close

2023-11-07

上野勇希、KO-D無差別奪取の可能性は?「7月の両国で僕と闘った時までの上野だったら無理」――KONOSUKE TAKESHITAインタビュー(後編)

11・12両国でクリスの無差別に挑むに上野に竹下は…

全ての画像を見る
――もちろん勝敗も重要ですしそこに注目が集まるわけですが、もうひとつの勝負としてはどちらが存在感で持っていくかの勝負でもありますよね。
TAKESHITA  その点も僕はフィジカルで相手のオーラを潰し続けてきたんで、ジェリコ相手でもできると思っています。TAKESHITA、存在感なかったなという試合は一度もAEWでしたつもりはないし。今回はDDTのリングであってもホームとは受け取っていなくて、すべてのお客さんがTAKESHITAを見に来るわけではない。ジェリコが見たくてやってくる人も確実にたくさん来るでしょう。それによって空気がジェリコに流れたとしてもフィジカルで圧倒して、最終的には「DDTってすごい、KONOSUKE TAKESHITAってすごい」って思って帰ってもらうのが理想ですよね。でも、そこで勝とうとする試合ではないんですよ。今はジェリコが勝って当たり前ではなく、僕がむしろ負けられない立場なんで。ケニー・オメガに勝ったことでこれからのプロレス人生はより“負けられない”を背負っていかなければならない立場になったということです。そしてジェリコに勝ったら、またそこで背負うものが増える。その十字架を背負って歩んでいく覚悟はできています。
――TAKESHITA選手は世界の頂点に立つと宣言していますが、ジェリコも自身のフレーズの中で“Best in the world”と言ってきた存在です。
TAKESHITA その意味でも、ボクシングの世界タイトル戦が日本でおこなわれるようなものだと思ってもらいたいし、それをDDTのリングでできることが何よりも嬉しいですよね。 理想ではなく、現実のものとしての“世界”をDDTで展開できるんですから。そしてそれができるのは僕しかいないし、日本を見渡しても本当の意味での世界規模としてのことをやれる人間がどれだけいるか。野球でいうところのWBCやサッカーのワールドカップを日本が開催されたらを考えてほしい。
――シングルマッチが決まったあと、AEWではタッグマッチと6人タッグマッチで対戦しています(10月25日現在)。実際に触れてみての気づきは何かありましたか。
TAKESHITA  うーん、シングルはまた違いますからねえ。ちょっとマッチアップした限りでは、やっぱり日本っぽいですよ。ジャパニーズレスリングをAEWで感じるのはジェリコとブライアン・ダニエルソンのような日本のマットを経験した上で影響まで受けた人。そして、アメリカで成功を収めたのもそれを持っているからなんだなって感じるし、そういう時に、日本のプロレスのすごさを再認識しますよね。プロレスは闘いなんだということを感じさせる闘いをジェリコはやっている。
――今回のドリームマッチが実現するのも、AEWという場を抜きには実現していなかったと思われます。自身のキャリアの中で、WWEではないアナザーとしてAEWが生まれためぐり合わせを客観的にどう受け取っていますか。
