972年3月6日、東京・大田区体育館で旗揚げ。当初はテレビ放映も大物外国人のブッキングルートもなく、苦戦を強いられた。だが、翌73年に坂口征二が合流し、NETテレビ(現テレビ朝日)が中継をスタート。そこからは右肩上がりの成長を遂げていった。アントニオ猪木が前面に立って闘いを繰り広げた70年代の新日本を大特集する。【CONTENTS】COVER STORY◎アントニオ猪木「ジャイアント馬場を超えるために」 藤波辰爾インタビュー「明日を夢見て」CLOSE-UP◎カール・ゴッチ「旗揚げ1年目の大黒柱」 SPECIAL REPORT◎坂口征二と新日本の夜明け(文・流智美) アントニオ猪木名勝負セレクション1972-1979(vsカール・ゴッチ&ルー・テーズ、vsジョニー・パワーズ、vsストロング・小林、vs坂口征二ほか) 夢とロマンの異種格闘技戦PLAY BACK 1976-1980 SPECIAL REPORT◎ドラゴンブームとは何か? 新日本プロレス70'sクロニクル 70's外国人列伝~タイガー・ジェット・シン、アンドレ・ザ・ジャイアント、スタン・ハンセン、ボブ・バックランドほか 70年代新日本 忘れじのシリーズ~1975年のワールドリーグ戦、1979年の闘魂シリーズ 船橋慶一氏インタビュー「NETテレビ中継開始の舞台裏」 1972-1979新日本プロレス年表【注意】発送後の返品・返金は原則不可とさせていただきます。送料は無料ですが、通常2~4日でのお届けとなります。また、事前に購入されても発売日にお届けすることは、お約束できません。ご了承ください。

shupuro.base.shop

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事