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2018-04-23

いつでも準備はできている  走り続ける31歳 富士通RB後藤啓

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アメリカンフットボールの春季東日本社会人選手権「パールボウル」一次リーグ戦。絶対的エースだった、QBコービー・キャメロン、RBジーノ・ゴードンらが引退した王者・富士通の初戦で、終盤に登場し躍動感あふれる走りでTDを奪ったのが、#32RB後藤啓だった。

富士通○49-10●明治安田(4月22日・富士通スタジアム川崎)

後藤は富士通に2009年に加入した。富士通には、咋季まで絶対的存在だったゴードンをはじめ、#30金、#6神山、高野橋(昨季で引退)、#33高口といった学生時代から名を馳せたトップ選手が揃う。分厚いデプスのRB陣において、順列は高くなかった。そんな中でも腐らず、与えられた少ないチャンスに溌剌としたプレーを見せ、楽しそうに走る姿に、彼の大きな喜びが見てとれた。

【富士通 vs 明治安田】終盤に登場し、生き生きとした走りを見せた富士通RB#32後藤啓

純粋に好きだから楽しめるフットボール

後藤は高校まで野球部に所属したが、補欠に甘んじた。親しかった同期、先輩の誘いもあり、立教大でフットボールを始めた。はじめは強制的にグラウンドに連れて行かれ、全く興味がなかったが、防具を借りてヒットの練習をしたところ思いのほか楽しく、すぐに夢中になった。

パスキャッチやキッキングのカバーもこなす器用さ、そしてなによりも不断の努力でチームの信頼を勝ち取った。しかし毎年エースとして嘱望されながらも、慢性的な怪我に苦しんだ。4年間、シーズンを通して満足に出場することが出来なかったが、大学で出会ったフットボールが大好きだったという。

学生時代にボウルゲームやオールスター戦といった輝かしい舞台には縁がなかったが、レベルの高い環境で自分の力を試してみたいと強く感じていた後藤は、フロンティアーズに一般入社枠で加入。故障の経験から学んだコンディショニングと、地道にトレーニングを重ねて培った強靭な肉体で、チャンスを伺ってきた。

RBはオフェンスで最も多くのハードヒットを受ける。故障が非常に多いポジションだ。これまで主にバックアップを務めてきた後藤は、出場機会は多くない。しかし、どんなときでもサイドラインで出場の準備ができている31歳のタフなベテランRBに、藤田ヘッドコーチはじめ首脳陣や選手からの信頼は非常に厚い。

【富士通 vs 明治安田】第4クオーター3分、タッチダウンを上げチームメイトに祝福される富士通 後藤(中)

妻のために走る

富士通はこの試合、QBは、先発の#18高木、#12平本、関大から加入したルーキー#38大内と三人を投入し、RBには驚いたことにLBトラショーン・ニクソンを起用した。藤田ヘッドコーチは「ニクソン本人の希望もあったのでトライアウトした」という。ラン攻撃の主柱だったゴードンの穴を埋めるための試行錯誤だろう。 新生フロンティアーズのオフェンス陣の中で、後藤がこれまでのようにバックアップに留まるのか、主力に食い込むのか。

後藤に今シーズンの覚悟を聞いた。「妻に恩返しできるシーズンにすること」と即答した。3月には、待望の第二子も生まれた。平日は仕事で遅くなることも多く、土日はフットボールの練習や試合で家を空けることが多い。だからこそ、これまで以上に試合で活躍し、心配や苦労をたくさん掛けてきた妻に喜んでもらいたいという。

「そのためにも、3年前に先発で出場した「ジャパンエックスボウル」では負けてしまったが、今度こそ自分が出場し、優勝する」

後藤がどのような役割を務めていくのか、楽しみだ。

【富士通 vs 明治安田】明治安田ディフェンスをかわしながらロングゲインする富士通 後藤

【富士通 vs 明治安田】第4クオーター 3分、タックラーをはねのけタッチダウンを決める富士通 後藤

(写真・文/北川直樹)

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