TAKESHITA  去年3月の両国国技館で遠藤哲哉に敗れてKO-D無差別級のベルトを失った時に、僕は「ここからが竹下幸之介の第2章」って言いました。その時、新しい世界に飛び込まないと見ている方も夢とか希望とかを託せないというか。僕はチャンピオンとして、もう1周も2周もしてしまっていたのでこの先何を見せられるのかといったら海を越えるしかないと思ったんです。そこでWWE or AEWっていう選択肢になるわけですけど、当時のAEWは男子のメイン級プレイヤーもそんなに人数はいなくて、ましてやシングルのベルトを巻いた日本人は女子を別としていなかった。その、誰もやっていないことをやりたかったんです。その時点では、まだAEWが今のように巨大なものになるかどうかなんて確信がなかったわけで、それでも自分の意志による選択だったんですね。そうしたら、そこから1年ぐらいでどんどん選手も増えていって、たぶんあと1年踏み出すのが遅かったら僕にチャンスはなかったと思います。こういうのはすべてがタイミングであって、僕をAEWにいかせた衝動的な何かが2021年の年末ぐらいにあったんです。コロナ・パンディミックによって日本のプロレスも声を出せないというのが続いた時に、これはプロレスをやっていてもしょうがないな、10年やってきたんだからもう十分じゃないか。だったら最後は挑戦してみたいと思ってアメリカにいったんで、それが導きというものだったのかもしれないし、確かに運命的なものでもあるんだなと思います。導いてくれたAEWと送り出してくれたDDTがなかったら今の僕はないわけで、その恩返しをするのはそれによって実現するクリス・ジェリコ戦というのが一番でしょう。
――常々言っている世界の頂点というものは、ベルトを獲るとか誰かに勝つというものを超越した何かですよね。それは具体的な形として見据えられているんでしょうか。
TAKESHITA  世界中のプロレスファンが「今のプロレス界でタケシタが一番だ」って言ったらそれが頂点。そういうのって全員が一致した評価になるわけではないにせよ、現にAEW世界王座を持っているわけでもWWE王座を持っているわけでもないし、今現在はIWGP世界ヘビー級王者でもないけれど、僕は客観的に見てウィル・オスプレイは世界一という領域に足を踏み入れようとしていると思うし、今はシングルのチャンピオンではないけれど日本の一番は誰かと聞いたらオカダ・カズチカと答えるファンが多いと思うんです。だから自分もそうなるためには、一度は“世界”の名がつくベルトを巻くことも必要なんでしょうけど、それよりも世界中のプロレスファンの中で「タケシタが世界一」と言うようになれば、それが世界一のプロレスラーだということです。僕は21歳ぐらいの時から言っていたと思うんですけど、自分の全盛期はたぶん32歳ぐらいに来る。それは勘でもあるけどある意味、自分を追い込んでいるところもあるんです。
――タイムリミットを定めるという意味で。
TAKESHITA  そう。だから27歳でアメリカに出るのは早い方だと思われるかもしれないけど、32歳が全盛期だとしたらそう時間はない。プロレスラーとしての引退、本当のゴールは40歳と決めているんで、そこでまだ12年あると思うのか、もう12年しかないと思うのか。僕は常に生き急いでいるんであと12年しかないよ、全盛期なんてあと4年もすれば来ちゃうんだよと思っています。2、3年前までは描いていたプロレスラーとしての人生設計と比べると遅れをとっていると思っていましたけど、AEWに出ることでやっと追いついてきたかなっていう感じです。まだ足りないですけど。
――達成できていることに関しては、その人生設計以上にいい形になっているのでは?
TAKESHITA  いや、僕の中ではあくまでもちょっと遅れをとっている、ですね。これじゃ、プロレスの歴史の教科書に載ったとしても真ん中ぐらいのページにちょっと載るぐらいで、表紙にはならないでしょうね。
――世界プロレス史の表紙になると。
TAKESHITA  プロレスラーになったからには、そうなりたいと思っているんで。でも確実に2023年11月12日、両国国技館のクリス・ジェリコ戦はその歴史の教科書で竹下幸之介のページが編集される上で記されることですよね。それはDDT26年の歴史の中でも大事件だし、今後これ以上のことはおそらくないと思うんで。

