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2019-04-15

【BBM cards Editor's Special Column #2019−10 1stバージョン】「クロスブランド」をめぐる物語

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制作の裏側を紹介していくコラムシリーズも10本目! いまではすっかり定番化したBBMカードの「クロスブランド」ですが、2010年から始まったこのシリーズに込められた制作スタッフの物語をお読みください!

「全180種&直筆サインカード」でスタート

 今年の「1stバージョン」でも封入されているクロスブランド。今やBBMカードになくてはならない定番シリーズとなっているが、事の始まりは2010年、BBMカード20周年を記念して製作されたのがきっかけだった。

 クロスブランドとは、メーカーが発売する数種類のアイテムにまたがって、共通デザインで封入されているカードシリーズのこと。海外では、アッパーデック社が09年に会社創設20周年の記念事業として、スポーツから社会的な話題まで歴史に残る瞬間をカード化し、全500種以上にも及ぶ膨大なクロスブランドを1年にわたって各アイテムに封入して話題を呼んだ。トップス社でも09年に行われた第2回WBCのカードを同社の各アイテムに小まめに封入し続けたような例はあったが、日本国内では10年のBBMカード20周年が初の本格的なクロスブランドということもあり、すべてが手探りの状態の中での出発だった。

10BBM・BBM20周年/CS091 ダルビッシュ有(日本ハム)

 のちに続くクロスブランドシリーズの記念すべき初タイトルは、「CROSS STREAM」。直訳すれば「交差する流れ」だ。「クロス」とデザインコンセプトの「水」をミックスしたアイデアで、水がブランドの壁を横切って、ひとつの流れになって続いていくというイメージが込められていた。

 裏面で91BBMのレギュラーデザインをアレンジしたのは、20周年ならではの遊び心からだった。1チームにつき「1stバージョン」「2ndバージョン」「タッチ・ザ・ゲーム」でそれぞれ3種のサブセットが作られたのは現在まで通じる基本構成だが、さらにチームパックでも6種が制作され、1チーム15種。12球団を合わせると全180種類、さらに同じデザインコンセプトの直筆サインカードもあるという大シリーズだった。

10BBM・BBM20周年/CS091 ダルビッシュ有(日本ハム) うら

 これまでの野球カードにはなかった斬新なデザインがカードファンからも注目を集めたのは言うまでもない。本来は1年限りで終了する予定だったが、反響の大きさを考慮して11年もクロスブランドは継続されることになった。

 2年目のタイトルは「CROSS BLAST」。デザインのモチーフは「土」だ。「BLAST」は「つむじ風、突風」というイメージからネーミングされている。この時はサブセットではなく、チームパックのインサートパラレルとして各チーム3種を制作。通常版のインサートと同じ写真を使い、パラレルで共通デザインのクロスブランドを展開するというアイデアは海外カードにもなかったものだった。

 紙も最近のインサートなどでよく見られるホロ紙タイプではなく、淡くパール調に輝く特殊紙を使用し、さらにエンボスを押したような表面加工も施された。各50枚限定という少なさもあり、なかなかお目にかかれないカードとして、こちらも大きな話題になった。

11BBM楽天/EI1 田中将大 CROSS BLAST版

 12年のテーマは「火」で、タイトルは「CROSS BLAZE」。カード構成はさらに複雑化し、「1stバージョン」「2ndバージョン」「GENESIS」に封入されたサブセットが全108種あり、チームパックでは前年と同仕様の高級インサートが1球団3種の全36種。加えてクロス直筆サインカードも2年ぶりに復活して、クロスブランドだけで、レギュラー、インサート、直筆サインという一つのアイテムが完成する仕様に進化したのだ(ちなみに、激しい炎に選手が包まれるようなデザインは、「投手だと打ちこまれて大炎上しているように見える」という声がカードファンの間で上がったというのは、ここだけの話)。

 13年には「風」をテーマにした「CROSS WIND」が登場。突風に流される雲が印象的なデザインだった。これで10年の「水」、11年の「土」、12年の「火」に続いて、四大元素のエレメントをすべてカード化したことになり、BBMのクロスブランドシリーズもひと段落するものと思っていたのだが……。

12BBM1st/CB082 藤川球児(阪神)

12BBM楽天/CBI13 田中将大

12BBM1st/中島裕之(西武)直筆サインカード

13BBM巨人/CWI01 内海哲也(巨人)

令和元年で縁起のいいデザインを!

 1年の充電期間を経て、15年には「雷」にインスパイアされた「CROSS PLAZMA」が「1stバージョン」に登場。この年から、クロスブランドの1of1パラレルも制作されることになった。

 さらに16年には、幽玄な氷の世界を表現した「CROSS FREEZE」を制作した。背景の空にオーロラ、アクセントに流星群を配したデザインは、これまでのクロスブランドではなかった風景画のような世界観も表現していた。

 圧巻は、この年から導入された3Dクロス。これによってデザインの可能性が一気に広がったと言えるだろう。現在につながる人気インサートの原点が、このカードだった。

 ここからは、カードファンの皆さんの記憶にも新しいはず。「虹」をダイナミックにアレンジした「CROSS SQUALL」が17年。昨年はついに宇宙空間に飛び出した「CROSS UNIVERSE」と、次々に新しいコンセプトをカードに取り込んできた。

15BBM1st/CP27 前田健太(広島)

16BBM1st/SF35 山﨑康晃(DeNA)

16BBM1st/3D02 大谷翔平(日本ハム)

17BBM1st/CS06 柳田悠岐(ソフトバンク)

17BBM1st/CS02 中田翔(日本ハム) 1of1版

18BBM1st/CU04 菊池雄星(西武)

18BBM1st/3DCU07 丸佳浩(広島)

 そして迎えた今年は、「CROSS SUNRISE」。

 5月1日から新元号の令和元年が始まることを受け、新時代の幕開けにふさわしく、縁起のいいデザインを採用してみた。このデザインの良さをより引き立たせるのがパラレル版で、100枚限定の金紙版は赤みを帯びた朝焼けのような色合いになり、1of1で使用しているホロ紙版は雲間から差す光線が神々しい輝きを放っている。

 ちなみに、今回のクロスブランド、当初に上がってきたデザイン案はまったくの別物。10年からコンビを組んできた担当デザイナーは、自然界をモチーフとしたインサートはそろそろ卒業して、新しいものを始めたいという意図を持っていたのだった。それを編集担当の無理なお願いを聞いてくれて、「ご来光」を想起させるデザインに軌道修正してもらった経緯があるのも、ここだけの話。

 今後、BBMのクロスブランドからどんなカードが生まれてくるのであろうか。カードファンの皆さんも楽しみに待っていてほしい。想像を超えるようなカードが生まれてくることを期待して。

19BBM1st/CS30 筒香嘉智(DeNA)

2019年1stバージョンの詳細はこちら!

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