両国メインで上野は“人間”を出せ
高木さんにジェリコ戦を見せたい

――わかりました。その両国大会なんですが、メインでクリス・ブルックスのKO-D無差別級王座に挑戦する上野勇希選手についての話をお聞かせください。
TAKESHITA 両国国技館のメインって、まあタイトルマッチという時点でみんな特別な思いを持って試合をするんですけど、僕も何度も経験してちゃんと地に足をつけて試合ができたのって去年の3月が初めてだったぐらいなんですよ、やっと自分の試合ができたなって思えたのは。それは対戦相手がどうこうではなくて、両国のメインには魔物がいるんです。クリスは7月にやっていますよね。上野は初めてでしょ。そこで自分の100%以上の力を発揮できる選手なのか、それとも普段の力も発揮できない三流レスラーなのかが見えてしまうと思うんです。だから、団体としても本人としても上野勇希でDDTを盛り上げていきたい、次のエースは上野勇希っていうのがあるのは明らかですけど、果たしてその器なのかどうかが勝とうが負けようが本当の意味でわかる場になると思います。「これは上野についていけば大丈夫だ」って思えるかどうかは両国のメインを見てもらえたらわかるし、クリスはクリスで前回はチャレンジャーという立場だったのが、今回は最後の入場者として迎える両国国技館っていうのはまた難しいんですよね。そういう意味では、プロレスラーとしてはもちろんだけど二人の人間としての懐の勝負なんで、それが出ればいいんじゃないかと。クリスも上野も、まだカッコつけているところがあるというか、体の内側から湧いてくる素の人間性を出そうとしていない。僕は人間が出た時に、これからのDDTがどうなるかすべてわかるんじゃないかって思うんですよね。
――TAKESHITA vsジェリコのドリームマッチのあとにメインを務めるというのも大きなプレッシャーになるでしょう。
TAKESHITA それがプレッシャーに感じるようだったら、僕とジェリコがメインをやるんで、当日でもいいから変えてください。TAKESHITA vsジェリコがなんだ!って思ってくれるぐらいでないと、こっちもやり甲斐がないんで。 
――高校時代から知る人間として見て、上野勇希は両国のメインという難問をクリアできると思いますか。
TAKESHITA  高校の時から、もっと言うと7月の両国で僕と闘った時までの上野だったら無理ですね、うん。彼はまだDDTに入ってくる前に、僕と両国国技館の試合を見にいっていました。あの時に見た舞台に自分が立つにあたって、この身を捧げますということを口で言うだけじゃなく心で見せないとお客さんの心は動かない。
――あとひとつ、DDTでともにやってきた赤井沙希選手がこの日を最後にリングを去ります。伝えたいことがあれば。
TAKESHITA  赤井さんとはね、試合はほとんどしないままだったんですよね。赤井さんがデビューするかしないかっていう時に串刺しビッグブーツを伝授した者として、今までで一番強烈なビッグブーツを両国のリングで決めてください。あとは、これを言うのは野暮なんですけどケガなく…ケガなくリングを降りてほしい。僕が一番思うことはそれですね。引退試合をする方に言うことではないんですけど、ケガさえなければまたやりたくなった時にできるんで。最後に思いっきりやってもらいたいんですけど、思いっきりやることで思わぬケガしてしまうこともあるんで、本当にケガなくリングを降りていただきたい。それだけです。
――TAKESHITA選手が離れている間も、こうしてDDTのリングは停まることなく先へ向かって流れているわけですが、海外でDDTの名前が広がって言っているという実感は得られていますか。
TAKESHITA アメリカではかなり知られてきていますよ。僕だけでなくMAOも頑張っているし。でも、それ以上にTJPW(東京女子プロレス)の名前がこっちでは強くて。どっちが上かっていうのは僕の中にはないですけど、男子レスラーももっと頑張ってよって思っています。もちろんアメリカに来ることだけがすべてじゃないけど、もっと必要とされるようにDDTの後輩たちがなれば、当然知られていくわけですし。
――DDTの名を広めるという意味では、飯伏幸太選手との絡みが現実になっているわけですから、どのタイミングでシングルマッチをやるかというのも世界は注目していると思われます。
TAKESHITA  僕はいつでもいいです。ただ現実的に今、それが組めるリングはAEWしかないでしょう。そういう意味では夢がありますよ。AEWはドリームマッチが当たり前に組まれていく団体ですからね。だから日本のファンの皆さんはお金を貯めてアメリカまで見に来てください。こっちの雰囲気をDDTのファンにも味わってほしいんですよ。
――現在のようにリアルタイムで海の向こうの試合が見られなかった時代は、レッスルマニアを見るために海を渡っていきましたからね。
TAKESHITA  そういう熱量がいいんですよね。僕は本当に飯伏選手がいいんであればアメリカでも日本のどのリングでもやりますし、それを見て高木さんが熱くなって「よし、DDTでもやろう!」ってなって組んでくれれば日本に帰ります。でも僕は、こうして人生を賭けた行動を起こした結果、今があるんで。だからみんなにも…レスラーにも団体にもファンにも行動を起こしてほしいんです。行動を起こすことで道が拓けることを体感してもらいたい。やっぱりDDTには、高木三四郎にはリスクのあるチャレンジをしてほしいって思っています。もちろんジェリコを呼ぶことで大きなリスクはあるのかもしれないけど、僕とやることでそのリスクではなくなるんで、高木さんは安心して見てください。
――ああ、同じようにWWEの影響を受けた上でDDTをけん引してきた高木三四郎に見せたいですね、ジェリコ戦を。
TAKESHITA  今年の3月に僕と一騎打ちをやった時に、僕は「高木さんにはもう一度KO-D無差別級チャンピオンになってほしい」って言いましたよね。
――言いました。
TAKESHITA  あのあと、KING OF DDTに出たりで1ヵ月ぐらいはやる気を出していましたけど、今は元に戻ってしまっているんじゃないですか。
――先日も20年ぶりに全日本プロレスへ参戦したというのに、6人タッグマッチで一度もリングに上がれなかったと言ってぼやいていました。
TAKESHITA  ダメですよ、プレイヤーとしての輝きも鈍らせちゃ。TAKESHITA vsジェリコを見てもう一回、高木三四郎をファイヤー!させるしかないですね。

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事